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竜の国

ルドガイアの動き

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ルドガイアからの使者はドラコニアンだったそうで、人型の姿でファディア王と直接話をした。
無論その場で戦闘なる可能性もあったので、メリーゼハーヴも同席したそうだ。

「それで、何を話したの?」
「海竜とファディア王国はルドガイアの傘下から抜けると言っただけじゃぞ」
「相手は何て?」
「『分かった』とだけじゃ」

たったそれだけ?引き留める事も脅す事もしなかったのね。

「妾がおるのじゃ。つまらぬ事を吐かしおったらその場で挽肉にされる事ぐらい分かっておったのじゃろう」
「まあそうね」

相変わらず過激な事を言うわね。

「そのドラコニアンの名前は聞いた?」
「ふむ。名乗ってはおったが雑魚の名前など興味がないからのぅ……」

こめかみに指を当てて考えているが、思い出しそうにない。

「まあしかし、其奴が魔竜王にファディアの事を伝えれば、間違いなくルドガイアは攻めて来るじゃろう」
「そうね」
「いよいよ開戦じゃな!腕がなるのう」

やたらと張り切っているが、ファディアを守りながらルドガイアと戦う事になるのを分かっているのだろうか。

「国の防衛体制を強化する必要がありそうね」
「そうじゃな」

強化するのは戦力ではなく警戒力だ。
オオトリやトコヤミには負担を掛けてしまうが、被害を最小限に止める為には彼らの目が必要だ。

特に北部。ルドガイアの攻撃で陥落した街はそのままになっているが、そこを足掛かりにこちらに侵攻して来る可能性もある。

「危険なのはディアブレル、リーグニツ、ソアニール、ファディア辺りじゃな。ディアブレルは隣国がルドガイアに滅ぼされてかなり経つらしいではないか」
「あら、知っていたのね」
「妾とて遊んでいた訳ではない。眷属やファディアの者を使って色々調べさせておる」

結局あなたは遊んでいるじゃないの。
まあしかし情報収集については有難い。

ディアブレルに面していた人間の国は、隣国といえど高い山脈を挟んで反対側に位置しており、容易には越えては来られないそうだ。

地中か空を使えば侵攻も可能だろうが、大軍を率いて来られる事はない。

となると距離のあるソアニール、リーグニツ、ファディアが攻撃を受ける可能性が高い。特にリーグニツはライアッドとの戦争で兵力を大きく減らしている上に新しい体制も不十分な点が多いと聞く。

「精霊殿が案じている事は、然程気にせんでも良いと思うぞ」
「なぜ?」
「奴らは弱い所を攻めるという考えを持っておらぬからじゃ。寧ろ敵が強い方が喜ぶ」

なるほど。それが本当なら疲弊した国を好んで狙ったりはして来ないか。

「魔竜王ズロヴァストは何を目的として侵略をしているのかしら?」
「さて、妾にも分からぬ。本当に強い者を屈服させたいだけなのかも知れないぞ」

だとしたら私達の所に来ないのはおかしいだろう。本人に会って聞いてみたい所だが。

「精霊殿、一つ頼みを聞いてもらえぬか?」
「今部屋を一つあげたでしょう?」
「そうではない。真面目な話じゃ」

メリーゼハーヴはこちらに向き直って真っ直ぐと私を見る。

「妾を眷属に加える気はないかえ?」
「急にどうしたの?」
「魔竜王ズロヴァストは強い。今の妾では太刀打ちできぬのじゃ。精霊殿の眷属になれば更に強くなれるのではないかと思うてのぅ」

確かに眷属になった者達は身体能力、戦闘力は大幅に上昇している。メリーゼハーヴも眷属になれば能力向上の可能性はあるが……

「メリーゼハーヴ、私は眷属にしてきた皆を戦いの道具にしたくないのよ。本当ならルドガイアとも戦いたくない」
「分かっておる。じゃが妾には力が必要なのじゃ。眷属を守る為にも」

言いたい事は分かるが、私は安易に彼女を眷属にするのはどうかと思っている。
メリーゼハーヴには多くの眷属達がいるのだ。彼らの気持ちを聞いてからでも遅くはないのではないだろうか。
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