372 / 453
竜の国
追跡
しおりを挟む
手続きが終わりバルディが連れて来られる。手錠と足枷はされたままだ。
「突然暴れ出したら危険なのでこのままお引き渡しします」
「ありがとうございます」
バルディの繋がれた鎖を受け取ろうとしたら精霊達が引き取ってくれる。
「母上、俺が持ちます」
サヅチが鎖を受け取りククノチとシラヒは私を守る様にすぐ前に立っていた。
そこまで警戒しなくても良いと思うのだけど。
『俺が想像していた自由と違うのだが』
「当たり前です。あなたを信用している訳ではないのだから。まずは自身の働きで信用される様に努めなさい」
『分かりましたよ、ご主人様』
諦めた様子で返事をしてくるバルディ。
監獄から出てから気が付いたが、バルディは衛生的に良くない環境に居た様だ。
私は《洗浄》の魔法を掛けて彼の汚れを落とす。
『おお!スゲェ!ご主人様は魔法が得意なのか?』
「ええ。ある程度は使えます」
『俺達竜人族は魔法は使えないからな!こんな魔法が使えるなら一生水浴びをしなくても良さそうだ』
「毎回魔法で洗うわけないでしょう。それくらいは毎日自分でやりなさい」
調子が良いのだから。
「殿下のお陰で手掛かりを失わずに済みました」
「ハルさんの力になれて良かったよ」
「何かお礼をしたいと思います」
「それはハルさんに任せますよ。期待していますね」
そう言って爽やかに笑うエリオット。
次に会うまでに何か考えておこう。
監獄の前でエリオットとは別れて、私達は一度泉に戻る事にする。
泉の近くには誰もいない。芽依達はどこか別の場所で訓練をしているのだろう。
「さて、もう枷を外して良いわ」
「母上、この枷は外せる様に出来ていません」
サヅチがそう言うので見せてもらったが、錠が付く部分に鉄製の棒が差し込まれていて溶着している。
確かに外せる様には出来ていない。
『まさか一生このままって事か?』
「元々生かして帰すつもりはなかったみたいね。手足を切って再生させるのが早いかしら?」
冗談でそう言ったらバルディは口を大きく口を開けて首を横に振っている。
物質に栄養吸収は効くのか試してみようかしらね。
金属製の枷に光沢は無く表面はザラザラとしていた錆も見える。きっと使い回しているのだろう。
腕に着けられた枷に手を触れて《栄養吸収》を行うと、軋む様な嫌な音を立てて崩れて無くなった。
『一体何をしたんだ……?』
「養分を吸い取っただけよ。あなたも私から逃げようなんて思わない事ね」
『はい……!』
少し脅してみただけなのだが効果は抜群の様だ。
あまり気持ちの良いものではないけど。
「では早速、マサがいそうな場所を教えてもらえるかしら?」
バルディの情報を頼りにマサの捜索が始める。
まずは彼らが醤油を作っていた所へ移動。《遠隔視野》と《瞬間移動》を使って海を越えなければならないので泉の水を材料に《物質変換》で小舟を生成、全員で乗って連続で転移を繰り返して隣の大陸に上陸。船を指輪の中に格納して更に転移。三十分程度で醤油製造工場の跡地に到着した。
『……ありえないだろこんなもん』
呆然と立ち尽くすバルディ。私は特に気にせず無人の建物を観察する。
工場は崖を背負う形で建てられていて、後ろにある洞窟と繋がっている様だ。
発酵の工程を洞窟の中でやっていたのね。
「それで、マサが行きそうな所は?」
『あ、ああ……アイツなら多分ゾーヤの産地から離れる事はないだろう。取引をしていたゾーヤ農家の近くにいると思うぜ』
ゾーヤとは大豆の事らしい。
バルディに農家の位置を大まかに教えてもらい《瞬間移動》する。
『何回見ても驚くんだが、その力はなんだ?そんな便利な魔法はないだろ?』
「これは特殊な能力よ。今のところ私にしか使えない」
他の転生者が使える可能性はあるが、それを説明しても仕方がないだろう。
「突然暴れ出したら危険なのでこのままお引き渡しします」
「ありがとうございます」
バルディの繋がれた鎖を受け取ろうとしたら精霊達が引き取ってくれる。
「母上、俺が持ちます」
サヅチが鎖を受け取りククノチとシラヒは私を守る様にすぐ前に立っていた。
そこまで警戒しなくても良いと思うのだけど。
『俺が想像していた自由と違うのだが』
「当たり前です。あなたを信用している訳ではないのだから。まずは自身の働きで信用される様に努めなさい」
『分かりましたよ、ご主人様』
諦めた様子で返事をしてくるバルディ。
監獄から出てから気が付いたが、バルディは衛生的に良くない環境に居た様だ。
私は《洗浄》の魔法を掛けて彼の汚れを落とす。
『おお!スゲェ!ご主人様は魔法が得意なのか?』
「ええ。ある程度は使えます」
『俺達竜人族は魔法は使えないからな!こんな魔法が使えるなら一生水浴びをしなくても良さそうだ』
「毎回魔法で洗うわけないでしょう。それくらいは毎日自分でやりなさい」
調子が良いのだから。
「殿下のお陰で手掛かりを失わずに済みました」
「ハルさんの力になれて良かったよ」
「何かお礼をしたいと思います」
「それはハルさんに任せますよ。期待していますね」
そう言って爽やかに笑うエリオット。
