上 下
426 / 453
竜の国

名付けと紹介

しおりを挟む
シグルーンに名前を付ける事になった。

「そう言えばあなたは男の子なの?」
『我は雌だな』
「そう……」

女の子らしい名前を付けるべきか。
皆と同じ様に神話から名前を貰いたい所だが、私の知識では良い竜の名前が思い浮かばない。

そうなると彼女の特性から名前を付けるべきだろう。

不滅の竜……死しても再びシグルーンとして生まれてくる……

不滅、永遠、悠久……

「クオンはどうかしら?私の生まれた世界で時が無窮である事を意味しているわ。名前をクオン、姓をシグルーンにすれば響きが良い気がするのだけど」
『クオン……クオン・シグルーンか。良いな、気に入った!我はこれよりクオンと名乗ろう!』

シグルーン改めクオンは頭を持ち上げて嬉しそうに天に向かって吼えた。

「クオン、早速だけど家族や森の仲間達にあなたを紹介するわ」
『うむ、ハルの家族に会うのが楽しみだ』

カクカミ、ヤト、精霊達にはそれぞれの仕事に戻ってもらい、トコヤミとクオンと共にスプリングフィールドに向かう。

「そう言えばクオンは人の姿に変身できるの?」
『ふむ……他の生物に姿を変える事は出来なくはないが、もしやハルの眷属は皆変身が出来るのか?』
『我は出来ますぞクオン殿』
『素晴らしい。形態を安定させるのはとても難しい筈だが、トコヤミ殿はそれが出来るのか』

クオンに褒められて上機嫌になるトコヤミ。

『自力で編み出せれば自慢出来ましょうが、残念ながらこの術はメリーゼハーヴ殿から教えていただいたものです』
『それでも素晴らしい事だよ。我の生きた時代には人化変身の術など存在しなかった。さぞ複雑な術式であろうに』
『我などまだまだです。ハル様は竜のみが人に変身する術を他の者でも使える様に改良して下さったのです』
『なんと!ハルは魔法に詳しいのだな』
「私だけの力ではないのよ。娘の芽依のひらめきがあったから完成したの」

二人に褒められてくすぐったい。早く紹介したいわ。

街に入る前にクオンが『トコヤミ殿の使う術を是非教えてほしい』言うので、森の中で試してみることにした。

『では我がやってみますので、真似してみてください』
『うむ。頼む』

トコヤミは人の姿に変身する。もうすっかり慣れたものだ。

『なるほど……少し複雑だが、何とかできるかも知れん』

そう言ってトコヤミのやった通りに術を使用する。

「どうだろうか?」
「ええ、成功よ」

クオンは二十歳位の美女になっていた。白に近い長い金髪がとても美しい。

『流石ですな』
「ありがとうトコヤミ殿」

私はクオン用の衣服と腕輪を生成して彼女に着せる。

「手間をかけさせてしまってすまない」
「いいのよ。いずれ覚えてもらおうと思っていたのだから」

これでクオンの紹介を屋敷の中ですることが出来る。
人の姿になったのが初めてなので歩くのも覚束無いので、手を引きながら歩いて徐々に身体を慣らしていく。一時間程散策していたらコツを掴んだ様で、普通に歩ける様になったのでそのまま街に歩いていく。

「ここがこの国の首都となる街か。自然と一体となった良い場所だな……」

クオンは街の入口で周りを見渡しながら感嘆の声をあげていた。

「この街の住まいへ案内するわね」

屋敷へと向かう私達。途中、この街に住む者や取引に来ている他種族達と挨拶を交わす。

「素晴らしい共生の形を築いているのだな」
「ええ。みんなで協力し合って生きているわ」

屋敷に着くと中庭で芽依とセロが試合をしていた。
黙って様子を見ていようと思ったが、二人ともすぐに私達に気付いて中断した。

「お母さんおかえり!」
「おかえりハルさん。そちらの方は?」
「紹介するわね。クオンよ」
「お初にお目にかかる。我はクオンと言う名をハルに貰った。元はシグルーンという名のドラゴンだ」

二人とも首を傾げていたので私が補足で説明すると、芽依は喜びセロは口を大きく開けて驚いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン
ファンタジー
第一巻が発売されました! レンタル実装されました。 初めて読もうとしてくれている方、読み返そうとしてくれている方、大変お待たせ致しました。 書籍化にあたり、内容に一部齟齬が生じておりますことをご了承ください。 改題で〝で〟が取れたとお知らせしましたが、さらに改題となりました。 〝で〟は抜かれたまま、〝お詫びチートで〟と〝転生幼女は〟が入れ替わっております。 初期:【お詫びチートで転生幼女は異世界でごーいんぐまいうぇい】 ↓ 旧:【お詫びチートで転生幼女は異世界ごーいんぐまいうぇい】 ↓ 最新:【転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい】 読者の皆様、混乱させてしまい大変申し訳ありません。 ✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - - ――神様達の見栄の張り合いに巻き込まれて異世界へ  どっちが仕事出来るとかどうでもいい!  お詫びにいっぱいチートを貰ってオタクの夢溢れる異世界で楽しむことに。  グータラ三十路干物女から幼女へ転生。  だが目覚めた時状況がおかしい!。  神に会ったなんて記憶はないし、場所は……「森!?」  記憶を取り戻しチート使いつつ権力は拒否!(希望)  過保護な周りに見守られ、お世話されたりしてあげたり……  自ら面倒事に突っ込んでいったり、巻き込まれたり、流されたりといろいろやらかしつつも我が道をひた走る!  異世界で好きに生きていいと神様達から言質ももらい、冒険者を楽しみながらごーいんぐまいうぇい! ____________________ 1/6 hotに取り上げて頂きました! ありがとうございます! *お知らせは近況ボードにて。 *第一部完結済み。 異世界あるあるのよく有るチート物です。 携帯で書いていて、作者も携帯でヨコ読みで見ているため、改行など読みやすくするために頻繁に使っています。 逆に読みにくかったらごめんなさい。 ストーリーはゆっくりめです。 温かい目で見守っていただけると嬉しいです。

気づいたら異世界でスライムに!? その上ノーチートって神様ヒドくない?【転生したらまさかのスライム《改題》】

西園寺卓也
ファンタジー
北千住のラノベ大魔王を自称する主人公、矢部裕樹《やべひろき》、28歳。 社畜のように会社で働き、はや四年。気が付いたら異世界でスライムに転生?してました! 大好きなラノベの世界ではスライムは大魔王になったりかわいこちゃんに抱かれてたりダンジョンのボスモンスターになったりとスーパーチートの代名詞!と喜んだのもつかの間、どうやら彼にはまったくチートスキルがなかったらしい。 果たして彼は異世界で生き残る事ができるのか? はたまたチートなスキルを手に入れて幸せなスラ生を手に入れられるのか? 読みまくった大人気ラノベの物語は知識として役に立つのか!? 気づいたら異世界でスライムという苦境の中、矢部裕樹のスラ生が今始まる! ※本作品は「小説家になろう」様にて「転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない?」を改題した上で初期設定やキャラのセリフなどの見直しを行った作品となります。ストーリー内容はほぼ変更のないマルチ投稿の形となります。

処理中です...