上 下
363 / 453
竜の国

説明と待機

しおりを挟む
次の日、朝食をとりながら昨日の出来事を全員に説明する。

私がファディアの船を捕らえて乗船していたムルスターデらと本国に行き海竜の長メリーゼハーヴと戦い勝った事。その後互いに協力していく事を約束した帰ってきた話をすると、全員食事をやめて驚いた顔でこちらを見ていた。

「私も行きたかった!」
「でも芽依は訓練があったでしょう?」
「『実戦に勝る訓練無しだ』ってロイドおじさんが言ってたもん」

そうは言っても流石にファディア国との戦いを芽依の訓練の場にはしたくない。
多くの者を殺める事になったかもしれないのだ。

「ここで颯太様やカクカミ様、メト様と戦闘訓練をする方が得られる経験は多いと推測します」

ライブラが助け舟を出してくれる。

「それはそうだけど……お母さん一人で危ない事をして心配なんだよ?」
「ええ、まさか海竜と戦う事になるとは思っていなかったわ。ごめんなさいね」

実際は面倒事は全て一度に片付けば良いと思っていたので、海竜と戦えたのは都合が良かったと思っているのだが、それは言わないでおいた。

「海竜王メリーゼハーヴに勝っちゃったんですか……?」
「ええ」

エレが一番驚いていた。

「ハル様が強いのはよく知っていますけど、まさか《逆巻く大洋》のメリーゼハーヴに……」

メリーゼハーヴには立派な二つ名が付いているのね。

「竜の姿ではなかったけど、あちらは私の力を認めて降伏してくれたわ」
「海竜が降伏する事なんてほぼ無いと言われている程プライドが高くて凶暴だって聞いています」

エレはそう言うけどルドガイアの魔竜王には従っていたのでは?

「私達が海竜全てと戦うならカクカミ様達を総動員して勝てるかどうかと思っていたたんですが」
「そう?私の見立てではトコヤミだけで壊滅出来ると思うわよ」

エレは海竜の事を過大評価している様ね。

「母さんは今日もファディア国に行くのかい?」
「ええ。メリーゼハーヴ達がこれ以上他国に侵攻しない様に幾つかの取り決めを作りに行くわ」

颯太に聞かれて今日の予定を説明する。

しっかりと釘を指しておかなければ海竜達はルドガイアと戦を始めかねない。

「私も行くよ」
「芽依はみんなと訓練をしていて」
「お母さんが心配なの!」
「私は大丈夫よ。今日はカクカミとヤトを連れて行くわ」

昨日のあれで彼らが大人しくなっていれば良いが、あの場にいなかった別の海竜が私の事を認めない可能性もある。その時はカクカミとヤトの力を借りる事にする。カナエは海竜と相性が悪い様なので今回は連れて行かない事にした。

「……分かった。気を付けて行ってきてね」
「ええ。落ち着いたらみんなでファディア国に遊びに行きましょうね」

芽依は渋々といった様子で引き下がった。

この子達には大会に集中してもらいたい。海竜とファディア国の事は今日中に何とかしてしまおう。

食事を終えて颯太と後片付けを済ませると、昼まではまだかなり時間があったがファディア国へと転移する。

「カクカミ、ヤト」
『はい』『おはようございますハル様』

カクカミとヤトが海岸に現れる。

「今日は海竜達との話し合いに同席してもらいます。彼らは統率がとれておらず、長のメリーゼハーヴの言う事を聞かずに暴発する者がいるの」
『我らはハル様の警護と異を唱える輩に思い知らせてやれば良いのですね?』
「ええ。殺さない程度でお願いね」

カクカミはすぐに私の考えを察してくれた。

『海竜とやらがどの程度の強さか楽しみですね』

ヤトは珍しく好戦的な事を言っていた。

話し合いにはまだ暫く時間がある。何をしようかと考えていたら遠くに見える島から巨大な竜が飛んできた。

『貴様ら、一体何処から現れた?』

その竜は濃い緑色をした光沢のある鱗を持っており、大きさはトコヤミを少し小さくしたくらいの竜だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します。

夕立悠理
恋愛
ベルナンデ・ユーズには前世の記憶がある。 そして、前世の記憶によると、この世界は乙女ゲームの世界で、ベルナンデは、この世界のヒロインだった。 蝶よ花よと愛され、有頂天になっていたベルナンデは、乙女ゲームのラストでメインヒーロ―である第一王子のラウルに告白されるも断った。 しかし、本来のゲームにはない、断るという選択をしたせいか、ベルナンデにだけアナウンスが聞こえる。 『愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します』 そのアナウンスを最後に、ベルナンデは意識を失う。 次に目を覚ました時、ベルナンデは、ラウルの妃になっていた。 なんだ、ラウルとのハッピーエンドに移行しただけか。 そうほっとしたのもつかの間。 あんなに愛されていたはずの、ラウルはおろか、攻略対象、使用人、家族、友人……みんなから嫌われておりー!? ※小説家になろう様が一番早い(予定)です

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた 少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語

処理中です...