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竜の国
シルドレイクへ
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私達は打ち合わせを済ませるとシルドレイクへと出発した。
向かうのは竜の姿のエレとトコヤミ、私と芽依とクオン。私達三人はトコヤミの背に乗って先導するエレについて行く。
少数だが結果的にこれくらいの方がちょうど良い。いざとなれば《眷属召喚》で呼び出せば良いし、救出後は《瞬間移動》で逃げてしまうつもりだから。
『エレよ、父と戦う事になったら我がやっても構わんか?』
『それが最良なら……はい』
歯切れの悪い返事をするエレ。
トコヤミが言わんとするのは、殺してしまっても良いかと言う事だ。出来ればそうならない方が良いのだが。
竜達が使う奴隷には幾つかの種類があるそうで、芽依は戦闘用奴隷、私は身の回りの世話をする奴隷、クオンは愛玩奴隷という事になった。
戦闘奴隷は竜達が戦うまでもない小物を始末する為の者で、身の回りの世話は鱗や牙を磨いたりするそうだ。
愛玩用はペットの様なもので、飽きたら他の奴隷と交換するか食用になるらしい。
「ふむ。我は笑顔を振り撒いていれば良いのか。ちとつまらんな」
「ラニターヴァスの子供を見つけるまでの辛抱よ。救出したら暴れても構わないわ」
私の眷属となったクオンならば、シルドレイクにいる大半の竜を倒す事が出来るだろう。救出直前、直後は大立ち回りをする事になるので彼女の力はあてにしている。
「お母さんも笑ったらもっとカワイイと思うよ?」
「そうね。今度練習してみようかしら」
芽依は揶揄い半分で言ったのだろうが、実際に私は表情があまり変わらない。顔の筋肉が固まってしまっているのかしら。
他愛も無い話をしているうちにシルドレイクに近づいていく。
シルドレイクがあるのは私たちの住む大陸よりも更に北側にある大陸で、その中でも北部に位置していた。
山は険しく大半の峰は雲に覆われていて望むことが出来ない。
気温はそれ程低くはなく、空気は少し湿り気を帯びていた。
『この山脈を越えたら街が見えて来ますよ』
徐々に高度を上げながらエレが説明する。
『雲の中から何かが来ます。恐らく警備の竜かと』
トコヤミが雲を見上げながら報告してくる。
「エレ、任せても大丈夫?」
『はい。話してみます』
エレは上昇をやめてその場に止まる。
次の瞬間、青色の小さな竜が雲を突き破って現れた。
速度を上げて一直線にエレの所へ飛んでくる青い小型竜。エレは眼を見開きそれに向けて咆哮を上げる。
青い竜は驚き減速するとエレの少し手前で動きを止めた。
『私はエレネージュです。通してください』
『やっぱり!エレ様だ!』
そう言って嬉しそうに羽ばたく青い小型竜。エレはその様子を見て困惑している。
『エレ様?もしかして私の事覚えてないのです?』
『え……』
『ロナディアですよぅ……エレ様のお世話掛をしていた……』
しょんぼりと頭を下げながら話す
『えぇ!?ロニなの?あなた確か竜には変身出来なかったんじゃ?』
『頑張って変身出来る様になったんです!じゃないと生きていけないから……』
どうやらエレの知り合いらしい。だが今の彼女がエレの味方とは限らない。私達は何も言わずに成り行きを見守っていた。
『エレ様がお帰りならきっとギルディン様もお喜びになるでしょう。ささ、ご案内しますのでついて来てください!』
私達の事を特に気にする事もなく自ら案内を申し出るロナディア。私の見立てでは彼女が演技をしている様には見えない。どうやら本心からエレの帰還を喜んでいる様だ。
『まさかエレ様が従者や奴隷を従えてお戻りになるとは思いませんでしたよ~。あ、初めまして!私はロナディアです。気軽にロニって呼んでくださいね~』
