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竜の国
一族
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「おお、そう言ってくれるとありがたい」
「あなたのやり方は気に入らないけど一族を守ろうとしている事は分かったわ」
「妾の首を子供達に見せると良い。お主に従うはずじゃ」
命を差し出す覚悟は本当の様だ。
「そんな悪趣味な真似はしません。あなたが直接子供達に話しなさい」
そもそも長を殺した者に従うとは思えない。それこそ海竜全てと戦う事になりそうではないか。
「この国の王は無事なの?」
「ファディアの国王にはここから離れてもらっただけじゃ。本物の泉の精霊と戦うなら城が無くなる程の激しい戦いになるやもと思うてのう」
無事ならば良い。メリーゼハーヴとは別に人間の国とも交渉しなければならない。
「竜の姿で戦わなかったのは何故?」
「見くびっておったのではないぞ。妾が本当の姿で戦うとなると戦場は海になる。そうなると規模も大きくなり、近くにおるルドガイアの者に気付かれてしまうかも知れん」
城が壊れることで気付かれはしないのだろうか?
「あなた達はファディア軍を使って他の国にも攻め入っているの?」
「いいや、ライアッドへの攻撃に失敗してからは兵力の喪失を理由に他国への侵略はしておらぬ。ルドガイアも無茶な事は言ってきておらぬよ」
ある程度信頼されているという事だろうか。或いは大きな戦力の為、あまり口出しが出来ないのか。
どちらにせよ他国へ侵攻していないのであればこのまま自国の防備を固めていてもらいたい。
「まずはあなたの家族に会いましょう。海竜全員に共闘する事を確認させてもらいたいわ」
「信用ないのう……」
「当たり前です」
海竜の感性がおかしいのかメリーゼハーヴがおかしいのか、何にせよ彼女を完全に信用したわけではない。
城から出て海へ行こう。
「待っておれ。馬車を用意させる」
「必要ないわ。海に行くなら一瞬だもの」
私は皆を連れて《瞬間移動》を発動させて船を上陸させた海岸へ転移する。
「なんと……その様な力までもっておるのか」
周囲を見渡しながら驚くメリーゼハーヴ。
「あなたの家族はどこに居るの?」
「今呼ぼう」
メリーゼハーヴは大きく息を吸い込むと甲高い声を発する。それはとても大きな声でワダツミ、シナツ、カナエは耳を押さえていた。
暫くすると夜の海が大きくうねり始め、遠くから蛇の様な姿の竜達が海岸に向かってやって来た。トコヤミと同じ様な頭を持ち、体はヤトの様な形状をしていてかなり大きな個体だ。
とは言ってもトコヤミよりも頭は小さいしヤト程太さも長さもあるわけではない。
あの子達が規格外なのだろうが、彼らを知っている分、海竜を見ても驚く事は無かった。
現れたのは一体ではなく、暗い海から幾つもの頭が出ているのが分かる。
『お呼びですか長よ』
一番前にいた大きな個体が竜の言葉でメリーゼハーヴに話掛ける。
「紹介しよう。泉の精霊のハル殿じゃ。先程妾と精霊殿の間で互いに手を組む約束をした」
『おお!という事はいよいよ魔竜王とルドガイアを攻めるのですな?』
それを聞いた他の海竜達は喜びの咆哮をあげていた。どうやら彼らは血の気が多いらしい。
「待て。今すぐ攻める訳ではない」
「そうよ。私は手を組むと言ったけどすぐに戦うなんて言ってないわ」
『何だと?たかが小さき者の分際で、我らの話に割り込んでくるでないわ!』
……プライドが高いのかしらね。
「彼はあなたの子供?」
「そうじゃ……すまぬ精霊殿」
『長が謝る事はありません!我ら海竜は海の王者。たかが泉の精霊なぞに頭を下げるなど……』
「たかがですって?ハル様!コイツら全員三枚に下ろして干物にしてやりましょう!」
カナエが怒って私に言ってくる。
『何だその塵の様な者は!生き物だったのか?あまりに小さいのでゴミかと思ったわ!』
……これでは話し合いにはなりそうにない。力を見せる必要があるか。
「あなたのやり方は気に入らないけど一族を守ろうとしている事は分かったわ」
「妾の首を子供達に見せると良い。お主に従うはずじゃ」
命を差し出す覚悟は本当の様だ。
「そんな悪趣味な真似はしません。あなたが直接子供達に話しなさい」
そもそも長を殺した者に従うとは思えない。それこそ海竜全てと戦う事になりそうではないか。
「この国の王は無事なの?」
「ファディアの国王にはここから離れてもらっただけじゃ。本物の泉の精霊と戦うなら城が無くなる程の激しい戦いになるやもと思うてのう」
無事ならば良い。メリーゼハーヴとは別に人間の国とも交渉しなければならない。
「竜の姿で戦わなかったのは何故?」
「見くびっておったのではないぞ。妾が本当の姿で戦うとなると戦場は海になる。そうなると規模も大きくなり、近くにおるルドガイアの者に気付かれてしまうかも知れん」
城が壊れることで気付かれはしないのだろうか?
「あなた達はファディア軍を使って他の国にも攻め入っているの?」
「いいや、ライアッドへの攻撃に失敗してからは兵力の喪失を理由に他国への侵略はしておらぬ。ルドガイアも無茶な事は言ってきておらぬよ」
ある程度信頼されているという事だろうか。或いは大きな戦力の為、あまり口出しが出来ないのか。
どちらにせよ他国へ侵攻していないのであればこのまま自国の防備を固めていてもらいたい。
「まずはあなたの家族に会いましょう。海竜全員に共闘する事を確認させてもらいたいわ」
「信用ないのう……」
「当たり前です」
海竜の感性がおかしいのかメリーゼハーヴがおかしいのか、何にせよ彼女を完全に信用したわけではない。
城から出て海へ行こう。
「待っておれ。馬車を用意させる」
「必要ないわ。海に行くなら一瞬だもの」
私は皆を連れて《瞬間移動》を発動させて船を上陸させた海岸へ転移する。
「なんと……その様な力までもっておるのか」
周囲を見渡しながら驚くメリーゼハーヴ。
「あなたの家族はどこに居るの?」
「今呼ぼう」
メリーゼハーヴは大きく息を吸い込むと甲高い声を発する。それはとても大きな声でワダツミ、シナツ、カナエは耳を押さえていた。
暫くすると夜の海が大きくうねり始め、遠くから蛇の様な姿の竜達が海岸に向かってやって来た。トコヤミと同じ様な頭を持ち、体はヤトの様な形状をしていてかなり大きな個体だ。
とは言ってもトコヤミよりも頭は小さいしヤト程太さも長さもあるわけではない。
あの子達が規格外なのだろうが、彼らを知っている分、海竜を見ても驚く事は無かった。
現れたのは一体ではなく、暗い海から幾つもの頭が出ているのが分かる。
『お呼びですか長よ』
一番前にいた大きな個体が竜の言葉でメリーゼハーヴに話掛ける。
「紹介しよう。泉の精霊のハル殿じゃ。先程妾と精霊殿の間で互いに手を組む約束をした」
『おお!という事はいよいよ魔竜王とルドガイアを攻めるのですな?』
それを聞いた他の海竜達は喜びの咆哮をあげていた。どうやら彼らは血の気が多いらしい。
「待て。今すぐ攻める訳ではない」
「そうよ。私は手を組むと言ったけどすぐに戦うなんて言ってないわ」
『何だと?たかが小さき者の分際で、我らの話に割り込んでくるでないわ!』
……プライドが高いのかしらね。
「彼はあなたの子供?」
「そうじゃ……すまぬ精霊殿」
『長が謝る事はありません!我ら海竜は海の王者。たかが泉の精霊なぞに頭を下げるなど……』
「たかがですって?ハル様!コイツら全員三枚に下ろして干物にしてやりましょう!」
カナエが怒って私に言ってくる。
『何だその塵の様な者は!生き物だったのか?あまりに小さいのでゴミかと思ったわ!』
……これでは話し合いにはなりそうにない。力を見せる必要があるか。
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