421 / 453
竜の国
ルドガイアの動き
しおりを挟む
ルドガイアからの使者はドラコニアンだったそうで、人型の姿でファディア王と直接話をした。
無論その場で戦闘なる可能性もあったので、メリーゼハーヴも同席したそうだ。
「それで、何を話したの?」
「海竜とファディア王国はルドガイアの傘下から抜けると言っただけじゃぞ」
「相手は何て?」
「『分かった』とだけじゃ」
たったそれだけ?引き留める事も脅す事もしなかったのね。
「妾がおるのじゃ。つまらぬ事を吐かしおったらその場で挽肉にされる事ぐらい分かっておったのじゃろう」
「まあそうね」
相変わらず過激な事を言うわね。
「そのドラコニアンの名前は聞いた?」
「ふむ。名乗ってはおったが雑魚の名前など興味がないからのぅ……」
こめかみに指を当てて考えているが、思い出しそうにない。
「まあしかし、其奴が魔竜王にファディアの事を伝えれば、間違いなくルドガイアは攻めて来るじゃろう」
「そうね」
「いよいよ開戦じゃな!腕がなるのう」
やたらと張り切っているが、ファディアを守りながらルドガイアと戦う事になるのを分かっているのだろうか。
「国の防衛体制を強化する必要がありそうね」
「そうじゃな」
強化するのは戦力ではなく警戒力だ。
オオトリやトコヤミには負担を掛けてしまうが、被害を最小限に止める為には彼らの目が必要だ。
特に北部。ルドガイアの攻撃で陥落した街はそのままになっているが、そこを足掛かりにこちらに侵攻して来る可能性もある。
「危険なのはディアブレル、リーグニツ、ソアニール、ファディア辺りじゃな。ディアブレルは隣国がルドガイアに滅ぼされてかなり経つらしいではないか」
「あら、知っていたのね」
「妾とて遊んでいた訳ではない。眷属やファディアの者を使って色々調べさせておる」
結局あなたは遊んでいるじゃないの。
まあしかし情報収集については有難い。
ディアブレルに面していた人間の国は、隣国といえど高い山脈を挟んで反対側に位置しており、容易には越えては来られないそうだ。
地中か空を使えば侵攻も可能だろうが、大軍を率いて来られる事はない。
となると距離のあるソアニール、リーグニツ、ファディアが攻撃を受ける可能性が高い。特にリーグニツはライアッドとの戦争で兵力を大きく減らしている上に新しい体制も不十分な点が多いと聞く。
「精霊殿が案じている事は、然程気にせんでも良いと思うぞ」
「なぜ?」
「奴らは弱い所を攻めるという考えを持っておらぬからじゃ。寧ろ敵が強い方が喜ぶ」
なるほど。それが本当なら疲弊した国を好んで狙ったりはして来ないか。
「魔竜王ズロヴァストは何を目的として侵略をしているのかしら?」
「さて、妾にも分からぬ。本当に強い者を屈服させたいだけなのかも知れないぞ」
だとしたら私達の所に来ないのはおかしいだろう。本人に会って聞いてみたい所だが。
「精霊殿、一つ頼みを聞いてもらえぬか?」
「今部屋を一つあげたでしょう?」
「そうではない。真面目な話じゃ」
メリーゼハーヴはこちらに向き直って真っ直ぐと私を見る。
「妾を眷属に加える気はないかえ?」
「急にどうしたの?」
「魔竜王ズロヴァストは強い。今の妾では太刀打ちできぬのじゃ。精霊殿の眷属になれば更に強くなれるのではないかと思うてのぅ」
確かに眷属になった者達は身体能力、戦闘力は大幅に上昇している。メリーゼハーヴも眷属になれば能力向上の可能性はあるが……
「メリーゼハーヴ、私は眷属にしてきた皆を戦いの道具にしたくないのよ。本当ならルドガイアとも戦いたくない」
「分かっておる。じゃが妾には力が必要なのじゃ。眷属を守る為にも」
言いたい事は分かるが、私は安易に彼女を眷属にするのはどうかと思っている。
メリーゼハーヴには多くの眷属達がいるのだ。彼らの気持ちを聞いてからでも遅くはないのではないだろうか。
無論その場で戦闘なる可能性もあったので、メリーゼハーヴも同席したそうだ。
「それで、何を話したの?」
「海竜とファディア王国はルドガイアの傘下から抜けると言っただけじゃぞ」
「相手は何て?」
「『分かった』とだけじゃ」
たったそれだけ?引き留める事も脅す事もしなかったのね。
「妾がおるのじゃ。つまらぬ事を吐かしおったらその場で挽肉にされる事ぐらい分かっておったのじゃろう」
「まあそうね」
相変わらず過激な事を言うわね。
「そのドラコニアンの名前は聞いた?」
「ふむ。名乗ってはおったが雑魚の名前など興味がないからのぅ……」
こめかみに指を当てて考えているが、思い出しそうにない。
「まあしかし、其奴が魔竜王にファディアの事を伝えれば、間違いなくルドガイアは攻めて来るじゃろう」
「そうね」
「いよいよ開戦じゃな!腕がなるのう」
やたらと張り切っているが、ファディアを守りながらルドガイアと戦う事になるのを分かっているのだろうか。
「国の防衛体制を強化する必要がありそうね」
「そうじゃな」
強化するのは戦力ではなく警戒力だ。
オオトリやトコヤミには負担を掛けてしまうが、被害を最小限に止める為には彼らの目が必要だ。
