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竜の国

臨検

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本人達に何をしているのかを聞くのが一番早い。

『ハル様、お供いたします』
「いいえ、ギルは村を守っていて」
『分かりました!』

さて、誰といこうか?
海の上なので水の精霊のワダツミと風の精霊のシナツを連れて行こう。あとはカナエとヤトにしようか。

『俺も一緒に行きたいです!』
「マカミも今回はやめておきましょう。船に直接乗り込むつもりだから。ヤトの代わりに北側の警戒をお願いするわ」
『はい!』

マカミをエルフ達の村へ向かせて、私は南の入り江付近に転移する。

「ワダツミ、シナツ」
「「はい」」
「カナエ、ヤト」
『はーい!』『お呼びですか?』
「今から入り江に停泊している船の持ち主に何用か聞きに行きます。戦闘になる事が予想されるから手伝って」
「分かりました」

ワダツミ、シナツ、カナエは私と共に行動。ヤトは海中に潜んでもらい、機を見て船を捕縛してもらう。

ヤトが地中に潜っていくのを確認してから私達も船に近付く。

《遠隔視野》で確認すると、船の近くにはローブ姿の者と剣や槍を持った兵士達がいるのを確認出来る。

「止まれ!」

私達を見たローブ姿の男が声を上げる。兵士達もこちらに走ってくる。

「私は泉の精霊のハルです。あなた達は何用でここにいるのですか?」
「泉の精霊……我々は船が故障してこの入り江に停泊しているだけです」

ローブ姿の男はそう言ってくるが嘘だ。船体に損傷は無く、修理をしている様子もなかった。

「あなた達はリザードマン達の領域付近で何かをしていましたね?」
「そ、それは……安全確保の為の偵察です」
「魔法を使っていましたね?」
「それは……」

言葉に詰まる男。その後方にローブ姿の者達が集まってきて何かを始めている。

男のローブには見覚えのある紋章が刺繍されていた。

「あなた達、ファディアの『ムストラーデ』よね?」
「くっ……!」

男は裾から短剣を抜き放つと私に向かって来る。よく訓練された鋭い動きだ。
だが芽依はおろかセロにも遠く及ばない。

短剣を落として《栄養吸収》で身動きを取れなくしようと思っていたら、カナエが風の魔法で男の右腕を肩から切り飛ばしていた。

「うぐっ……!今だ、やれ!」

男は後ろのローブの者達に命じる。
しかしそれも許さない。シナツが風の塊をぶつけて後方で何やらやっていた者達を纏めて吹き飛ばした。倒れている魔術師達は六人。体の一部がおかしな方向に曲がっているがまだ生きている者もいる様だ。

兵士達も剣や槍を構えて突撃してくるが、ワダツミが水弾を高速で撃ち出して眉間を貫く。向かって来た兵士五人は即死だった。

「化け物め……」
「嘘を吐き、そちらから襲いかかって来たのです。覚悟は出来ているのでしょう?」

右肩を押さえながら呻く男。

「言いなさい。ここで何をしていたの?」
「……殺せ」

喋る気は無さそうね。

他の者に聞くのも良いが、同じ様なやり取りをするだけになりそうだ。

私は彼に泉の水を振り掛ける。腕が少しずつ再生していく。

「な、何を……?」
「あなたを殺す事は簡単よ。だから取り敢えず直ぐに死なない様にしただけ。後ろを見てみなさい」

恐る恐る振り返った男は、自分達の船に巨大な蛇が巻き付いているのを見て言葉を失っていた。
船に残っていた水夫や兵士達は船体に絡み付いてメキメキと音を立てて締め上げているヤトに対して攻撃を加えているが全くダメージを与えられていない。

「な、なんだあれは……」
「私の眷属よ。あの船はじきに沈むでしょう」
「……私が話せしたらあそこにいる者達を助けてもらえないだろうか?」
「交渉が出来る立場だと思っているの?私はあなた達を外敵と認識しているの。私の眷属達に危害を加える者には容赦はしない」

男は顔面を蒼白にして震え出す。

「ヤト、その船を沈めるのはお待ちなさい」
『はい』
「何をしに来たか話しますか?」

返答次第では皆殺しになる。それを男は良く分かっていた。だから言えないでいるのだろう。
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