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勇者

ギルドで報告

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協力してくれた冒険者達は《鋼の風》と言うらしい。
移動は彼らの馬に乗せてもらう事になった。私とマイは一纏めにリーダーの男、トムスの馬に乗せてもらう。

「精霊様のパーティは何て名前なんですかい?」
「名前……付いているのですか?」

リーダーはセロだし私達は三人のパーティに加えてもらった立場だ。

「いや、特には考えてなかったよ」
「ああ、君がリーダーなのか。こりゃあ申し訳ない」
「いえいえ……」

トムスは申し訳なさそうに頭を下げた。

「しかし名前は付けた方がいいぞ。パーティが長続きする為の験担ぎだ」
「そういうものですか」
「ウチの地元じゃ名前の付いてないパーティは臨時編成か長く続けたくない理由があるかのどちらかだっていわれるよ」

パーティの軽装備の女性にそう言われて戸惑うセロ。

「名前、付けよう」
「つまり長く続けたいんだね?」
「そうだよ。逆に変に勘ぐられるのはハルさん達に申し訳ない」

リンに言われてセロは真剣に答えていた。

「ありがとうございます」

セロは気配りが出来る紳士だわ。

「付けるなら願いや思いを込めるのが良いぞ」
「《鋼の風》はどんな思いが込められているの?」

芽依が興味津々で聞くとトムスは胸を張って話してくれた。

「鋼の様に強靭に、風の様に自由に、俺達はそんな冒険者で在りたいと付けたんだ」
「カッコいい!」
「だろ?アンタ達もいい名前を考えろよ!」

そんな話をしていたら街に到着した。

ここはケフダユという街でセイランから北方向にかなり行った所らしい。規模はセイランの三分の一程だが活気のある街だ。

門には衛兵が居たが冒険者達を見るなり手を挙げて挨拶をするだけでそのまま通してくれる。

「私達の事は良いのかしら?」
「まあ、俺達が連れているから信用しているんだろう。こう見えて俺達はこの街じゃかなり名の知れたパーティだからな」
「おーカッコいい!」

トムスは芽依に褒められて嬉しそうだ。

「何言ってんだよ。この街の冒険者何て三パーティ二十人しか居ねえじゃねえか」

軽装剣士の男が呆れ顔で言うと「言わなきゃバレねえのに」と笑いながら言っていた。

彼らのお陰で容易に街に入れたのは事実だ。感謝しておこう。

馬に乗ったまま大通りに面した建物へ向かう。ここが冒険者ギルドの様だ。
表に馬を止めておく所があるのでそこで降ろしてもらった。

入り口は西部劇に出てきそうな木製のスイングドアがあり、中は他の冒険者ギルドとほとんど変わらない造りをしていて、入ってすぐは酒場兼ギルドホール、奥には受付があった。

トムスはドアを押して入り、席で食事をしている冒険者達に声を掛けていた。

「空洞の調査はどうだったんだ?」
「お前らがやらなくて正解だったな。大変な事になっていたぞ」

トムスはニヤリと笑って席についている冒険者達に言い返す。

「お疲れさん《鋼の風》。報告を聞こうか」

声を掛けてきたのは受付の所に立っていた筋骨隆々の大男。

「マスター、報告だが──」

トムスはゴブリンに遭遇した事から話始め、私達と出会いケイヴワームの通り道があった事を報告する。

「ソイツはやべえな……軍に出動要請を掛けるか」
「ケイヴワームなら倒しました」
「……そちらのお嬢さんは?」
「私は泉の精のハルです。セイランの冒険者ギルドに所属しています」
「泉の精!?精霊様か!噂には聞いていたが、本当に子供の姿をしているんだな」

身を乗り出して私を見るギルドマスター。目が合ったので笑顔を向けると身体を起こして咳払いをした。

「失礼、さっきの話だが、討伐の証明はできるかな?」
「倒したケイヴワームを持ってきました。お見せしますよ」

サイズ的に街の中で出す事は出来そうにないので街から出て指輪に格納してある死骸を見せる事にした。

「……驚いたな。本当にケイヴワームだ。しかもかなりのデカさじゃないか」

そう言ってギルドマスターは驚いていた。
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