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勇者
反撃
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『敵の攻撃を逸らせば良いのですね!お任せください!』
「ええ。お願いね」
私とカナエは三重の壁から飛び出して前進する。
ヨアンの放った銃弾は私達よりもかなり離れた地面に突き刺さる。
『光の魔法で私達のいる位置を偽装しています。そう簡単には見破られませんよ!』
「ありがとう。助かるわ」
しかしヨアンの所に行くまでにはかなり時間が掛かってしまう。当てずっぽうで命中しないとは限らない。
一か八かになるが一つ策を講じる事にした。
「カナエ、私の声をヨアンに届けて」
『分かりました!』
私はヨアンに対して警告する。
「あなたが何処から攻撃しているか、どの様な武器を用いているかは既に見破っています。フランシス殿下の仲間でありながら裏切り、この様な行いをしたあなたには相応の罰を与えます。ヨアン、今すぐそちらに行きますから覚悟なさい」
話すと同時に《遠隔視野》で彼の様子を確認する。
声を聞いて驚き周囲を見渡していたが、直ぐにこちらを銃のスコープを覗く。歯を食いしばり緊張した表情でこちらを見ている。
彼は明らかに動揺していた。
逃げ出してくれれば一番良かったのだが、今は攻撃をするか迷っている様に見える。
少しでも焦ってくれれば良い。
私達はそれに付け入りヨアンを確実に仕留めるだけだ。
「カナエ、あの攻撃をトコヤミの鱗で防げると思う?」
私は走りながらカナエに聞く。
『そうですね……そのままでは貫通してしまうと思います』
「分かったわ。少し危険だけど《硬化》を掛けて突撃するわ」
先にある広場でトコヤミを召喚し、即座に《硬化》と《眷属強化》を加える。
『そこまでされるという事は厄介な敵がいるのですね?』
「ええ。あなたには危険な事をお願いする事になるわ」
『ハル様の為なら何でも致しましょう』
現れたトコヤミは状況を直ぐに理解してくれた。
私とカナエはトコヤミに乗りヨアンの元へと向かう。
「トコヤミ、かなり強力な武器で攻撃されるわ。注意して」
『御意』
その直後、トコヤミの胴体に銃弾が命中。凄まじい衝撃でトコヤミは大きく揺さぶられた。
『くっ……!人間如きが!生意気な!!』
「トコヤミ、熱くならないで。私が強化している限り大丈夫よ」
『はい!』
鱗に大きな傷が付いただけで貫通には至らなかった。
これなら大丈夫だ。
トコヤミは怒りの咆哮をあげながら丘に向かって猛然と飛んでいく。
慌てたヨアンは一射二射と攻撃を続けるがトコヤミの強化された硬い鱗を撃ち抜く事は出来ない。
目視で表情が分かる程の距離まで詰め寄る。
「くっ……来るなっ……!!」
巨大な銃を構えて伏せたままのヨアンが叫ぶ。ここまで接近されて逃げないのは大したものだ。
「諦めなさい。降伏すれば命までは取らないわ」
「違う!俺はここを動けないんだ!」
必死の形相で訴えてくるヨアン。拘束されている様には見えない。
何かを仕掛けられている?
「シュウに脅されているの?」
「そうだよ!泉の精霊を始末すれば開放してくれるって言われたんだ……」
動けない、解放、やはり何かを……?
