356 / 453
竜の国
臨検
しおりを挟む
本人達に何をしているのかを聞くのが一番早い。
『ハル様、お供いたします』
「いいえ、ギルは村を守っていて」
『分かりました!』
さて、誰といこうか?
海の上なので水の精霊のワダツミと風の精霊のシナツを連れて行こう。あとはカナエとヤトにしようか。
『俺も一緒に行きたいです!』
「マカミも今回はやめておきましょう。船に直接乗り込むつもりだから。ヤトの代わりに北側の警戒をお願いするわ」
『はい!』
マカミをエルフ達の村へ向かせて、私は南の入り江付近に転移する。
「ワダツミ、シナツ」
「「はい」」
「カナエ、ヤト」
『はーい!』『お呼びですか?』
「今から入り江に停泊している船の持ち主に何用か聞きに行きます。戦闘になる事が予想されるから手伝って」
「分かりました」
ワダツミ、シナツ、カナエは私と共に行動。ヤトは海中に潜んでもらい、機を見て船を捕縛してもらう。
ヤトが地中に潜っていくのを確認してから私達も船に近付く。
《遠隔視野》で確認すると、船の近くにはローブ姿の者と剣や槍を持った兵士達がいるのを確認出来る。
「止まれ!」
私達を見たローブ姿の男が声を上げる。兵士達もこちらに走ってくる。
「私は泉の精霊のハルです。あなた達は何用でここにいるのですか?」
「泉の精霊……我々は船が故障してこの入り江に停泊しているだけです」
ローブ姿の男はそう言ってくるが嘘だ。船体に損傷は無く、修理をしている様子もなかった。
「あなた達はリザードマン達の領域付近で何かをしていましたね?」
「そ、それは……安全確保の為の偵察です」
「魔法を使っていましたね?」
「それは……」
言葉に詰まる男。その後方にローブ姿の者達が集まってきて何かを始めている。
男のローブには見覚えのある紋章が刺繍されていた。
「あなた達、ファディアの『ムストラーデ』よね?」
「くっ……!」
男は裾から短剣を抜き放つと私に向かって来る。よく訓練された鋭い動きだ。
だが芽依はおろかセロにも遠く及ばない。
短剣を落として《栄養吸収》で身動きを取れなくしようと思っていたら、カナエが風の魔法で男の右腕を肩から切り飛ばしていた。
「うぐっ……!今だ、やれ!」
男は後ろのローブの者達に命じる。
しかしそれも許さない。シナツが風の塊をぶつけて後方で何やらやっていた者達を纏めて吹き飛ばした。倒れている魔術師達は六人。体の一部がおかしな方向に曲がっているがまだ生きている者もいる様だ。
兵士達も剣や槍を構えて突撃してくるが、ワダツミが水弾を高速で撃ち出して眉間を貫く。向かって来た兵士五人は即死だった。
「化け物め……」
「嘘を吐き、そちらから襲いかかって来たのです。覚悟は出来ているのでしょう?」
右肩を押さえながら呻く男。
「言いなさい。ここで何をしていたの?」
「……殺せ」
喋る気は無さそうね。
他の者に聞くのも良いが、同じ様なやり取りをするだけになりそうだ。
私は彼に泉の水を振り掛ける。腕が少しずつ再生していく。
「な、何を……?」
「あなたを殺す事は簡単よ。だから取り敢えず直ぐに死なない様にしただけ。後ろを見てみなさい」
恐る恐る振り返った男は、自分達の船に巨大な蛇が巻き付いているのを見て言葉を失っていた。
船に残っていた水夫や兵士達は船体に絡み付いてメキメキと音を立てて締め上げているヤトに対して攻撃を加えているが全くダメージを与えられていない。
「な、なんだあれは……」
「私の眷属よ。あの船はじきに沈むでしょう」
「……私が話せしたらあそこにいる者達を助けてもらえないだろうか?」
「交渉が出来る立場だと思っているの?私はあなた達を外敵と認識しているの。私の眷属達に危害を加える者には容赦はしない」
男は顔面を蒼白にして震え出す。
「ヤト、その船を沈めるのはお待ちなさい」
『はい』
「何をしに来たか話しますか?」
返答次第では皆殺しになる。それを男は良く分かっていた。だから言えないでいるのだろう。
『ハル様、お供いたします』
「いいえ、ギルは村を守っていて」
『分かりました!』
さて、誰といこうか?
