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竜の国

芽依の一騎討ち

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「皆、他の者を相手していろ」

セブレスはそう言って剣を抜いた。

「いいえ。あんな女、我らが倒します。先生はそのままで」
「お前達では無理だ」
「我らとて先生の所で修行を受けている身です。たかだか女冒険者一人に遅れはとりません」

そう言うと一人の男が芽依目掛けて走り出す。セブレスは小さくため息を吐くだけでそれ以上止めはしなかった。

「先生に切先を向けるとは無礼者め!」
「これは試合でしょ?」
「お前如きが先生と剣を交えようなどと、十年早いわ!」

走りながらも息を乱さない、小さな動作で剣を構えると加速して芽依に斬りかかる。

芽依に向けて放たれた横薙ぎの一撃は、芽依の剣で軽々と受け止められる。

「軽いよ、お兄さんの剣。そんなんだからあの人に相手にされないんじゃない?」
「何だと…!」

激昂した男は芽依に連撃を見舞うがそれらも全て片手で捌いていく芽依。

「何をやっている!」
「助太刀する!」

更に二人の剣士が飛び込んでくる。
取り囲む様にして連続で斬りかかる三人
。芽依はそれを余裕で躱していく。

「ちっ!おい、邪魔をするな!」
「そっちがどけ!」
「喧嘩している場合ではないだろう!」

全く連携が取れていない三人。これなら一人の方が良かったかも知れないわね。

芽依は攻撃を潜ると柄で一撃を加えて一人を倒す。
驚いて動きを止めた剣士を鞘で殴りつけ昏倒させ、怯まずに斬りかかってきた剣士には蹴りを放って倒した。

「これで分かったでしょ?早く、やろ?」

切先をセブレスに向けて言う芽依。

「おのれ…!調子に乗りおって!!」
「やめんか見苦しい」

激昂する弟子の一人を叱りつけるセブレス。

「お前達は大きな勘違いをしている。それが何か分かるか?」
「も、申し訳ありません」
「剣の道を志す者ならば、師を守るのではなく何故立ち向かわない?お前達に守られずとも、この場にいる全員が一度に襲って来ようとも私は負けるつもりはない」

残った弟子達を冷たい目で見ながらセブレスは続ける。

「お前達はあの者の実力も分からんのか?」
「悔しいですが我らでは太刀打ち出来ません。残りの全員でかかれば或いは……」
「戯け者」

そう言って大きく息を吐くセブレス。

「お前達は何故私を守る?」
「先生が戦うべき強者が現れるまでの露払いをと……」
「ならば今この時、だ。お前達は私と戦うつもりがないのなら棄権しろ」

セブレスは芽依の方へ歩いてくる。

「名を教えてもらえますかな?」
「メイだよ」
「成る程。精霊様の御息女であられたか。申し遅れた、私はセブレス・レンブラン。不詳の弟子達が失礼した」
「いいよ。私は気にしてない」

芽依は剣を構える。「早く始めよう」と言わんばかりだ。

「では参る!」

セブレスは剣を構える事をせずに芽依の目の前に飛び込んでいた。
芽依はほんの一瞬対応が遅れたがセブレスの袈裟懸けの一撃を受け流していた。

直後激しく金属がぶつかり合う音が三回、一瞬の攻撃で殆どの者が見えなかった様だが、セブレスは素早く剣を引くと三段突きを見舞っていた。
芽依はそれに反応して全て受け流す。

「くっ……」

芽依が僅かに顔を歪ませる。
三度目の突きが思いの外鋭く、右腕を浅く斬り裂いていた。

「見事。しかしこれは如何かな?」

後ろに下がろうとする芽依に追い討ちを掛けるセブレス。腰溜めに構えた剣を芽依の左肩目掛けて放つ。
芽依の動きが止まる。突き込んでくる剣を右に動いて躱そうとするが、渾身の突きはフェイントだった。

素早く剣を引き戻すと地面を抉り取る様な勢いで剣が振り上げられる。

しかし芽依もその動きを読んでいた。

芽依は鞘を地面に思い切り打ち付けて斬り上げ攻撃を止めると、上体への連撃を放つ。セブレスは身を低くしてそれを躱して剣を引きながら弧を描く様に芽依の側面に移動する。

が、芽依は既にそこには居なかった。

セブレスの動きを追尾する様に動いて彼の右大腿部を斬り裂く。

「ぬぅっ……」

セブレスは転がりながら芽依と距離をとる。芽依は追撃せずに構えを解いた。

「セブレスさん、足を痛めてるよね?」
「目敏いな」
「当たり前だよ。私は冒険者、相手の弱い所を見逃す訳は無いよ」

芽依はそう言うと切先を向けながら言う。

「勝負は着いたよ。棄権して?」
「無念……」

セブレスは剣を捨てて棄権した。

一瞬の攻防だった為、観客の殆どが唖然としたまま何も言わなかった。

「メイ殿も強いのぅ。妾では太刀打ちできぬかもしれん」

そう言うメリーゼハーヴは上機嫌だった。
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