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勇者
王都へ帰還
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トコヤミにザハーンの物資輸送を手伝う様に話してから彼をウルゼイドに送って帰す。
別れる際にザハーンが「今回のお礼です」と言って芽依の服を五着渡してくれた。
そういえば買い忘れていたわ。
「ありがとう。助かるわ」
「これくらいなら幾らでもご用意させていただきます。いつでお申し付けください」
ザハーンに礼を言って私達は一路王都を目指す。
「三日間だったけど、とても有意義で楽しい休暇だったね」
「本当、貴重な体験が出来たよね」
「一生の思い出になります」
セロ、リン、ミラはとても喜んでくれていた。
「ありがとう。また休みの時は森に行きましょう」
「嬉しい!それを思えば冒険者の仕事も頑張れそうだよ」
リンは子供の様に飛び跳ねて喜んだ。
「次は国の人達に説明をするのですよね。大丈夫でしょうか?」
リンとは正反対に不安そうなミラ。
「皆さんにご迷惑は掛けませんよ。国王と第二、第三王子はこちらの味方をすると思いますし、大した事にはならないかと」
フランシスについても結局の所上手く治める事が出来ている。彼らが余計な事を考えなければ問題は起こらない筈だ。
「あの時戦場にいた全員が行かなくちゃいけないんだよね?」
「多分そうね」
「うー……面倒だよー」
芽依は足をバタつかせながら文句を言っていた。
「芽依、端ないわよ」
「はーい」
ピタリと止まって返事をしてくる。素直ね。
王都に戻ったら国王に巨人達の移動の完了を報告する。
いつもの様に王の私室だ。今回はこちらは全員とラムド国王、エリオット王子とフランシス王子もいた。
「私の提案を聞いてくださりありがとうございました」
「いや、我々としてもありがたい申し出だった」
ラムドは深く頷きながら言う。
エリオットは笑顔、フランシスは無表情だった。
「僕は本当に許されたのですか?」
「ええ。私の提示した条件を飲んでくださいましたので」
「そう……ですか」
まだ信じていない様ね。
「フランシス殿下、一つお尋ねしたい事があります」
「何でしょう……?」
「アドラスのシュウという男についてです」
フランシスはシュウという男に会っている。彼から情報を聞き出しておく事は大切だ。
「彼は鍛冶屋で錬金術師です。ただの金属の塊を一瞬で銃に変えて見せました」
その銃を渡されて、『俺はもっと強力な武器を作ることが出来る。俺と手を組めばその武器もやろう。現国王を蹴落としてお前を王にしてやる事も出来る』と言われたらしい。
例えその場で断っても渡された銃はくれると言うし、特に口封じなども行う様子はなかったらしい。
「シュウとはどこで会ったの?」
「北東部の鉱山で魔物の討伐をしている時に会いました」
彼は軽装備で武器も持たずに現れて、敵国である事を知った上で『素材を採りに来た』と言っていたそうだ。
態々ライアッドまで採取に来ると言う事はアドラスには良い鉱物がないのだろうか。
「殿下は敵国の者と知って何もしなかったのですか?」
「はい。正確には何も出来なかったのです。彼には不気味な気配がありました。いつでも僕達を殺せると言っている様な気がして」
それはきっと気のせいではなかったのだろう。
その気になればいつでも武器を出してフランシス達全員を殺害できたのだと思う。
「あの武器より強力な武器……」
「もっと連射が効くか射程距離が長いものだと思います」
フランシスの持っていた銃は現代地球にあるものではなかった。
火薬による弾丸の発射機構ではなく、魔法による発射機構がついていた。
弾丸を圧縮した魔力を爆発させて発射するのだ。何ともこの世界らしい銃だ。
この世界の人は銃など見た事がない。
あれで長距離から撃たれたら戦意も無くすだろう。
「その武器を見せてはもらえぬか?」
「ええ」
私は指輪にしまってあった銃を取り出してラムドに渡した。
別れる際にザハーンが「今回のお礼です」と言って芽依の服を五着渡してくれた。
そういえば買い忘れていたわ。
「ありがとう。助かるわ」
「これくらいなら幾らでもご用意させていただきます。いつでお申し付けください」
ザハーンに礼を言って私達は一路王都を目指す。
「三日間だったけど、とても有意義で楽しい休暇だったね」
「本当、貴重な体験が出来たよね」
「一生の思い出になります」
セロ、リン、ミラはとても喜んでくれていた。
「ありがとう。また休みの時は森に行きましょう」
「嬉しい!それを思えば冒険者の仕事も頑張れそうだよ」
リンは子供の様に飛び跳ねて喜んだ。
「次は国の人達に説明をするのですよね。大丈夫でしょうか?」
リンとは正反対に不安そうなミラ。
「皆さんにご迷惑は掛けませんよ。国王と第二、第三王子はこちらの味方をすると思いますし、大した事にはならないかと」
フランシスについても結局の所上手く治める事が出来ている。彼らが余計な事を考えなければ問題は起こらない筈だ。
「あの時戦場にいた全員が行かなくちゃいけないんだよね?」
「多分そうね」
「うー……面倒だよー」
芽依は足をバタつかせながら文句を言っていた。
「芽依、端ないわよ」
「はーい」
ピタリと止まって返事をしてくる。素直ね。
王都に戻ったら国王に巨人達の移動の完了を報告する。
いつもの様に王の私室だ。今回はこちらは全員とラムド国王、エリオット王子とフランシス王子もいた。
「私の提案を聞いてくださりありがとうございました」
「いや、我々としてもありがたい申し出だった」
ラムドは深く頷きながら言う。
エリオットは笑顔、フランシスは無表情だった。
「僕は本当に許されたのですか?」
「ええ。私の提示した条件を飲んでくださいましたので」
「そう……ですか」
まだ信じていない様ね。
「フランシス殿下、一つお尋ねしたい事があります」
「何でしょう……?」
「アドラスのシュウという男についてです」
フランシスはシュウという男に会っている。彼から情報を聞き出しておく事は大切だ。
「彼は鍛冶屋で錬金術師です。ただの金属の塊を一瞬で銃に変えて見せました」
その銃を渡されて、『俺はもっと強力な武器を作ることが出来る。俺と手を組めばその武器もやろう。現国王を蹴落としてお前を王にしてやる事も出来る』と言われたらしい。
例えその場で断っても渡された銃はくれると言うし、特に口封じなども行う様子はなかったらしい。
「シュウとはどこで会ったの?」
「北東部の鉱山で魔物の討伐をしている時に会いました」
彼は軽装備で武器も持たずに現れて、敵国である事を知った上で『素材を採りに来た』と言っていたそうだ。
態々ライアッドまで採取に来ると言う事はアドラスには良い鉱物がないのだろうか。
「殿下は敵国の者と知って何もしなかったのですか?」
「はい。正確には何も出来なかったのです。彼には不気味な気配がありました。いつでも僕達を殺せると言っている様な気がして」
それはきっと気のせいではなかったのだろう。
その気になればいつでも武器を出してフランシス達全員を殺害できたのだと思う。
「あの武器より強力な武器……」
「もっと連射が効くか射程距離が長いものだと思います」
フランシスの持っていた銃は現代地球にあるものではなかった。
火薬による弾丸の発射機構ではなく、魔法による発射機構がついていた。
弾丸を圧縮した魔力を爆発させて発射するのだ。何ともこの世界らしい銃だ。
この世界の人は銃など見た事がない。
あれで長距離から撃たれたら戦意も無くすだろう。
「その武器を見せてはもらえぬか?」
「ええ」
私は指輪にしまってあった銃を取り出してラムドに渡した。
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