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竜の国

和食好きの竜人族

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ゾーヤの生産農家の人に聞けば情報を得られるかもしれない。
私達は敷地に入り民家と思しき建物に向かう。

「ここの人は人間?」
『いや獣人族だ』
「聞いた事のない種族ね。どんな姿をしているの?」
『基本的には人間と見た目がほとんどかわらない。違いがあるとしたら耳と尻尾だな。犬や猫の様な耳、尻尾が付いている。爪が鋭い者もいるし人間より歯が鋭い。どちらも俺達には劣るけどな』

狼男みたいな感じかしらね。

話しながら歩いていたら民家の陰から人間が出てきた。いや人間ではない、竜人族ドラゴニュートだ。

頭にほっかむりをして背中に竹籠を背負っている。籠の中には畑で採れたであろう野菜が入っていた。

私達を見て驚き動きを止める。

「や、やあ……ここに何の用かな……?」

泥棒の様な風体の竜人族ドラゴニュートは普通に人間の言葉を話した。

『マサ!お前マサだろう?』
『げっ……お前、バルディか?』

瞬ぎながら答えるほっかむりの竜人族ドラゴニュート。彼がマサで間違いない様だ。

「あなたを探しに来ました」
「こんな可愛らしいお嬢さんに知り合いはいないが」
「私は泉の精霊のハルと言います。あなたと同じ転生者です」

そう言った瞬間ピタリと動きを止めるマサ。目はしきりに動いているが、逃げる方法でも探しているのだろうか?

「……俺を殺しに来たのか?」
「あなたが私達に危害を加えるつもりが無いのなら何もしません」
「俺はアンタ……ハルと戦うつもりは無い。ってか、戦い自体するつもりはないんだ」

彼は聞いた通り戦いには消極的だ。

「分かりました。私はあなたに何もしないと誓いましょう。それからファディア王からの言伝で、『自由に生きてくれて構わない』だそうですよ」
「ファディアの王様が……?ありがたい」

何度も頷きながら言うマサ。表情はわからないが喜んでいるのが分かる。

「あと二つ聞きたい事があるのだけど」
「何だい?」
「まずあなたはここで何をしているの?泥棒ではないわよね?」
「失礼な……俺はここの収穫の手伝いをしているだけだ!」
「その格好では説得力がないわよ」
「これは……俺はお尋ね者だから顔を隠す為にだな」

頭の布を取るマサ。それで変装のつもりなのかしら。

「もう一つ、あなたが作っているのは醤油よね?毒性があると聞いたけど」
「あれは……どうやっても毒になっちまうんだ。毒性の原因も分からないし何度やっても普通の醤油が作れない。俺は和食が食いたいだけなのに……!」

そう言う彼は泣いていた。
泣く程の苦労を重ねてきたのだろう。

『そういえばあの女はどうしたんだ?』
『ナナの事か?アイツならここの家人と料理をしている筈だぞ』

そう言えば連れがいると話していたわね。名前的には彼女も転生者かも知れない。

「ハル、ナナも戦いには興味が無い。会って話を聞いてもらえるか?」
「ええ。彼女も何かやって追われているの?」
「アイツはマヨネーズを作って集団食中毒をひき起こしたんだ。それでお尋ね者になっちまったらしい」

マヨネーズ……

確かにこの世界で見た事はないわね。
日本の鶏卵は殺菌がしっかりされているから大丈夫だが、この世界の卵はそうではないだろう。

「アイツのマヨネーズにかける情熱は異常だ。『マヨネーズが無ければ生きていけない』といつも言っているんだ」
「そう……」

悪い子ではなさそうだけど、この世界に馴染めないでいるのかしらね。

家の扉を開けて中に入っていくマサ。私達もそれに続く。

「ミックさん、野菜の収穫終わったぞ」

大きな声で言いながら奥へと入っていく。古い造りでマサが歩く度に床板が大きく軋んでいた。

「ああ、おかえりマサさん。丁度食事が出来た所だよ」

奥からは良い匂いと共に男性の声が聞こえてきた。
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