次の瞬間、ヨアンの寝そべっている辺りの地面にバチバチと火花が迸る。
「そんなっ……俺は一生懸命やってるじゃないか!待ってくれ!待っ──」
ヨアンの叫び声を掻き消して巨大な火柱が上がる。
トコヤミは慌てて上昇しながら丘から距離を取ろうとしたが間に合わない。
巨大な炎と衝撃と轟音に飲み込まれる。
カナエが咄嗟に風で結界を作り上げ、私はトコヤミを《眷属強化》で更に強化する。
トコヤミはバランスを崩しながらも何とか爆風に耐えて爆心地から離れた。
『申し訳ありませんハル様……ご無事ですか?』
「よく耐えたわ。ありがとう、大丈夫よ」
カナエも私の左肩にしがみついていて無事だった。
地上を見るとヨアンの居た丘は丸ごと無くなっていた。
「ええ。お願いね」
私とカナエは三重の壁から飛び出して前進する。
ヨアンの放った銃弾は私達よりもかなり離れた地面に突き刺さる。
『光の魔法で私達のいる位置を偽装しています。そう簡単には見破られませんよ!』
「ありがとう。助かるわ」
しかしヨアンの所に行くまでにはかなり時間が掛かってしまう。当てずっぽうで命中しないとは限らない。
一か八かになるが一つ策を講じる事にした。
「カナエ、私の声をヨアンに届けて」
『分かりました!』
私はヨアンに対して警告する。
「あなたが何処から攻撃しているか、どの様な武器を用いているかは既に見破っています。フランシス殿下の仲間でありながら裏切り、この様な行いをしたあなたには相応の罰を与えます。ヨアン、今すぐそちらに行きますから覚悟なさい」
話すと同時に《遠隔視野》で彼の様子を確認する。
声を聞いて驚き周囲を見渡していたが、直ぐにこちらを銃のスコープを覗く。歯を食いしばり緊張した表情でこちらを見ている。
彼は明らかに動揺していた。
逃げ出してくれれば一番良かったのだが、今は攻撃をするか迷っている様に見える。
少しでも焦ってくれれば良い。
私達はそれに付け入りヨアンを確実に仕留めるだけだ。
「カナエ、あの攻撃をトコヤミの鱗で防げると思う?」
私は走りながらカナエに聞く。
『そうですね……そのままでは貫通してしまうと思います』
「分かったわ。少し危険だけど《硬化》を掛けて突撃するわ」
先にある広場でトコヤミを召喚し、即座に《硬化》と《眷属強化》を加える。
『そこまでされるという事は厄介な敵がいるのですね?』
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『ハル様の為なら何でも致しましょう』
現れたトコヤミは状況を直ぐに理解してくれた。
私とカナエはトコヤミに乗りヨアンの元へと向かう。
「トコヤミ、かなり強力な武器で攻撃されるわ。注意して」
『御意』
その直後、トコヤミの胴体に銃弾が命中。凄まじい衝撃でトコヤミは大きく揺さぶられた。
『くっ……!人間如きが!生意気な!!』
「トコヤミ、熱くならないで。私が強化している限り大丈夫よ」
『はい!』
鱗に大きな傷が付いただけで貫通には至らなかった。
これなら大丈夫だ。
トコヤミは怒りの咆哮をあげながら丘に向かって猛然と飛んでいく。
慌てたヨアンは一射二射と攻撃を続けるがトコヤミの強化された硬い鱗を撃ち抜く事は出来ない。
目視で表情が分かる程の距離まで詰め寄る。
「くっ……来るなっ……!!」
巨大な銃を構えて伏せたままのヨアンが叫ぶ。ここまで接近されて逃げないのは大したものだ。
「諦めなさい。降伏すれば命までは取らないわ」
「違う!俺はここを動けないんだ!」
必死の形相で訴えてくるヨアン。拘束されている様には見えない。
何かを仕掛けられている?
「シュウに脅されているの?」
「そうだよ!泉の精霊を始末すれば開放してくれるって言われたんだ……」
動けない、解放、やはり何かを……?
次の瞬間、ヨアンの寝そべっている辺りの地面にバチバチと火花が迸る。
「そんなっ……俺は一生懸命やってるじゃないか!待ってくれ!待っ──」
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巨大な炎と衝撃と轟音に飲み込まれる。
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トコヤミはバランスを崩しながらも何とか爆風に耐えて爆心地から離れた。
『申し訳ありませんハル様……ご無事ですか?』
「よく耐えたわ。ありがとう、大丈夫よ」
カナエも私の左肩にしがみついていて無事だった。
地上を見るとヨアンの居た丘は丸ごと無くなっていた。
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