エレにまとわりつく様に飛びながらトコヤミとその上の私達にも挨拶をしてくる。私達もそれぞれ名乗って挨拶をした。
向かうのは竜の姿のエレとトコヤミ、私と芽依とクオン。私達三人はトコヤミの背に乗って先導するエレについて行く。
少数だが結果的にこれくらいの方がちょうど良い。いざとなれば《眷属召喚》で呼び出せば良いし、救出後は《瞬間移動》で逃げてしまうつもりだから。
『エレよ、父と戦う事になったら我がやっても構わんか?』
『それが最良なら……はい』
歯切れの悪い返事をするエレ。
トコヤミが言わんとするのは、殺してしまっても良いかと言う事だ。出来ればそうならない方が良いのだが。
竜達が使う奴隷には幾つかの種類があるそうで、芽依は戦闘用奴隷、私は身の回りの世話をする奴隷、クオンは愛玩奴隷という事になった。
戦闘奴隷は竜達が戦うまでもない小物を始末する為の者で、身の回りの世話は鱗や牙を磨いたりするそうだ。
愛玩用はペットの様なもので、飽きたら他の奴隷と交換するか食用になるらしい。
「ふむ。我は笑顔を振り撒いていれば良いのか。ちとつまらんな」
「ラニターヴァスの子供を見つけるまでの辛抱よ。救出したら暴れても構わないわ」
私の眷属となったクオンならば、シルドレイクにいる大半の竜を倒す事が出来るだろう。救出直前、直後は大立ち回りをする事になるので彼女の力はあてにしている。
「お母さんも笑ったらもっとカワイイと思うよ?」
「そうね。今度練習してみようかしら」
芽依は揶揄い半分で言ったのだろうが、実際に私は表情があまり変わらない。顔の筋肉が固まってしまっているのかしら。
他愛も無い話をしているうちにシルドレイクに近づいていく。
シルドレイクがあるのは私たちの住む大陸よりも更に北側にある大陸で、その中でも北部に位置していた。
山は険しく大半の峰は雲に覆われていて望むことが出来ない。
気温はそれ程低くはなく、空気は少し湿り気を帯びていた。
『この山脈を越えたら街が見えて来ますよ』
徐々に高度を上げながらエレが説明する。
『雲の中から何かが来ます。恐らく警備の竜かと』
トコヤミが雲を見上げながら報告してくる。
「エレ、任せても大丈夫?」
『はい。話してみます』
エレは上昇をやめてその場に止まる。
次の瞬間、青色の小さな竜が雲を突き破って現れた。
速度を上げて一直線にエレの所へ飛んでくる青い小型竜。エレは眼を見開きそれに向けて咆哮を上げる。
青い竜は驚き減速するとエレの少し手前で動きを止めた。
『私はエレネージュです。通してください』
『やっぱり!エレ様だ!』
そう言って嬉しそうに羽ばたく青い小型竜。エレはその様子を見て困惑している。
『エレ様?もしかして私の事覚えてないのです?』
『え……』
『ロナディアですよぅ……エレ様のお世話掛をしていた……』
しょんぼりと頭を下げながら話す
『えぇ!?ロニなの?あなた確か竜には変身出来なかったんじゃ?』
『頑張って変身出来る様になったんです!じゃないと生きていけないから……』
どうやらエレの知り合いらしい。だが今の彼女がエレの味方とは限らない。私達は何も言わずに成り行きを見守っていた。
『エレ様がお帰りならきっとギルディン様もお喜びになるでしょう。ささ、ご案内しますのでついて来てください!』
私達の事を特に気にする事もなく自ら案内を申し出るロナディア。私の見立てでは彼女が演技をしている様には見えない。どうやら本心からエレの帰還を喜んでいる様だ。
『まさかエレ様が従者や奴隷を従えてお戻りになるとは思いませんでしたよ~。あ、初めまして!私はロナディアです。気軽にロニって呼んでくださいね~』
エレにまとわりつく様に飛びながらトコヤミとその上の私達にも挨拶をしてくる。私達もそれぞれ名乗って挨拶をした。
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