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竜の国

ライカンスロープ

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「あなた達は無理矢理戦わされているの?」
「はい。家族を人質にされていて……」
「戦わなければ食事も碌に貰う事が出来ないんだ」

人の姿の彼らは窶れていた。頬はこけ顔色も悪い。

「俺達はまだ良い。戦う事も出来ない者や男手を失った者達はもっと悲惨な目に遭っている……」

生き残った者達は一箇所に集められて収容されているそうだが、建物どころか雨を凌ぐ為の屋根すらない所らしい。
食事は日に一度、それも量は全然足りておらず餓死者が大勢出ているそうだ。

「初めは五千人はいた筈だ。それが日を追うごとに減っていって……」

一人の男は頭を抱えて蹲りそう言った。

「今回の攻撃が失敗した以上、俺達に帰る場所は無いんだ。一思いに殺してくれ」

後の二人も項垂れていた。

過酷な状況で生きる気力を失ってしまったのだろう。家族も自分達が戻る頃には死んでいるかもしれない、彼らには不安と恐怖しかなかったのだ。

「お母さん……助けてあげられないかな?」

芽依は泣き出しそうな顔をして私に聞いてくる。

そんな顔をされたら「無理だ」とは言えないわ。

「収容されている場所を教えてもらえるかしら」
「精霊、様は……敵である俺達を助けてくれるのか?」
「助けられるかは分からないけど、やれるだけやってみるわ。まずはあなた達を何とかしないといけないわね」

先程まで戦っていたのだ。怪我もしているし、何より健康状態が悪過ぎる。案内させ様にも途中で倒れてしまいそうだ。

まずは泉の水を飲ませて傷と健康状態の回復。
収容所の場所と具体的な状況、監視を含めた敵の戦力を分かる範囲で説明してもらう。

彼らが言うには収容所があるのは森を越えた先の平地。木は疎らで草原になっているそうだ。そこを大きく囲う様に杭を打ち込んで仕切り、外側には魔物が種族毎に陣を張っている。

今回攻めて来た数の倍はいるだろうと説明する一人。

「スロヴァールの街や村はどうなったの?」
「全て焼かれました」

芽依の質問に答える男。

「え、じゃあ魔物達も食料を調達するのに苦労するんじゃない?」
「狩りをしているのをみましたよ。それに足りない分は……」

収容している人間を、ね。

「すぐに助けに行こうよ!」
「そうね。でも敵の陣容を確認した方が良いわ」

敵の陣地に突入するのだ。ある程度は慎重に事を進めた方が良い。
迂闊に私達が近付けば人間を人質に取る可能性もある。

となると少数で森を抜けるのが良いだろうか?
高高度から急襲するのも良いかも知れない。

一度戻って作戦を練った方が良さそうだ。

メトが魔物の群れを蹴散らしてこちらに合流して来たので労いの言葉を掛けて状況を説明、続いて騎兵が到着したので戦況の報告をして私達は三人を連れて一度スプリングフィールドに帰る事にする。

転移で屋敷の中庭に移動すると颯太が私達を見つけて出迎えに来てくれた

「おかえり母さん、芽依。カナエ、メト、マカミ、ご苦労様」
「こちらに変わりはない?」
「北部にドラゴンが現れたからトコヤミが迎撃に出ているよ。各地の監視も強化していて、オオトリとクオンにも空に上がってもらっている」
「ありがとう。ご苦労様」
「ところでその三人はどうしたの?」

私は彼らの素性とここに連れて来た経緯を説明する。

「成る程。救出となると色々準備が必要かもしれないね。もっと詳しい話が聞きたいから彼らを屋敷に連れて行くよ」
「ええ」

颯太は三人から更に詳しく情報を聞き出している。

私は《遠隔視野》を使って収容所と魔物達の陣地を確認する。

彼らの言った通りの陣容だ。ただ、人間の軍隊の様に統制がとれている訳ではなく好き勝手にやっている印象を受ける。

ゴブリンの陣地では死んだ人間を木にくくりつけて矢の的にして遊んでいた。

オークが収容所の中に入って行き、逃げ惑う人間を追い回している。

……不愉快な光景ね。
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