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勇者
神の敵
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コースケは諦めたのだろうか?
「さあどうする?」
カグツチはいつでもコースケを焼き尽くせると言わんばかりに全身に炎を纏わせたまま詰め寄る。
「負けたよ……降参します」
そう言ってゆっくりと立ち上がるコースケ。俯いたまま両手を力無く挙げる。
「なんでこんなに力の差があるんだよ……同じ転生者なのにおかしいだろ……」
「あなたはここに転生して何がしたかったの?」
「僕は……自由に生きたかった。社会に抑圧されて、誰かの敷いたレールに乗って、誰からも相手にされず、利用された……一度くらい自由に生きたっていいだろう!」
彼は前世で鬱屈した日々を送って来たのだろう。だがそれはそれ。
「あなたの自由は他の誰かの自由を奪う事なの?そんなものは自由ではないわ。ただの我儘よ」
「前世だってそうだ!我儘に生きた奴が徳をしてきた!だから今度は僕が我儘に自由に生きて何が悪い!」
「あなたのやっている事は人の道に反しているわ──「それがどうした!僕は神からここで生きる事を許されたんだ!」
私の言葉を遮って強い口調で言い放つコースケ。私は彼が話し終えるのを待つ。
「僕がここにいるのは神が好きに生きていいと言っているからだ!だから僕には自由に生きる権利がある」
「そうね。あなたには自由に生きる権利がある。人の道を外れて生きるのも自由だわ」
穏やかに答える私の様子を見て意外だったのか、一瞬言葉に詰まるコースケ。
「でもね、それは相手にも言える事なのよ。ここはあなただけの世界ではない。人の自由を踏み躙る事を無条件で許された人なんていないのよ」
「それは……」
「あなたは私とその大切なものを害そうとした。そうなった場合、どうなると思う?」
息を呑んで私が言葉を続けるのを待つコースケ。
「戦う事になるわ。それは分かっていた事でしょう?」
「でも……こんなに強さが違うのは不公平だ!」
「あなた、この世界に来て何年になるの?」
「十年くらいだよ」
「そう……」
私の生きてきた時間を言って諭したい訳ではない。彼が生きてきた十年間でどれだけの人が自由を踏み躙られてきたのかを考えていた。
「あなたは何年なんだよ?」
「……説明しにくいわ」
行った所で彼の反応は大体想像できる。
「いいから教えろよ」
「数十万…いえ数百万年かしら。私がこの世界に来たのは全ての生命が死滅して、生物が生存出来ない程に汚染された大地だったわ」
「なんだよそれ……じゃあこの世界はあなたが一人で直して来たっていうのかよ?それこそ身勝手じゃないか!」
……まあ大体そう言うだろうとは思ったわ。
それから私はこの世界を一人で直してきたなどとは思っていない。
アルシファーナが私をあの時代に転生させてくれ、シグルーンと出会って様々な事を教えてもらったから頑張れたのだと思う。
コースケは私が自由にこの世界を創ってきたのだと誤解しているのかも知れないが、今更それを正すつもりもない。
「僕はあなたを認めない!神に殺害対象に指定されているあなたがこの世界に居て良い訳がないんだ!」
コースケはゆっくりと私の前に歩み寄ってくる。ワダツミとミカヅチが間に立って護ろうとしてくれるが、それを制して私も前に出る。
コースケが目の前まで来た時、彼の左手中指に嵌められた指輪が光り短剣が現れる。鞘を抜き放ち私に向かって刃を突き立てんと飛びついてきた。
「お母様!」「母上!」
後ろから二人の精霊の慌てる声が聞こえる。
大丈夫よ。これくらいなら一人で対処できる。
短剣を身を屈めて交わしてコースケの懐に入ると、右肩から彼の鳩尾に突き込むように飛び出す。
「ぐぇェッ!?」
そのまま《栄養吸収》を発動してコースケの生命力を全て奪い取る。