特に北部。ルドガイアの攻撃で陥落した街はそのままになっているが、そこを足掛かりにこちらに侵攻して来る可能性もある。
「危険なのはディアブレル、リーグニツ、ソアニール、ファディア辺りじゃな。ディアブレルは隣国がルドガイアに滅ぼされてかなり経つらしいではないか」
「あら、知っていたのね」
「妾とて遊んでいた訳ではない。眷属やファディアの者を使って色々調べさせておる」
結局あなたは遊んでいるじゃないの。
まあしかし情報収集については有難い。
ディアブレルに面していた人間の国は、隣国といえど高い山脈を挟んで反対側に位置しており、容易には越えては来られないそうだ。
地中か空を使えば侵攻も可能だろうが、大軍を率いて来られる事はない。
となると距離のあるソアニール、リーグニツ、ファディアが攻撃を受ける可能性が高い。特にリーグニツはライアッドとの戦争で兵力を大きく減らしている上に新しい体制も不十分な点が多いと聞く。
「精霊殿が案じている事は、然程気にせんでも良いと思うぞ」
「なぜ?」
「奴らは弱い所を攻めるという考えを持っておらぬからじゃ。寧ろ敵が強い方が喜ぶ」
なるほど。それが本当なら疲弊した国を好んで狙ったりはして来ないか。
「魔竜王ズロヴァストは何を目的として侵略をしているのかしら?」
「さて、妾にも分からぬ。本当に強い者を屈服させたいだけなのかも知れないぞ」
だとしたら私達の所に来ないのはおかしいだろう。本人に会って聞いてみたい所だが。
「精霊殿、一つ頼みを聞いてもらえぬか?」
「今部屋を一つあげたでしょう?」
「そうではない。真面目な話じゃ」
メリーゼハーヴはこちらに向き直って真っ直ぐと私を見る。
「妾を眷属に加える気はないかえ?」
「急にどうしたの?」
「魔竜王ズロヴァストは強い。今の妾では太刀打ちできぬのじゃ。精霊殿の眷属になれば更に強くなれるのではないかと思うてのぅ」
確かに眷属になった者達は身体能力、戦闘力は大幅に上昇している。メリーゼハーヴも眷属になれば能力向上の可能性はあるが……
「メリーゼハーヴ、私は眷属にしてきた皆を戦いの道具にしたくないのよ。本当ならルドガイアとも戦いたくない」
「分かっておる。じゃが妾には力が必要なのじゃ。眷属を守る為にも」
言いたい事は分かるが、私は安易に彼女を眷属にするのはどうかと思っている。
メリーゼハーヴには多くの眷属達がいるのだ。彼らの気持ちを聞いてからでも遅くはないのではないだろうか。
3
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~
骨折さん
ファンタジー
なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。
どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。
そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。
世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。
「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」
来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。
このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?
壁だぜ!? 無理なんじゃない!?
これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である!
※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。
※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します。
夕立悠理
恋愛
ベルナンデ・ユーズには前世の記憶がある。
そして、前世の記憶によると、この世界は乙女ゲームの世界で、ベルナンデは、この世界のヒロインだった。
蝶よ花よと愛され、有頂天になっていたベルナンデは、乙女ゲームのラストでメインヒーロ―である第一王子のラウルに告白されるも断った。
しかし、本来のゲームにはない、断るという選択をしたせいか、ベルナンデにだけアナウンスが聞こえる。
『愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します』
そのアナウンスを最後に、ベルナンデは意識を失う。
次に目を覚ました時、ベルナンデは、ラウルの妃になっていた。
なんだ、ラウルとのハッピーエンドに移行しただけか。
そうほっとしたのもつかの間。
あんなに愛されていたはずの、ラウルはおろか、攻略対象、使用人、家族、友人……みんなから嫌われておりー!?
※小説家になろう様が一番早い(予定)です
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる