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勇者

討伐報酬

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街の門から少し離れた所でケイヴワームを出していたのだが物珍しさから人が集まって来ていた。

私達は真正面からしか見ていなかったのでその長さに驚いた。

直径は五メートル近く、長さは百メートルはあるだろう。そのサイズはまるで電車だ。

「うわ……なんだこりゃ!?」
「《鋼の風》がいるぞ。アイツらが討伐したのかよ?」
「スゲー!」

街の中から来た人や荷物を運んできた行商人、冒険者らしき人物まで騒いでいた。

「しかしこんなものが入る《ストレージ》の指輪を持っているとはな。流石は精霊様だ」
「この魔物は何かに使えますか?」
「何かと言われても……この街じゃ魔物の生態調査をやってもいないし、解体場に入るわけもないし……買取りは無理だ」

ギルドマスターは残念そうに言う。

「だが討伐報酬は出せるぞ。コイツをしまってギルドに来てくれ」

指輪にケイヴワームを戻してギルドに戻る。

「討伐報酬は五十万でどうだ?」
「それで大丈夫です」

セロが報酬を受け取って、その場で分配を始める。話し合った結果私達のパーティと《鋼の風》とで二十五万エルズずつ分ける事にした。

「おいおい、金は受け取れないですぜ。俺達は討伐に関わってないんで」
「いいえ、地上で警戒にあたってくれたお陰で遠慮なく戦う事が出来ました。これはそのお礼です。勿論泉の水も差し上げます」

泉の水を《物質変換》で見立ての良い瓶に変換して中に水を入れた物を七つ作り出し一人ずつに渡していく。

「俺達大した事をしてないのにこんなにもらっちまっていいんですかい?」
「ええ。ここまで連れてきて頂いたし、とても助かったから」
「じゃああそこまで送らなくちゃな」
「いえ、帰りはエレに乗って行きます」

トムスが送って行ってくれると言うが、ゴブリン達やギョクリュウ達を待たせているので早く戻ってやりたい。
エレの背に乗せてもらって急いで戻ろうと思う。

「エレってそこのお嬢さんだよな……?」
「はい!私、ドラコニアンなので」

胸を張って言うエレ。

街の外まで《鋼の風》とギルドマスターが見送りに来てくれた。

エレが竜の姿に変身する。

「お世話になりました」
「お、おう!またいつでも来てくれ!」
「精霊様に会えて良かったです。良いパーティ名ご付くといいですね」
「はい。それでは」

エレの背に全員が乗るとゆっくりと羽ばたいて空を飛んでいく。
既に日は沈みかけていた。

空を飛ぶとほぼ一瞬で例の洞窟に着いてしまった。

「このままセイランまで帰っちゃいたいです」
「それは駄目よ。ゴブリン達の事があるのだから」

エレに着地してもらい空洞へと戻る。

『おかえりなさいませハル様』
「ただいまギョクリュウ。全て片付いたわ」
『精霊様、ありがとうございました』

ゴブリンの一人が深々と頭を下げると他の皆もそれに倣う。

「他に生き残った仲間はいないかしら」
『多分これで全員です』
「そう……あなた達、森に来ない?帰る所が無いのなら森に住んでいるゴブリン達と合流すれば良い」
『ありがとうございます!狭日そうさせてください!』

話はまとまった。あとは森までどうやっていくかだが……

《瞬間移動》を使えば移動できるのではないだろうか?アキオは車ごと移動していた。

「みんな集まって。《瞬間移動》を試します」

移動距離が足りないのなら何度かに分けて移動すれば良いだけだ。

意識を集中させて泉をイメージする。

《瞬間移動》を発動すると。淀んだ空気から澄んだ空気へと変わる。

目の前に私の泉がある。成功だ。

『ここは……?』
「凄い!ここって泉だよね?」

ゴブリン達は驚きのあまり言葉を失っていて全員が辺りを見渡していた。

「母さんおかえり。彼らは?」
「颯太、彼らは住処を無くしてしまったらしいの。森のゴブリン達に会わせてあげて」
「わかった」

颯太に任せて私達はセイランに戻る事にした。
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