369 / 453
竜の国
大連合と勇者の話
しおりを挟む
エルンストの謝罪から始まり講和は順調に話が纏まっていく。
マルダを攻撃したファディア軍は私達が殆ど殲滅してしまったから捕虜は少ない。軍船も同じく全て撃沈したのでライアッドから返還するものは少数の捕虜だけだ。
「ほぉ、海軍は全滅とな。降伏した者はそんなに少なかったのかの?」
「眷属達に降伏の合図が何かを教えていなかったもの。目の前にいる敵は全て殲滅してしまったわ」
「それならば仕方あるまいよ。そもそも攻め込んで来た者に情けを掛ける事自体おかしいのじゃ」
海竜には捕虜の概念は無いようだ。
マルダで捕虜になったファディア兵は奴隷として街の復興などの労働力に使われていたらしい。
マルダの街の者達はファディア兵に同情的で奴隷と言っても扱いはかなり良かったそうだ。
恐らくあの凄惨な戦場を目の当たりにしたからだろう。
ファディアからは賠償金の支払いと造船技術の供与などが決まり、ライアッド側は相互防衛の約束を交わす。
「ハル殿と良好な関係を築いている国で相互協力体制を敷こうと思うのだが如何だろうか?」
ラムドは私に聞いてくる。
「侵略行為に加担しないのであれば良いと思います。相互防衛や交易の活性化は大いに賛成です」
「それは良かった。ウルゼイドとディアブレルとは既にその様な関係にあるので、そこに貴国とソアニール、アドラスを加えてルドガイアに対抗する連合を作りたい」
「それは良い考えです。私と全面的に賛成します」
ラムドの提案にエルンストも賛同した。
「ハル殿が率いている森林の民達も連合に加わっていただきたい」
「それについては族長達に意見を聞かなければ返事は出来ません」
大きな戦争に巻き込まれる可能性があるのだから私一人で決めてはいけないだろう。なるべく早くに返事をすると答えておいた。
講和の条件提示は全て終わった所で私はエルンストに聞いておかなければならない事を思い出した。
「エルンスト王、聞きたい事が一つあります」
「何でしょう?」
「勇者召喚を行いましたね?今勇者はどこに?」
馬達の話を王に確認しておきたい。
「彼は随分前に出奔しました」
「何故?」
「理由は分かりませんが、『戦争に行きたくない』と護衛の騎士に話していたそうです」
どうやら好戦的な性格ではない様だ。
「彼の事を詳しく教えていただけますか?」
「はい」
ファディア国が呼び出した勇者はマサと名乗った竜人族という人に近い竜らしい。
もしかして種族を選べたのかしら。私は精霊で良かったけど。
「竜人族とはどの様な種族なのですか?」
「竜人とは竜の様に力強く、人の様にものを考える存在です。プライドが高く、戦好きな印象ですね」
フランシスが説明してくれる。彼は竜人族とも会った事があるのだろう。
「マサの話に戻りますが、彼は竜人族らしくない竜人族でした」
エルンストが話を続ける。
戦が嫌いで何故か手先が器用で気配り上手。中に人間が入っているのではないかと疑う程だったそうだ。
元人間だもの。
「マサは食事に異様な程執着がありました」
「沢山食べるとか、肉を好むとかですか?」
「いえ、曰く『バランスの良い食事は心の健康に繋がる』だそうで、肉食の竜人族が果実や野菜を食べていました。それからショーユなる調味料が無い事に不満があったと聞きいています」
醤油。分かるわ。日本人には必要ね。
「何じゃその竜人族は……」
メリーゼハーヴは呆れていた。
現代の地球の日本人だったという事は分かった。
彼はファディアから出て行って醤油を探し求めて歩いているのだろうか。
マルダを攻撃したファディア軍は私達が殆ど殲滅してしまったから捕虜は少ない。軍船も同じく全て撃沈したのでライアッドから返還するものは少数の捕虜だけだ。
「ほぉ、海軍は全滅とな。降伏した者はそんなに少なかったのかの?」
「眷属達に降伏の合図が何かを教えていなかったもの。目の前にいる敵は全て殲滅してしまったわ」
「それならば仕方あるまいよ。そもそも攻め込んで来た者に情けを掛ける事自体おかしいのじゃ」
海竜には捕虜の概念は無いようだ。
マルダで捕虜になったファディア兵は奴隷として街の復興などの労働力に使われていたらしい。
マルダの街の者達はファディア兵に同情的で奴隷と言っても扱いはかなり良かったそうだ。
恐らくあの凄惨な戦場を目の当たりにしたからだろう。
ファディアからは賠償金の支払いと造船技術の供与などが決まり、ライアッド側は相互防衛の約束を交わす。
「ハル殿と良好な関係を築いている国で相互協力体制を敷こうと思うのだが如何だろうか?」
ラムドは私に聞いてくる。
「侵略行為に加担しないのであれば良いと思います。相互防衛や交易の活性化は大いに賛成です」
「それは良かった。ウルゼイドとディアブレルとは既にその様な関係にあるので、そこに貴国とソアニール、アドラスを加えてルドガイアに対抗する連合を作りたい」
「それは良い考えです。私と全面的に賛成します」
ラムドの提案にエルンストも賛同した。
「ハル殿が率いている森林の民達も連合に加わっていただきたい」
「それについては族長達に意見を聞かなければ返事は出来ません」
大きな戦争に巻き込まれる可能性があるのだから私一人で決めてはいけないだろう。なるべく早くに返事をすると答えておいた。
講和の条件提示は全て終わった所で私はエルンストに聞いておかなければならない事を思い出した。
「エルンスト王、聞きたい事が一つあります」
「何でしょう?」
「勇者召喚を行いましたね?今勇者はどこに?」
馬達の話を王に確認しておきたい。
「彼は随分前に出奔しました」
「何故?」
「理由は分かりませんが、『戦争に行きたくない』と護衛の騎士に話していたそうです」
どうやら好戦的な性格ではない様だ。
「彼の事を詳しく教えていただけますか?」