海の上なので水の精霊のワダツミと風の精霊のシナツを連れて行こう。あとはカナエとヤトにしようか。
『俺も一緒に行きたいです!』
「マカミも今回はやめておきましょう。船に直接乗り込むつもりだから。ヤトの代わりに北側の警戒をお願いするわ」
『はい!』
マカミをエルフ達の村へ向かせて、私は南の入り江付近に転移する。
「ワダツミ、シナツ」
「「はい」」
「カナエ、ヤト」
『はーい!』『お呼びですか?』
「今から入り江に停泊している船の持ち主に何用か聞きに行きます。戦闘になる事が予想されるから手伝って」
「分かりました」
ワダツミ、シナツ、カナエは私と共に行動。ヤトは海中に潜んでもらい、機を見て船を捕縛してもらう。
ヤトが地中に潜っていくのを確認してから私達も船に近付く。
《遠隔視野》で確認すると、船の近くにはローブ姿の者と剣や槍を持った兵士達がいるのを確認出来る。
「止まれ!」
私達を見たローブ姿の男が声を上げる。兵士達もこちらに走ってくる。
「私は泉の精霊のハルです。あなた達は何用でここにいるのですか?」
「泉の精霊……我々は船が故障してこの入り江に停泊しているだけです」
ローブ姿の男はそう言ってくるが嘘だ。船体に損傷は無く、修理をしている様子もなかった。
「あなた達はリザードマン達の領域付近で何かをしていましたね?」
「そ、それは……安全確保の為の偵察です」
「魔法を使っていましたね?」
「それは……」
言葉に詰まる男。その後方にローブ姿の者達が集まってきて何かを始めている。
男のローブには見覚えのある紋章が刺繍されていた。
「あなた達、ファディアの『ムストラーデ』よね?」
「くっ……!」
男は裾から短剣を抜き放つと私に向かって来る。よく訓練された鋭い動きだ。
だが芽依はおろかセロにも遠く及ばない。
短剣を落として《栄養吸収》で身動きを取れなくしようと思っていたら、カナエが風の魔法で男の右腕を肩から切り飛ばしていた。
「うぐっ……!今だ、やれ!」
男は後ろのローブの者達に命じる。
しかしそれも許さない。シナツが風の塊をぶつけて後方で何やらやっていた者達を纏めて吹き飛ばした。倒れている魔術師達は六人。体の一部がおかしな方向に曲がっているがまだ生きている者もいる様だ。
兵士達も剣や槍を構えて突撃してくるが、ワダツミが水弾を高速で撃ち出して眉間を貫く。向かって来た兵士五人は即死だった。
「化け物め……」
「嘘を吐き、そちらから襲いかかって来たのです。覚悟は出来ているのでしょう?」
右肩を押さえながら呻く男。
「言いなさい。ここで何をしていたの?」
「……殺せ」
喋る気は無さそうね。
他の者に聞くのも良いが、同じ様なやり取りをするだけになりそうだ。
私は彼に泉の水を振り掛ける。腕が少しずつ再生していく。
「な、何を……?」
「あなたを殺す事は簡単よ。だから取り敢えず直ぐに死なない様にしただけ。後ろを見てみなさい」
恐る恐る振り返った男は、自分達の船に巨大な蛇が巻き付いているのを見て言葉を失っていた。
船に残っていた水夫や兵士達は船体に絡み付いてメキメキと音を立てて締め上げているヤトに対して攻撃を加えているが全くダメージを与えられていない。
「な、なんだあれは……」
「私の眷属よ。あの船はじきに沈むでしょう」
「……私が話せしたらあそこにいる者達を助けてもらえないだろうか?」
「交渉が出来る立場だと思っているの?私はあなた達を外敵と認識しているの。私の眷属達に危害を加える者には容赦はしない」
男は顔面を蒼白にして震え出す。
「ヤト、その船を沈めるのはお待ちなさい」
『はい』
「何をしに来たか話しますか?」
返答次第では皆殺しになる。それを男は良く分かっていた。だから言えないでいるのだろう。
3
お気に入りに追加
431
あなたにおすすめの小説
義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました
やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>
フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。
アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。
貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。
そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……
蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。
もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。
「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」
「…………はぁ?」
断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。
義妹はなぜ消えたのか……?
ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?
義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?
そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?
そんなお話となる予定です。
残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……
これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……
多分、期待に添えれる……かも?
※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。
なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。
そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。
そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。
クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい
高木コン
ファンタジー
第一巻が発売されました!
レンタル実装されました。
初めて読もうとしてくれている方、読み返そうとしてくれている方、大変お待たせ致しました。
書籍化にあたり、内容に一部齟齬が生じておりますことをご了承ください。
改題で〝で〟が取れたとお知らせしましたが、さらに改題となりました。
〝で〟は抜かれたまま、〝お詫びチートで〟と〝転生幼女は〟が入れ替わっております。
初期:【お詫びチートで転生幼女は異世界でごーいんぐまいうぇい】
↓
旧:【お詫びチートで転生幼女は異世界ごーいんぐまいうぇい】
↓
最新:【転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい】
読者の皆様、混乱させてしまい大変申し訳ありません。
✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -
――神様達の見栄の張り合いに巻き込まれて異世界へ
どっちが仕事出来るとかどうでもいい!
お詫びにいっぱいチートを貰ってオタクの夢溢れる異世界で楽しむことに。
グータラ三十路干物女から幼女へ転生。
だが目覚めた時状況がおかしい!。
神に会ったなんて記憶はないし、場所は……「森!?」
記憶を取り戻しチート使いつつ権力は拒否!(希望)
過保護な周りに見守られ、お世話されたりしてあげたり……
自ら面倒事に突っ込んでいったり、巻き込まれたり、流されたりといろいろやらかしつつも我が道をひた走る!
異世界で好きに生きていいと神様達から言質ももらい、冒険者を楽しみながらごーいんぐまいうぇい!
____________________
1/6 hotに取り上げて頂きました!
ありがとうございます!
*お知らせは近況ボードにて。
*第一部完結済み。
異世界あるあるのよく有るチート物です。
携帯で書いていて、作者も携帯でヨコ読みで見ているため、改行など読みやすくするために頻繁に使っています。
逆に読みにくかったらごめんなさい。
ストーリーはゆっくりめです。
温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
気づいたら異世界でスライムに!? その上ノーチートって神様ヒドくない?【転生したらまさかのスライム《改題》】
西園寺卓也
ファンタジー
北千住のラノベ大魔王を自称する主人公、矢部裕樹《やべひろき》、28歳。
社畜のように会社で働き、はや四年。気が付いたら異世界でスライムに転生?してました!
大好きなラノベの世界ではスライムは大魔王になったりかわいこちゃんに抱かれてたりダンジョンのボスモンスターになったりとスーパーチートの代名詞!と喜んだのもつかの間、どうやら彼にはまったくチートスキルがなかったらしい。
果たして彼は異世界で生き残る事ができるのか? はたまたチートなスキルを手に入れて幸せなスラ生を手に入れられるのか? 読みまくった大人気ラノベの物語は知識として役に立つのか!?
気づいたら異世界でスライムという苦境の中、矢部裕樹のスラ生が今始まる!
※本作品は「小説家になろう」様にて「転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない?」を改題した上で初期設定やキャラのセリフなどの見直しを行った作品となります。ストーリー内容はほぼ変更のないマルチ投稿の形となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる