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勇者
蘇生
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シラヒが自身の力を解放すると温かな光が一帯を包み、青白い光の球が幾つも浮遊しているのが見える様になった。
「お母様、魂達を平穏な状態にもどすことはできました。しかし身体に戻ろうとしません……私の力だけでは助けられないかも知れません」
シラヒは悲しそうな顔をする。自分の力が足らず私の願いを叶えられずに申し訳ないと思っているのだろう。
「ありがとうシラヒ。あなたはよくやってくれているわ」
彼女の頭を優しく撫でる。シラヒは目に涙を溜めながらかぶりを振る。
「でも……」
「大丈夫、私も手伝うわ」
彼らは生きる苦しみから解放されて、もう元の状態に戻りたくないと思ってしまっているのかも知れない。
生きる事は苦しい。
無論、嬉しい事、楽しい事もあるが、辛い事、苦しい事の方が多い。
生まれた境遇から始まり、身分から来る差別や身体能力による格差。あらゆる所に負の感情は潜んでいる。
これらの事を考えると今の状態の方がずっと良いと思ってしまうのかも知れない。
肉体から解放された魂はどうなるのか?
私は一度死んで転生した身であるから、いずれその魂が再生される事は知っている。だが彼らはどうだろう。このまま魂としてこの場に漂い続けるだけのものだとしたら?
彼らは苦しみから逃げただけになってしまうのではないだろうか?
それはあまりにも悲しい。
私は彼らに呼びかける。これで帰って来られないのなら、せめて天へと還してやろう。
「聞きなさい。あなた達には帰りを待つ人はいないの?その人達を置いて逝ってしまって良いの?好きな人は?やりたい事はない?このまま死んでしまっても誰も責めはしない。だけど、今戻らなければ元の自分に戻る事はできないの。あとで後悔しても遅いのよ。少しでも未練があるなら今すぐ自分の身体に戻りなさい」
私は魂達に呼び掛ける。この声が彼らに聞こえているのかは分からない。精一杯、力を込めて語りかける。
『今すぐ自分の身体に戻りなさい』
青白い光の球がゆっくりと動いて倒れ伏した者達の中に入っていく。
息をしていなかった者達が咳をする。
苦しそうに呼吸をしながら目を開けた。
目の前で死んでいた仲間が意識を取り戻したのを見て歓喜する兵士達。起き上がり互いの無事を喜び抱き合う者達。
「お母様……ありがとうございました」
「お礼を言うのは私の方よ。シラヒ、よく頑張ってくれたわ」
シラヒは跪き私に抱き付くと泣き噦る。
彼女はその見た目もあって、もっと冷静な子だと思っていたのだが、生まれたばかりなのだからこの反応は当たり前なのだろう。
「お母様、私のせいで申し訳ありません」
「違うのよミツハ。悪いのは私だわ。私があなたに命じてしまったのだから気にしないで」
そう、これを引き起こしたのは私なのだ。ミツハも悪くはない。
悪いのは軽率に人の命を奪った私の判断だ。
敵対する者に対して容赦をしない。特に家族に危害を加える者は絶対に許さないと決めて判断を下してきた。
しかし今回の様に刃を向けてきた者達が操られているのだとしたら話は別だ。
思考を操作されて無理矢理戦わされているのだとしたら彼らを殺めるべきでは無い。
家族や仲間に危害が及ばない限り彼らも助ける。今の私にはその力があるのだ。
より判断が難しくなるが、出来る限り命を奪わない選択をしようと思う。
「お、お前ら……本当に、生き返ったのか……?」
荷台から降り、驚きながらも蘇生した兵士の元に行くライズ。
「隊長……よく分かりませんが声が聞こえました。今すぐ自分の身体に戻れって。このままでも良いと思っていたのですが、その声を聞いたら生きたいって思えて……」
そう言って涙を流す兵士。
「そうか……よく戻ったな!本当に、良かった……!」
ライズも兵士達の輪の中で喜び、涙を流していた。
「お母様、魂達を平穏な状態にもどすことはできました。しかし身体に戻ろうとしません……私の力だけでは助けられないかも知れません」
シラヒは悲しそうな顔をする。自分の力が足らず私の願いを叶えられずに申し訳ないと思っているのだろう。
「ありがとうシラヒ。あなたはよくやってくれているわ」
彼女の頭を優しく撫でる。シラヒは目に涙を溜めながらかぶりを振る。
「でも……」
「大丈夫、私も手伝うわ」
彼らは生きる苦しみから解放されて、もう元の状態に戻りたくないと思ってしまっているのかも知れない。
生きる事は苦しい。
無論、嬉しい事、楽しい事もあるが、辛い事、苦しい事の方が多い。
生まれた境遇から始まり、身分から来る差別や身体能力による格差。あらゆる所に負の感情は潜んでいる。
これらの事を考えると今の状態の方がずっと良いと思ってしまうのかも知れない。
肉体から解放された魂はどうなるのか?
