上 下
328 / 453
勇者

抵抗

しおりを挟む
ケイヴワームの開いた口に水が入っていき、私達の目の前で完全に止まった。

「気を付けてください。ケイヴワームの口の周りには伸縮する触手があります」

ライブラは長剣を片手に持って前に出る。口の周りの棘の様なものが勢いよく伸びてくるが、ライブラが斬り払ってくれた。

「動きは止まったけどまだ生きている。どう戦おう?」
「取り敢えず口に蓋をするわ」

私は氷塊を作り出して開いたままの口に詰め込んだ。そのままさらに氷を広げていく。苦しそうにもがいているが、まだ倒れない。

触手を無数に出して私を攻撃するケイヴワーム。

「お母さん!」

芽依が素早く前に出て全ての触手を斬り払ってくれた。

「よし、このまま攻撃だ!」

セロとエレが前に出て伸ばそうとしている触手を斬り捨てる。

マイは石で無数の矢を作って攻撃。ワダツミも手から高水圧を放って触手を切り取っていく。

ケイヴワームは苦しそうにもがいて後退しようとしているが後ろはサヅチが既に塞いでいて身動きが取れない。口を大きく開けて氷塊を吐き出そうとしていたので、氷を更に追加しておいた。

全員が出てくる触手を攻撃し続け、程なくして全ての触手を切り落とす事に成功した。

やがて一切の動きを止めるケイヴワーム。

「倒した?」

芽依は私の前で剣を構えたまま様子を伺っている。

「生命反応の消失を確認。お疲れ様でした」

ライブラはそう言って剣を鞘に納めた。

「水責めが効いたみたいですね」

エレも大剣を担ぎ直して息を吐く。

「ワダツミのお陰ね。ありがとう」
「お役に立てて良かったです!」
「サヅチもありがとう」
「大した事はしてないが、役立って良かった」

地面から姿を現してサヅチが言う。彼は土を伝って移動できる様だ。便利でいいわね。

討伐は完了したが、これをどうしようか?
ケイヴワームは水を大量に含んでいて口には氷を詰め込んである。このままにしておくと腐食して悪臭の元になるだろう。サイズとしてはガルムンドよりは小さいので指輪に格納できそうだ。

『精霊様ありがとうございました!仲間達の無念も晴らせます』

ゴブリンの一人が礼を言ってくる。

「あなた達、これ何かに使う?」
『ケイヴワームの死体をですか?うーん、食えるのかなこれ』

……やめておいた方がいいと思うわよ。

「ケイヴワームの血には人体に有害な物質が含まれています。ゴブリンにも同様です。量できるのは皮くらいかと」

ライブラはケイヴワームの触手に触れながら解析結果を告げてくる。

『食えないならいらないですね。精霊様が使われますか?』
「そうね、このままにはしておけないし私が引き取りましょう」

指輪に格納しておいた。

「お母さん、ギルドに渡したら討伐報酬が出るんじゃない?」
「ケイヴワームは冒険者のパーティ一つで討伐する様な相手じゃないから結構な額もらえるんじゃないかな?」

芽依が言うとリンが付け加えてくる。

「地上の警戒に出てくれている彼らにも報酬を分けるべきよね」

泉の水で雇った様なものだが彼らにも報酬を渡しておこう。皆も賛成してくれた。

元来た道を戻って、彼らと別れた地点に戻り地上に出る。ゴブリン達はギョクリュウらと空洞で待っていてもらう事にした。

出た所は小高い丘の麓にある林だった。
周囲を見渡してみると、遠くに馬に乗った七人が見えた。

手を振って合図を送ると向こうも手を振ってくれ、こちらにやって来た。

「まさかもう退治したんですかい?」
「ええ。無事終わりました。崩落等は起こっていなあ筈です」
「流石としか言いようがない……精霊様以外の皆さんも相当なやり手なんだな」

それを聞いて申し訳なさそうにしているセロ。
あなた達は十分に強いわ。胸を張っていいのよ。

「討伐したケイヴワームを提出したら報酬とか出ないかしら?」
「そりゃ災害レベルの魔物なんで、討伐証明が出来ればかなりの額を貰えると思いますよ」

リーダーの男性がそう言うので、彼らが拠点にしている近くの街に連れて行ってもらう事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

転生したら妖精や精霊を統べる「妖精霊神王」だったが、暇なので幼女になって旅に出ます‼︎

月華
ファンタジー
21歳、普通の会社員として過ごしていた「狐風 空音」(こふう そらね)は、暴走したトラックにひかれそうになっていた子供を庇い死亡した。 次に目を覚ますとものすごい美形の男性がこちらを見、微笑んでいた。「初めまして、空音。 私はギレンフイート。全ての神々の王だ。 君の魂はとても綺麗なんだ。もし…君が良いなら、私の娘として生まれ変わってくれないだろうか?」えっ⁉︎この人の娘⁉︎ なんか楽しそう。優しそうだし…よしっ!「神様が良いなら私を娘として生まれ変わらせてください。」「‼︎! ほんとっ!やった‼︎ ありがとう。これから宜しくね。私の愛娘、ソルフイー。」ソルフィーって何だろう? あれ? なんか眠たくなってきた…? 「安心してお眠り。次に目を覚ますと、もう私の娘だからね。」「は、い…」 数年後…無事に父様(神様)の娘として転生した私。今の名前は「ソルフイー」。家族や他の神々に溺愛されたりして、平和に暮らしてたんだけど…今悩みがあります!それは…暇!暇なの‼︎ 暇すぎて辛い…………………という訳で下界に降りて幼女になって冒険しに行きます‼︎! これはチートな幼女になったソルフイーが下界で色々とやらかしながらも、周りに溺愛されたりして楽しく歩んでいく物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー お久しぶりです。月華です。初めての長編となります!誤字があったり色々と間違えたりするかもしれませんがよろしくお願いします。 1週間ずつ更新していけたらなと思っています!

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

♡してLv.Up【MR無責任種付おじさん】の加護を授かった僕は実家を追放されて無双する!戻ってこいと言われてももう遅い!

黒須
ファンタジー
 これは真面目な物語です。  この世界の人間は十二歳になると誰もが天より加護を授かる。加護には様々なクラスやレアリティがあり、どの加護が発現するかは〈加護の儀〉という儀式を受けてみなければわからない。  リンダナ侯爵家嫡男の主人公も十二歳になり〈加護の儀〉を受ける。  そこで授かったのは【MR無責任種付おじさん】という加護だった。  加護のせいで実家を追放された主人公は、デーモンの加護を持つ少女と二人で冒険者になり、金を貯めて風俗店に通う日々をおくる。  そんなある日、勇者が魔王討伐に失敗する。  追い込まれた魔王は全世界に向けて最悪の大呪魔法(だいじゅまほう)ED(イーディー)を放った。  そして人類は子孫を残せなくなる。  あの男以外は!  これは【MR無責任種付おじさん】という加護を授かった男が世界を救う物語である。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

処理中です...