「あなたは私の敵だから容赦はしないわ。謝りもしない」
コースケはそのまま塵となって消えた。
「さあどうする?」
カグツチはいつでもコースケを焼き尽くせると言わんばかりに全身に炎を纏わせたまま詰め寄る。
「負けたよ……降参します」
そう言ってゆっくりと立ち上がるコースケ。俯いたまま両手を力無く挙げる。
「なんでこんなに力の差があるんだよ……同じ転生者なのにおかしいだろ……」
「あなたはここに転生して何がしたかったの?」
「僕は……自由に生きたかった。社会に抑圧されて、誰かの敷いたレールに乗って、誰からも相手にされず、利用された……一度くらい自由に生きたっていいだろう!」
彼は前世で鬱屈した日々を送って来たのだろう。だがそれはそれ。
「あなたの自由は他の誰かの自由を奪う事なの?そんなものは自由ではないわ。ただの我儘よ」
「前世だってそうだ!我儘に生きた奴が徳をしてきた!だから今度は僕が我儘に自由に生きて何が悪い!」
「あなたのやっている事は人の道に反しているわ──「それがどうした!僕は神からここで生きる事を許されたんだ!」
私の言葉を遮って強い口調で言い放つコースケ。私は彼が話し終えるのを待つ。
「僕がここにいるのは神が好きに生きていいと言っているからだ!だから僕には自由に生きる権利がある」
「そうね。あなたには自由に生きる権利がある。人の道を外れて生きるのも自由だわ」
穏やかに答える私の様子を見て意外だったのか、一瞬言葉に詰まるコースケ。
「でもね、それは相手にも言える事なのよ。ここはあなただけの世界ではない。人の自由を踏み躙る事を無条件で許された人なんていないのよ」
「それは……」
「あなたは私とその大切なものを害そうとした。そうなった場合、どうなると思う?」
息を呑んで私が言葉を続けるのを待つコースケ。
「戦う事になるわ。それは分かっていた事でしょう?」
「でも……こんなに強さが違うのは不公平だ!」
「あなた、この世界に来て何年になるの?」
「十年くらいだよ」
「そう……」
私の生きてきた時間を言って諭したい訳ではない。彼が生きてきた十年間でどれだけの人が自由を踏み躙られてきたのかを考えていた。
「あなたは何年なんだよ?」
「……説明しにくいわ」
行った所で彼の反応は大体想像できる。
「いいから教えろよ」
「数十万…いえ数百万年かしら。私がこの世界に来たのは全ての生命が死滅して、生物が生存出来ない程に汚染された大地だったわ」
「なんだよそれ……じゃあこの世界はあなたが一人で直して来たっていうのかよ?それこそ身勝手じゃないか!」
……まあ大体そう言うだろうとは思ったわ。
それから私はこの世界を一人で直してきたなどとは思っていない。
アルシファーナが私をあの時代に転生させてくれ、シグルーンと出会って様々な事を教えてもらったから頑張れたのだと思う。
コースケは私が自由にこの世界を創ってきたのだと誤解しているのかも知れないが、今更それを正すつもりもない。
「僕はあなたを認めない!神に殺害対象に指定されているあなたがこの世界に居て良い訳がないんだ!」
コースケはゆっくりと私の前に歩み寄ってくる。ワダツミとミカヅチが間に立って護ろうとしてくれるが、それを制して私も前に出る。
コースケが目の前まで来た時、彼の左手中指に嵌められた指輪が光り短剣が現れる。鞘を抜き放ち私に向かって刃を突き立てんと飛びついてきた。
「お母様!」「母上!」
後ろから二人の精霊の慌てる声が聞こえる。
大丈夫よ。これくらいなら一人で対処できる。
短剣を身を屈めて交わしてコースケの懐に入ると、右肩から彼の鳩尾に突き込むように飛び出す。
「ぐぇェッ!?」
そのまま《栄養吸収》を発動してコースケの生命力を全て奪い取る。
「あなたは私の敵だから容赦はしないわ。謝りもしない」
コースケはそのまま塵となって消えた。
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