私は一度死んで転生した身であるから、いずれその魂が再生される事は知っている。だが彼らはどうだろう。このまま魂としてこの場に漂い続けるだけのものだとしたら?
彼らは苦しみから逃げただけになってしまうのではないだろうか?
それはあまりにも悲しい。
私は彼らに呼びかける。これで帰って来られないのなら、せめて天へと還してやろう。
「聞きなさい。あなた達には帰りを待つ人はいないの?その人達を置いて逝ってしまって良いの?好きな人は?やりたい事はない?このまま死んでしまっても誰も責めはしない。だけど、今戻らなければ元の自分に戻る事はできないの。あとで後悔しても遅いのよ。少しでも未練があるなら今すぐ自分の身体に戻りなさい」
私は魂達に呼び掛ける。この声が彼らに聞こえているのかは分からない。精一杯、力を込めて語りかける。
『今すぐ自分の身体に戻りなさい』
青白い光の球がゆっくりと動いて倒れ伏した者達の中に入っていく。
息をしていなかった者達が咳をする。
苦しそうに呼吸をしながら目を開けた。
目の前で死んでいた仲間が意識を取り戻したのを見て歓喜する兵士達。起き上がり互いの無事を喜び抱き合う者達。
「お母様……ありがとうございました」
「お礼を言うのは私の方よ。シラヒ、よく頑張ってくれたわ」
シラヒは跪き私に抱き付くと泣き噦る。
彼女はその見た目もあって、もっと冷静な子だと思っていたのだが、生まれたばかりなのだからこの反応は当たり前なのだろう。
「お母様、私のせいで申し訳ありません」
「違うのよミツハ。悪いのは私だわ。私があなたに命じてしまったのだから気にしないで」
そう、これを引き起こしたのは私なのだ。ミツハも悪くはない。
悪いのは軽率に人の命を奪った私の判断だ。
敵対する者に対して容赦をしない。特に家族に危害を加える者は絶対に許さないと決めて判断を下してきた。
しかし今回の様に刃を向けてきた者達が操られているのだとしたら話は別だ。
思考を操作されて無理矢理戦わされているのだとしたら彼らを殺めるべきでは無い。
家族や仲間に危害が及ばない限り彼らも助ける。今の私にはその力があるのだ。
より判断が難しくなるが、出来る限り命を奪わない選択をしようと思う。
「お、お前ら……本当に、生き返ったのか……?」
荷台から降り、驚きながらも蘇生した兵士の元に行くライズ。
「隊長……よく分かりませんが声が聞こえました。今すぐ自分の身体に戻れって。このままでも良いと思っていたのですが、その声を聞いたら生きたいって思えて……」
そう言って涙を流す兵士。
「そうか……よく戻ったな!本当に、良かった……!」
ライズも兵士達の輪の中で喜び、涙を流していた。
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