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勇者

撃滅

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あの車はマカミ達の攻撃を消える事によって回避している。
いや、仮に瞬間移動をしているのだとしたらどうだろうか?
この世界にはその様な魔法は無いが、シュウかあの車に乗っている誰かが使えたとしたら……?

先程から消えて現れるのはほぼ一瞬で、消えた地点と出現した地点は然程離れてはいない。

颯太の使う《アルエクリシス》の様な広範囲魔法で面制圧を仕掛けたらどうだろうか?着弾点を予測されたら避けられてしまう可能性がある。

予測不能な攻撃だったらどうか?

私達にはまだ手札が残っている。

『コイツ、直ぐに逃げて攻撃が当たらない!』
『当てればこんな奴一撃で粉々にしてやるのに!』

マカミとメトは苛立っていた。

「落ち着きなさい。今のままで良いわ。もう一度攻撃して」
『はい!』『いきます!』

マカミとメトは先程と同じ様に両側から挟み込む様に攻撃に出る。
またしても車は消えて、少し離れた所に出現する。そしてこちら目掛けて走りながら銃撃だ。

「キリがないよ。私達も魔法で援護しよう」
「防御は任せてください!」

芽依とマイが戦闘に加わろうとする。

「少しだけ待って。多分動きを止められるから」

二人を制して車を見る。相変わらず銃を乱射しているシュウ。彼は疲れた様子もない。

瞬間移動等の能力者がいるとしたらそれも転生者かも知れない。シュウと結託している時点で交渉の余地はない。この場で死んでもらう。

車の走る直ぐ先の地面が割れてヤトが勢いよく飛び出して来る。
車はその勢いで大きく持ち上げられて宙を舞った。
そのまま地面に叩きつけられて金属の拉げるけたたましい音と共に二転三転と転がる車。箱型の大きな車は歪な形に姿を変えて動かなくなった。

あの様子なら乗員もただでは済むまい。

『今のうちだ!』
『叩き壊してやる!』

マカミとメトが飛び出していく。

「待ちなさい!」

こんな時こそ慌ててはいけない。敵が何を仕掛けて来るか分からないからだ。

車のドアが蹴破られて中から人が出てくる。最初に出て来たのは屈強な男。その身体に見合った大きな銃を構えてマカミとメトを攻撃する。

マカミとメトはその巨体に似合わぬ俊敏な動きで銃弾を躱すと男の目の前に迫り前足を振り下ろす。

ぺシャリと音がして地面が赤く染まった。

反対側の扉から出て来たのはシュウだった。彼は少々小ぶりな銃を持って這い出てくると壊れた車の影に隠れた。

どうやら瞬間移動は出来ない様だ。
これで一気にこちらの有利になった。

「くそっ!ふざけんなよ!絶対に勝てるって言うからついて来たのに話が違うじゃねぇか!」

次に這い出て来た男は踏み潰された仲間を見て泣き叫んでいた。

マカミはそれを特に気にする事なく前足で横薙ぎに払う。巨大な爪に引き裂かれた男はバラバラに散らばった。

メトが壊れた車を掴んで持ち上げる。

車の中から男女二人が飛び出して来て、男の方は柄の長いバズーカの様なものをメトに向けていた。

「メト!」

芽依が咄嗟に魔法で火球を作り出して投げつける。
火球はバズーカの先端に当たって大爆発を起こした。構えていた男の運命は言うまでもない。

メトは持ち上げていた車を盾にしたのでほぼ無傷だった。

女の方はシュウの所に向かい叫んでいた。

「もう無理です!投降しましょう!」
「奴らは俺達を殺すつもりだ。降伏しても生かしてはくれないぞ」
「それでも……私はあんな殺され方をしたくないわ!」

無惨な姿に変わった仲間達を見て泣き喚いている女。
その間に私はカクカミに乗ったままシュウに接近する。

「あなたの錬金術をもっと平和の為に使っていればこの様な事にはならなかったのよ」
「錬金術……錬金術か。俺が使ってるのは錬金術じゃあねぇんだな!」

そう言うと女性の首を乱暴に掴んだ。
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