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竜の国

人形達

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エレから離れていく冒険者達。

暫く困っていたエレだったが、一方向に走り出し手近な冒険者を捕まえて投げ飛ばす。矢の様に飛んでいった冒険者は壁に叩きつけられて動かなくなる。

死んではいないわね。

「攻撃しなければ何もしないなんて思ってたんですか?全員倒さないと本戦に行けないんだから誰も逃しませんよ!」

笑いながらそんな事を言うエレは同じブロックの者達にはどう見えたのだろう。

そこからは一方的な追いかけっこになっていた。逃げ惑う冒険者達を捕まえては投げ、立ち向かって来た冒険者の剣を拳で破壊してとエレの独壇場だった。

数人はエレに恐怖して棄権。銅鑼が打ち鳴らされ決着が告げられた。

「まったくあのお調子者め。ハル様の水がなければ数人は死んでいたぞ」
「大雑把な所は相変わらずだね」

トコヤミは大きく溜息を吐き、颯太は笑顔で言っていた。

次はマイの出番だ。

このブロックにはマイ以外にも個人出場者が三人いた。

「お嬢ちゃん、協力しようぜ」
「や、です」

大剣を背負った筋肉質の男が声を掛けて来たがマイはそちらに向く事もせずに断っていた。

「や?嫌って事か?俺はお嬢ちゃんが心配だから声を掛けたつもりなんだが……まあいい、怪我をしない内に棄権するんだぞ」

そう言って去っていく男。
マイは会場の壁際に移動して他の出場者を観察している。

「マイはああ見えて強かだからね。出場者の様子を見て作戦を立てているんだと思うよ」

颯太はマイを高く評価している様だ。

銅鑼が打ち鳴らされ開始が告げられる。

マイは壁に背を付ける位下がって服の襟を左手でぎゅっと掴んでキョロキョロし始める。

「あれは何をやっているのでしょう……?」

カクカミは不思議そうに聞いてきた。

「あれは油断させる為にわざとあんな仕草をしているのだと思うわ」

冒険者三人のチームがマイの所にやって来る。

「お嬢ちゃん、今すぐ降参するなら痛い思いをしなくて済むぜ?」
「……何か俺達悪役みたいだな」
「気が引けるがこれは試合だからな」

マイは泣きそうな顔をして後退ろうとさるが、背中には壁を背負っている。

「おいおい、女の子を虐めるんじゃねえよ!」

別の方向から槍を持った男がやって来て三人と戦い始める。この男は個人出場者の一人で、開始前にマイに話しかけて来た大剣使いと共闘する約束をしていた様だが……

「なんで態々そっちに行くんだよ?ったく、しゃあねえ!」

槍使いに追いついて来た大剣使いも三人組と戦い始める。

マイは怯えた様子で手で顔を覆っていたが口元は笑っていた。

「あれっていいの?」
「良いも何も周りが勝手に戦っているだけだから違反にはならないね」

メトが首を傾げていると颯太は笑顔のまま答える。

マイの事だからゴーレムを出すか自身に纏うかして出場者を蹴散らすと思っていたのだけど。

戦闘はあちこちで起こっていた。
それぞれが傷付き倒れていく中でマイだけが無傷だった。

「……上手くいき過ぎて申し訳ないのです」

流石のマイも罪悪感を感じている様だ。

重傷者は棄権、退場していく中、残るはマイを含めて八人。

「さあて、お嬢ちゃん……ここからは守ってやる事は出来ないぜ。この中で勝ち残れるのは一人だけだ」
「分かってます、でもその前に……」

マイが両手を合わせて祈る様な仕草をすると、地面から柔らかな光が溢れてきて全員を包む。

「傷が……」
「おいおい……嬢ちゃん回復魔法師だったのかよ」

全員自分の体を確認しながら驚いていた。

「お詫びとお礼なのです。今からは全員敵です。覚悟するですよ!」

マイが地面に手を付くと土が盛り上がっていき七体の土のゴーレムが現れた。

「そんな事まで出来るのかよ……」
「だが土の人形がいくら居ようとも!」

槍使いが鋭い突きを放つ。しかしゴーレムはまるで人間の様にヌルリと動くと槍を避けて男に拳を叩きつける。

「うぐぁっ……!?」

たったの一撃で倒してしまう。

「さ、みんなやっちゃえ、です」

マイは自信たっぷりの笑顔で命令した。
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