次に会うまでに何か考えておこう。
監獄の前でエリオットとは別れて、私達は一度泉に戻る事にする。
泉の近くには誰もいない。芽依達はどこか別の場所で訓練をしているのだろう。
「さて、もう枷を外して良いわ」
「母上、この枷は外せる様に出来ていません」
サヅチがそう言うので見せてもらったが、錠が付く部分に鉄製の棒が差し込まれていて溶着している。
確かに外せる様には出来ていない。
『まさか一生このままって事か?』
「元々生かして帰すつもりはなかったみたいね。手足を切って再生させるのが早いかしら?」
冗談でそう言ったらバルディは口を大きく口を開けて首を横に振っている。
物質に栄養吸収は効くのか試してみようかしらね。
金属製の枷に光沢は無く表面はザラザラとしていた錆も見える。きっと使い回しているのだろう。
腕に着けられた枷に手を触れて《栄養吸収》を行うと、軋む様な嫌な音を立てて崩れて無くなった。
『一体何をしたんだ……?』
「養分を吸い取っただけよ。あなたも私から逃げようなんて思わない事ね」
『はい……!』
少し脅してみただけなのだが効果は抜群の様だ。
あまり気持ちの良いものではないけど。
「では早速、マサがいそうな場所を教えてもらえるかしら?」
バルディの情報を頼りにマサの捜索が始める。
まずは彼らが醤油を作っていた所へ移動。《遠隔視野》と《瞬間移動》を使って海を越えなければならないので泉の水を材料に《物質変換》で小舟を生成、全員で乗って連続で転移を繰り返して隣の大陸に上陸。船を指輪の中に格納して更に転移。三十分程度で醤油製造工場の跡地に到着した。
『……ありえないだろこんなもん』
呆然と立ち尽くすバルディ。私は特に気にせず無人の建物を観察する。
工場は崖を背負う形で建てられていて、後ろにある洞窟と繋がっている様だ。
発酵の工程を洞窟の中でやっていたのね。
「それで、マサが行きそうな所は?」
『あ、ああ……アイツなら多分ゾーヤの産地から離れる事はないだろう。取引をしていたゾーヤ農家の近くにいると思うぜ』
ゾーヤとは大豆の事らしい。
バルディに農家の位置を大まかに教えてもらい《瞬間移動》する。
『何回見ても驚くんだが、その力はなんだ?そんな便利な魔法はないだろ?』
「これは特殊な能力よ。今のところ私にしか使えない」
他の転生者が使える可能性はあるが、それを説明しても仕方がないだろう。
3
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~
骨折さん
ファンタジー
なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。
どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。
そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。
世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。
「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」
来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。
このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?
壁だぜ!? 無理なんじゃない!?
これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である!
※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。
※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します。
夕立悠理
恋愛
ベルナンデ・ユーズには前世の記憶がある。
そして、前世の記憶によると、この世界は乙女ゲームの世界で、ベルナンデは、この世界のヒロインだった。
蝶よ花よと愛され、有頂天になっていたベルナンデは、乙女ゲームのラストでメインヒーロ―である第一王子のラウルに告白されるも断った。
しかし、本来のゲームにはない、断るという選択をしたせいか、ベルナンデにだけアナウンスが聞こえる。
『愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します』
そのアナウンスを最後に、ベルナンデは意識を失う。
次に目を覚ました時、ベルナンデは、ラウルの妃になっていた。
なんだ、ラウルとのハッピーエンドに移行しただけか。
そうほっとしたのもつかの間。
あんなに愛されていたはずの、ラウルはおろか、攻略対象、使用人、家族、友人……みんなから嫌われておりー!?
※小説家になろう様が一番早い(予定)です
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる