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竜の国

亀竜

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北門の敵の排除は完了した。
続いて外壁に取り付いている者の排除を行う。

先程の魔法は威力があり過ぎた様だ。
壁の付近で炎の竜巻を呼び出すのはやめておく。

光線魔法で数体を巻き込んで焼き捨てながら考える。

彼らは北から足並みを揃えて侵攻してきた。統率者がいる筈だ。

「マカミ」
『はい!』

外壁に着地したマカミは嬉しそうに尻尾を振りながら大きく吠えた。

「外壁に取り付いている魔物を排除して。他の地点には芽依とカナエがいるから手伝ってあげて」
『わかりました!!』

元気よく飛び降りて魔物を蹴散らして行くマカミ。
ここにマカミに敵う敵はいない。一方的な戦いになっていた。

私は北の森を《遠隔視野》で確認すると、木々を掻き分けながら進んでくる巨大な亀の姿を視認した。

あれが統率者か。

私が森の上へと移動すると亀は火球を吐き出して放ってきた。私はそれを水壁を出して防ぐ。

「あなたはルドガイアの者ね?」
『如何にも。我は魔竜王の命によりこの地を征服に来たグルーンと申す』

木々の間から頭を出して名乗ってくる。
硬い甲羅に覆われた体に頭は竜に見える少々不恰好な形をしていた。

「私は泉の精霊ハル。不当な侵略は許しません」
『お主が泉の精霊か。相見える事、嬉しく思うぞ。そして我が倒し手柄を上げられる事もな』

喜びの咆哮をあげるグルーン。

随分と自信があるようね。

「一度だけ警告するわ。今すぐ退きなさい。そして二度とこの国に侵略しない事を誓うなら命まではとらないわ」
『無用!』

グルーンは口を大きく開くと炎の吐く。
私はそれを水壁で防ぐ。

このままでは森が燃えてしまう。

氷塊を作り出して頭目掛けて投げ落としたが頭を引っ込めて回避。氷塊は甲羅に当たって砕けた。

なかなか硬いわね。

しかしこんな雑魚に時間を掛けているつもりはない。

水壁を三重にして防御態勢をとったまま、呪文の詠唱に入る。

『小癪な!』

グルーンは大きく口を開くと光線のブレスを吐き出す。

水壁が吹き飛ばされてしまうが一瞬光線を凌いでくれたお陰で回避する事ができた。

そして魔法が完成する。

「《アルエクリシス》」

両手から放たれた光線を見てグルーンは甲羅の中に頭と手足を引っ込めて防御の姿勢を取るが私の魔法はそれでは防げない。

『な、なんだと!?ぐわぁぁぁっっ!!』

硬い甲羅を容易く貫き地面に貫通する光線。グルーンの体は焼かれて程なく絶命した。

グルーン以外に指揮者がいないかを《遠隔視野》を使って確認するが見て分かる様な者は見つけられなかった。

魔物の軍勢もメトとマカミが蹴散らしてくれている頃だろう。

「お母さーん!」

森を隈無く捜索していたら芽依が手を振りながら飛んで来る。

「そっちは片付いた?」
「うん!マカミがほとんどやっつけてくれたよ。それよりも……」
「どうしたの?」
「ライカンスロープの人が三人、降伏したんだけど」
「分かったわ今はカナエが見ているの?」
「うん、案内するね!」

芽依と共に街に戻ると、北門の側にマカミとカナエが居た。マカミの足元には人間が三人座り込んでいる。

『ハル様!街に群がっている魔物は全て駆除しました!』
「ご苦労様マカミ。カナエもありがとう」
『いえ!大した事なかったです。この者達が捕虜です』

カナエの浮遊する下側にいる三人の側に着地して話を聞いてみる。

「私は泉の精霊のハルです。あなた達はルドガイアに攻め落とされた国の者ね?」
「……はい。俺達は隣国のスロヴァールの元国民です」

一人の男が答える。

「スロヴァールはライカンスロープの国なのかしら?」
「いいえ。俺達はルドガイアの者達にライカンスロープの因子を埋め込まれたんです」
『人間のままでは弱いから戦力として使える様にライカンスロープにしたのでしょう』

カナエが説明してくれる。
つまりルドガイアはライカンスロープをコントロールできるという事だ。
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