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竜の国
祝賀会
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芽依の優勝をラムドが讃えて武術会は終了。その日の夜には王城にて祝賀会が行われる。
本戦出場の十六人は全員この会に出席して貴族の護衛や特別な依頼を受けられる権利を受けられる手続きをするらしい。
中には騎士に取立てられる者もいるそうで、大会本戦出場というのは様々な者の希望でもあった様だ。
それを私達は七枠もとってしまったのね。少し申し訳ない気分もするが、その程度の実力だったと思って更に精進してもらえればと思う。
私はこの場でゼムロス達に直接真意を問うつもりだ。
颯太達も招待されていて、服まで用意してくれていた。
芽依達もそれぞれドレスを用意してもらっていて嬉しそうだった。
「お母さんどう?似合う?」
赤いドレスを身に纏った芽依は私の前でクルクルと回りながら聞いてくる。
「ええ。とても良く似合っているわ。お姫様みたいよ」
「えへへ」
中身はまだまだ子供なのだから。
「俺達、仕官の打診があっても断るから」
「当たり前じゃない!私達は冒険者でハルさんの仲間なんだからね!」
「その通りです。言うまでもありませんよ」
セロ、リン、ミラもパーティに相応しい服装をしながら真剣に話していた。
私はセロ達が望むなら冒険者を辞めても良いと思っている。彼らは既に普通の冒険者よりも随分と強くなっているし、安定収入を望めるのなら仕官も悪く無いだろう。私がそう言うと、「ハルさん達との冒険が終わったら考えるよ」とセロは笑いながら答えていた。
祝賀会場に芽依達は先に入って行き、カクカミ達もついて行った。
私と颯太とメリーゼハーヴはラムド達王族らと共に入場、ラムドが祝辞を述べて乾杯をしてあとは自由だ。
芽依達本戦出場者の所には貴族達が群がり、ラムド達王族、私の所にも貴族が挨拶に来ていた。
私は次々と挨拶に来る貴族達にややうんざりしながら応対する。
大会出場者達も私が空いたタイミングを見計らってやって来る。
何人かと話した後、ゼムロス、アロム、グルガンが一緒にやって来た。
「泉の精霊ハル様、この度は大変失礼致しました、今一度お詫び申し上げます」
そう言って跪き首を垂れるゼムロス。後の二人もそれに倣った。
「あなた達三人には聞きたい事があります」
「ここに来た理由ですね」
どうやら話すつもりで来ていた様だ。
「我々はルドガイアの命で精霊様に探りを入れに来ました」
会場が凍り付く。
警備の兵達が大慌てでゼムロス達の所に集まってくる。
「ルドガイアの魔竜王からの命令は、『精霊ハルの力量の把握と暗殺』でした」
「それで、私をここで殺そうというの?」
颯太とメリーゼハーヴが私の前に出ようとするが、それを制して話を続ける。
「いいや、滅相もない。俺達は泉の精霊ハル様の力を思い知りました。敵対しようなどと思う気にもなりません」
「それでは何故ここに?」
「俺達は精霊様と共に戦いたいと思いここに参りました。これから先、ルドガイアとは嫌でもぶつかる事になるでしょう。俺達は祖国の敵を討ちたいんだ。頼みます。我らを陣列に加えてください」
驚きの返答だった。
そんな気もしてはいたのだが、まさか直接言ってくるとは思わなかったのだ。
「あなた達の仲間はこれで全員ではないでしょう?」
「俺達の同胞は総勢で三十六人、全員ガルデインの者です」
「分かりました。しかし直ぐに信用はできません。ライアッドにルドガイアの情報を提供しなさい。それ次第で信用に足るかを決めさせてもらいます」
「ありがとうございます!」
ゼムロス達は跪いたまま更に頭を低く下げた。
彼らはルドガイアに家族などを人質に取られてはいないのだろうかと聞いたのだが、「家族は全員殺されました」と悔しそうに言っていた。
ルドガイアの魔竜王は彼らが裏切る事を予期しなかったのだろうか?
本戦出場の十六人は全員この会に出席して貴族の護衛や特別な依頼を受けられる権利を受けられる手続きをするらしい。
中には騎士に取立てられる者もいるそうで、大会本戦出場というのは様々な者の希望でもあった様だ。
それを私達は七枠もとってしまったのね。少し申し訳ない気分もするが、その程度の実力だったと思って更に精進してもらえればと思う。
私はこの場でゼムロス達に直接真意を問うつもりだ。
颯太達も招待されていて、服まで用意してくれていた。
芽依達もそれぞれドレスを用意してもらっていて嬉しそうだった。
「お母さんどう?似合う?」
赤いドレスを身に纏った芽依は私の前でクルクルと回りながら聞いてくる。
「ええ。とても良く似合っているわ。お姫様みたいよ」
「えへへ」
中身はまだまだ子供なのだから。
「俺達、仕官の打診があっても断るから」
「当たり前じゃない!私達は冒険者でハルさんの仲間なんだからね!」
「その通りです。言うまでもありませんよ」
セロ、リン、ミラもパーティに相応しい服装をしながら真剣に話していた。
私はセロ達が望むなら冒険者を辞めても良いと思っている。彼らは既に普通の冒険者よりも随分と強くなっているし、安定収入を望めるのなら仕官も悪く無いだろう。私がそう言うと、「ハルさん達との冒険が終わったら考えるよ」とセロは笑いながら答えていた。
祝賀会場に芽依達は先に入って行き、カクカミ達もついて行った。
私と颯太とメリーゼハーヴはラムド達王族らと共に入場、ラムドが祝辞を述べて乾杯をしてあとは自由だ。
芽依達本戦出場者の所には貴族達が群がり、ラムド達王族、私の所にも貴族が挨拶に来ていた。
私は次々と挨拶に来る貴族達にややうんざりしながら応対する。
大会出場者達も私が空いたタイミングを見計らってやって来る。
何人かと話した後、ゼムロス、アロム、グルガンが一緒にやって来た。
「泉の精霊ハル様、この度は大変失礼致しました、今一度お詫び申し上げます」
そう言って跪き首を垂れるゼムロス。後の二人もそれに倣った。
「あなた達三人には聞きたい事があります」
「ここに来た理由ですね」
どうやら話すつもりで来ていた様だ。
「我々はルドガイアの命で精霊様に探りを入れに来ました」
会場が凍り付く。
警備の兵達が大慌てでゼムロス達の所に集まってくる。
「ルドガイアの魔竜王からの命令は、『精霊ハルの力量の把握と暗殺』でした」
「それで、私をここで殺そうというの?」
颯太とメリーゼハーヴが私の前に出ようとするが、それを制して話を続ける。
「いいや、滅相もない。俺達は泉の精霊ハル様の力を思い知りました。敵対しようなどと思う気にもなりません」
「それでは何故ここに?」
「俺達は精霊様と共に戦いたいと思いここに参りました。これから先、ルドガイアとは嫌でもぶつかる事になるでしょう。俺達は祖国の敵を討ちたいんだ。頼みます。我らを陣列に加えてください」
驚きの返答だった。
そんな気もしてはいたのだが、まさか直接言ってくるとは思わなかったのだ。
「あなた達の仲間はこれで全員ではないでしょう?」
「俺達の同胞は総勢で三十六人、全員ガルデインの者です」
「分かりました。しかし直ぐに信用はできません。ライアッドにルドガイアの情報を提供しなさい。それ次第で信用に足るかを決めさせてもらいます」
「ありがとうございます!」
ゼムロス達は跪いたまま更に頭を低く下げた。
彼らはルドガイアに家族などを人質に取られてはいないのだろうかと聞いたのだが、「家族は全員殺されました」と悔しそうに言っていた。
ルドガイアの魔竜王は彼らが裏切る事を予期しなかったのだろうか?
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