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勇者

協力者

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私達は城へと続く道を走る。
この道なら出動して来る騎士や兵士達と遭遇しやすいと思ったからだ。

クーゲルの様に既に急行している者達には渡せないが、医療物資を持ち徒歩でやって来る者達には会う事ができた。

「かなりの猛毒の様です。屋外にいた人は私の水を浴びて解毒出来ましたが、屋内に居る人は治療が出来ていません。水筒等の水を注げる物を出してください。解毒効果のある水をお渡しします」

やって来る兵士に説明すると全員が慌てて水筒の中身を空けて差し出して来る。

「良かったら、これを使ってください……」

その様子を見て前掛けをした中年男性がヨロヨロしながら樽を持ってきた。

「ありがとう。他に樽はありますか?」
「店の裏にあるよ……私はそこの酒場の者だから……」

男性は完全に解毒されていない。恐らく屋根のある所にいたのだろう。水筒の水を飲ませるとすぐに元気になった。

「おお……体のだるさと頭痛が無くなった!ありがとう!直ぐに樽を持ってくるよ!」
「手伝います!」

小走りで樽を取りに行く男性にセロとエレが続いた。

「精霊様、直ぐにお越しいただけますか?」

やって来たのは馬に乗った騎士だった。

「重症者ですか?」
「ギルバート殿下を乗せた馬車がこの近くに。かなり危険な状態です」
「分かりました」

樽を抱えた三人が戻って来たので泉の水を満杯まで注ぐ。

「案内お願いします」

馬は私達に併せてゆっくり走り出す。
私達はそれについて走る。

大通りから一つ外れた通りに二頭立ての馬車が止まっていた。馬と御者は既に息絶えている。

「こちらです」

騎士が扉を開けてくれるので中に入ると、ギルバートが床に倒れて痙攣していた。

直ぐに水を全身に掛けて《過剰分泌》させた水を飲ませる。

ガスの噴出からかなり時間が経っているが間に合うだろうか?

「う……ぐっ……はぁ、はあっ……!ここは?私は何を……?」
「間に合ったみたいですね」
「ハル……様。あなたが私を助けてくれたのですか?」
「はい。残念ながら御者は亡くなりました」

身体を起こして礼を言ってくるギルバート。

「皆さんはご無事ですか?メイさんは?」
「私達にこの毒は効きませんでした。全員無事です」

馬車の扉の所からメイとマイが顔を覗かせていた。

「……良かった」

安堵するギルバート。

「馬車で城にお戻り下さい」
「馬は無事だったのですか?」
「いいえ。ギョクリュウ!」
『はっ!』

《眷属召喚》でギョクリュウを呼んで馬車を引いてもらう。

「ハル様、馬車は救助に使いましょう」
「でも殿下は城にお戻りになった方が良いと思います」
「いいえ、民が苦しんでいるのに自分だけ安全な所に戻る事など出来ません。私にも手伝わせてください」

ギルバートの覚悟は本物の様だ。

「分かりました。水の運搬や重症者の搬送に使わせてもらいます」
「ありがとう!」

決定後のギルバートの行動は早かった。
近くの者に声を掛けて樽や水筒、コップなどの必要な物の供出を呼び掛けてあっという間に集めてしまった。

「皆、ありがとう!これで多くの者を救える」
「自ら助けに行かれるなんて……」
「殿下のお役に立てて良かったです」

民への人気は絶大だ。

「さあ、行きましょう!」
「ええ」

馬車を使って移動しながら救助活動をする。途中出会った救助隊にはギルバートが話をしてくれ水を渡してくれている。

私が話すよりもスムーズに事が進むのでかなり助かった。

屋内で倒れている者は近隣住民も手伝って水を飲ませてくれ、想定よりも多くの者を助ける事が出来た。

『ハル様、街を脱出しようとする不審な者を数名見つけました』

オオトリが低空まで降りて来て伝えてくる。

「分かったわ。捕縛して話を聞きましょう」
『ご案内いたします』

救助の手は足りているので、私達はオオトリの見つけた不審者の追跡を行う事にした。
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