「はい」
ファディア国が呼び出した勇者はマサと名乗った竜人族という人に近い竜らしい。
もしかして種族を選べたのかしら。私は精霊で良かったけど。
「竜人族とはどの様な種族なのですか?」
「竜人とは竜の様に力強く、人の様にものを考える存在です。プライドが高く、戦好きな印象ですね」
フランシスが説明してくれる。彼は竜人族とも会った事があるのだろう。
「マサの話に戻りますが、彼は竜人族らしくない竜人族でした」
エルンストが話を続ける。
戦が嫌いで何故か手先が器用で気配り上手。中に人間が入っているのではないかと疑う程だったそうだ。
元人間だもの。
「マサは食事に異様な程執着がありました」
「沢山食べるとか、肉を好むとかですか?」
「いえ、曰く『バランスの良い食事は心の健康に繋がる』だそうで、肉食の竜人族が果実や野菜を食べていました。それからショーユなる調味料が無い事に不満があったと聞きいています」
醤油。分かるわ。日本人には必要ね。
「何じゃその竜人族は……」
メリーゼハーヴは呆れていた。
現代の地球の日本人だったという事は分かった。
彼はファディアから出て行って醤油を探し求めて歩いているのだろうか。
3
お気に入りに追加
431
あなたにおすすめの小説
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
転生したら妖精や精霊を統べる「妖精霊神王」だったが、暇なので幼女になって旅に出ます‼︎
月華
ファンタジー
21歳、普通の会社員として過ごしていた「狐風 空音」(こふう そらね)は、暴走したトラックにひかれそうになっていた子供を庇い死亡した。 次に目を覚ますとものすごい美形の男性がこちらを見、微笑んでいた。「初めまして、空音。 私はギレンフイート。全ての神々の王だ。 君の魂はとても綺麗なんだ。もし…君が良いなら、私の娘として生まれ変わってくれないだろうか?」えっ⁉︎この人の娘⁉︎ なんか楽しそう。優しそうだし…よしっ!「神様が良いなら私を娘として生まれ変わらせてください。」「‼︎! ほんとっ!やった‼︎ ありがとう。これから宜しくね。私の愛娘、ソルフイー。」ソルフィーって何だろう? あれ? なんか眠たくなってきた…? 「安心してお眠り。次に目を覚ますと、もう私の娘だからね。」「は、い…」
数年後…無事に父様(神様)の娘として転生した私。今の名前は「ソルフイー」。家族や他の神々に溺愛されたりして、平和に暮らしてたんだけど…今悩みがあります!それは…暇!暇なの‼︎ 暇すぎて辛い…………………という訳で下界に降りて幼女になって冒険しに行きます‼︎!
これはチートな幼女になったソルフイーが下界で色々とやらかしながらも、周りに溺愛されたりして楽しく歩んでいく物語。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お久しぶりです。月華です。初めての長編となります!誤字があったり色々と間違えたりするかもしれませんがよろしくお願いします。 1週間ずつ更新していけたらなと思っています!
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。
亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません!
いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。
突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。
里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。
そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。
三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。
だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。
とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。
いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。
町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。
落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。
そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。
すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。
ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。
姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。
そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった……
これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。
※ざまぁまで時間かかります。
ファンタジー部門ランキング一位
HOTランキング 一位
総合ランキング一位
ありがとうございます!
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる