上 下
376 / 453
竜の国

建設

しおりを挟む
「えっ?何?」
「まさか家ごと……?」

転移は成功していた。やった私も驚いていたがバルディを含めた四人は驚くを通り越して混乱していた。

「出鱈目過ぎる……ハルがその気になればルドガイアの魔竜王も倒せるんじゃないか?」
「それはどうか分からないけど、取り敢えず引越しの手間は省けたわね」

マサに答えながらこれから先の事を考える。彼らは西部のゴブリンが開墾している辺りに住んでもらい、ミックは農業を、マサとナナは調味料の製造に取り掛かってもらおうと思う。

「母さんおかえり」

家の外から颯太の声が聞こえて来たので外に出る。外には芽依達も集まって来ていた。

「ただいま。驚かせてしまったわね」
「お母さん、今度は何をしてきたの?」

芽依に聞かれて事情を説明する。

「成る程。それじゃあ早速ゴブリン達に話に言った方が良さそうだね」

颯太が言うには各村を繋ぐ道の整備の第一段階は完了して、今は泉の南側の森を切り拓いて街を作ろうとしているらしい。

「各村の生産品を取引できる場所が必要だからね。それに学校や病院も作っているよ」

颯太は各村の学力について統計を取り終えていて、既に学校建設の計画まで進めている。

病院についてはトウヤが主導で建物を設計しているらしい。
病院が完成したらトウヤには院長に就任してもらい、医術を教えていく事も視野に入れているそうだ。

芽依達は訓練を続けるそうなので、私達もゴブリンの村に転移で移動する事にした。

『ハル様、今日はどの様な御用でしょう?』

長にマサ、ナナ、ミック、バルディを紹介して農業の指導と生産物の調整を提案、依頼する。

『こちらは大助かりです。ウルゼイドから技術の指導は受けましたが全員が習得できたわけではないので、一緒に暮らしながら教えていただけるなら大歓迎ですよ』

長が喜ぶ姿を見てマサとナナは驚き、ミックとバルディは言葉が分からない為首を捻っていた。

「ハルの言う通り悪い連中じゃなさそうだな」
「ゴブリンってもっと凶暴たと思ってたよ」
『我らはハル様の眷属ですから、それに恥じぬ振る舞いをしているのです。他のゴブリンとは違いますよ』

長は笑いながらマサとナナに話していた。

家の移転場所と新たに畑を作る場所の相談をして、家を転移させてきて一応は完了。

醤油を作るための工場も作りたい所だが、まずは彼らの生活環境を整えてからだろう。

「必要な物があれば言って下さい。用意します」
「俺達、金は持ってないんだが……」
「気にしないで。私の能力で出せる物ならお金はかからないから」

《物質変換》で出せる物なら泉の水を対価にすれば大抵は出す事ができる。

「服や食器が欲しい。俺の手に合う調理道具があると最高だ」
「そうですね……農具があると助かります。替え時だったのですが資金が無くて」
「分かりました」

それくらいなら容易い。
水を出してから《物質変換》を使用。
全員分の着替えに食器、マサのサイズに合わせた調理器具に農具一式。

「スゲェな……」
「ありがとうございます……!」

マサとミックは大喜びだ。

「ナナさんは何かほしい物はありますか?」
「マヨネーズ!」
「……これから自分で作るのですよね?」
「完成品があった方がそれに近付ける努力ができます!」

……ただ欲しいだけな気がするが。まあ、ナナが消費する分くらいは出しても良いだろう。

水を変換してよく見るあの容器に入ったマヨネーズを生成する。

「こ、ここ……これです!私が欲しかったのは!!」

大喜びでマヨネーズを受け取って蓋を開けるナナ。

「ちょっと、それをどうするの?」
「飲みます!」
「やめなさい!」

いくら何でもそれは身体に悪いわよ。

「必要ならいつでも出してあげるから早まらないで」
「ホントですか?」
「え、ええ」
「約束ですよ!」

余程マヨネーズに飢えていたのね。
しかし変な約束をしてしまったが、彼女はマヨネーズの製造をやめたりしないだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

桐生桜月姫
ファンタジー
 愛良と晶は仲良しで有名な双子だった。  いつも一緒で、いつも同じ行動をしていた。  好き好みもとても似ていて、常に仲良しだった。  そして、一緒に事故で亡くなった。  そんな2人は転生して目が覚めても、またしても双子でしかも王族だった!?  アイリスとアキレスそれが転生後の双子の名前だ。  相変わらずそっくりで仲良しなハイエルフと人間族とのハーフの双子は異世界知識を使って楽しくチートする!! 「わたしたち、」「ぼくたち、」 「「転生しても〜超仲良し!!」」  最強な天然双子は今日もとっても仲良しです!!

少女は自重を知らない~私、普通ですよね?

チャチャ
ファンタジー
山部 美里 40歳 独身。 趣味は、料理、洗濯、食べ歩き、ラノベを読む事。 ある日、仕事帰りにコンビニ強盗と鉢合わせになり、強盗犯に殺されてしまう。 気づいたら異世界に転生してました! ラノベ好きな美里は、異世界に来たことを喜び、そして自重を知らない美里はいろいろな人を巻き込みながら楽しく過ごす! 自重知らずの彼女はどこへ行く?

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...