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竜の国

大連合と勇者の話

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エルンストの謝罪から始まり講和は順調に話が纏まっていく。

マルダを攻撃したファディア軍は私達が殆ど殲滅してしまったから捕虜は少ない。軍船も同じく全て撃沈したのでライアッドから返還するものは少数の捕虜だけだ。

「ほぉ、海軍は全滅とな。降伏した者はそんなに少なかったのかの?」
「眷属達に降伏の合図が何かを教えていなかったもの。目の前にいる敵は全て殲滅してしまったわ」
「それならば仕方あるまいよ。そもそも攻め込んで来た者に情けを掛ける事自体おかしいのじゃ」

海竜には捕虜の概念は無いようだ。

マルダで捕虜になったファディア兵は奴隷として街の復興などの労働力に使われていたらしい。

マルダの街の者達はファディア兵に同情的で奴隷と言っても扱いはかなり良かったそうだ。
恐らくあの凄惨な戦場を目の当たりにしたからだろう。

ファディアからは賠償金の支払いと造船技術の供与などが決まり、ライアッド側は相互防衛の約束を交わす。

「ハル殿と良好な関係を築いている国で相互協力体制を敷こうと思うのだが如何だろうか?」

ラムドは私に聞いてくる。

「侵略行為に加担しないのであれば良いと思います。相互防衛や交易の活性化は大いに賛成です」
「それは良かった。ウルゼイドとディアブレルとは既にその様な関係にあるので、そこに貴国とソアニール、アドラスを加えてルドガイアに対抗する連合を作りたい」
「それは良い考えです。私と全面的に賛成します」

ラムドの提案にエルンストも賛同した。

「ハル殿が率いている森林の民達も連合に加わっていただきたい」
「それについては族長達に意見を聞かなければ返事は出来ません」

大きな戦争に巻き込まれる可能性があるのだから私一人で決めてはいけないだろう。なるべく早くに返事をすると答えておいた。

講和の条件提示は全て終わった所で私はエルンストに聞いておかなければならない事を思い出した。

「エルンスト王、聞きたい事が一つあります」
「何でしょう?」
「勇者召喚を行いましたね?今勇者はどこに?」

馬達の話を王に確認しておきたい。

「彼は随分前に出奔しました」
「何故?」
「理由は分かりませんが、『戦争に行きたくない』と護衛の騎士に話していたそうです」

どうやら好戦的な性格ではない様だ。

「彼の事を詳しく教えていただけますか?」
「はい」

ファディア国が呼び出した勇者はマサと名乗った竜人族ドラゴニュートという人に近い竜らしい。

もしかして種族を選べたのかしら。私は精霊で良かったけど。

竜人族ドラゴニュートとはどの様な種族なのですか?」
「竜人とは竜の様に力強く、人の様にものを考える存在です。プライドが高く、戦好きな印象ですね」

フランシスが説明してくれる。彼は竜人族ドラゴニュートとも会った事があるのだろう。

「マサの話に戻りますが、彼は竜人族ドラゴニュートらしくない竜人族ドラゴニュートでした」

エルンストが話を続ける。

戦が嫌いで何故か手先が器用で気配り上手。中に人間が入っているのではないかと疑う程だったそうだ。

元人間だもの。

「マサは食事に異様な程執着がありました」
「沢山食べるとか、肉を好むとかですか?」
「いえ、曰く『バランスの良い食事は心の健康に繋がる』だそうで、肉食の竜人族ドラゴニュートが果実や野菜を食べていました。それからショーユなる調味料が無い事に不満があったと聞きいています」

醤油。分かるわ。日本人には必要ね。

「何じゃその竜人族ドラゴニュートは……」

メリーゼハーヴは呆れていた。

現代の地球の日本人だったという事は分かった。
彼はファディアから出て行って醤油を探し求めて歩いているのだろうか。
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