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勇者
寄り道
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その後も各種族の長と様々打ち合わせを行い、道を敷く事やこれから始める農畜産業の事などを確認した。
これからは技術提供の為にウルゼイドやディアブレルから魔族達が来る様になるだろう。言葉が通じないのは困るだろうから魔族の言葉を学ぶ準備も必要だ。
「それについてはウルゼイドに手配済みだよ。こちらに来てもらって教育するから学校の様なものを作ろうと思ってる」
「それはいいわね」
建物はディアブレルの方から技術提供を受けて造るそうだ。
ヤトが大量に溜め込んで捨てていたミスリルが取引に使えるだろうからいつでも颯太に渡せる様にしてもらっておく。
オリハルコンは取引には出さずに森の者で使う事に決めた。
三日間は森でゆっくりしようと話をしていたのだが、巨人の移動や取引の件でウルゼイドにも随分と世話になったのでお礼を言う為に一日早く森を出る事にした。
「お母さんどう?」
「とても良く似合ってるわ」
颯太に直してもらった服を着た芽依が私の前でクルクルと回ってみせる。
ツインテールが基本だった髪型はイメージチェンジというやつだろうか、ハーフツインテールに変わっていた。
「お兄ちゃんありがとう!」
「どういたしまして。よく似合ってるよ」
颯太に抱きつく芽依。身体は大きくなってもまだまだ子供ね。
「僕の直した服を気に入ってくれるの嬉しいけど、ウルゼイドで幾つか服を買ってあげて」
「ええ、そうするわ。森の事とライブラをお願いね」
「任せておいて」
予定通りライブラは颯太の元でこの世界の事を学んでもらう。
それぞれ挨拶を交わしながら泉から飛び立つ。今回はエレに乗せてもらうことにした。
エレは上機嫌だが、途中までついて行くと言って聞かなかったトコヤミが厳しい目で見ていた。
『そんな目で見たって代わってあげませんよー』
『お前の飛び方が危なっかしいから見ているのだ。ハル様達を落とすんじゃないぞ』
『はいはーい』
トコヤミも初めて私達を乗せてくれた時にカナエに怒られていたわね。
それが今では指導する側。皆成長しているのだと実感した。
ウルゼイドにはすぐに到着する。トコヤミは『何かあればいつでもお呼び下さい』と言って泉に帰って行った。
街の入り口に着地すると門衛達が集まってきた。
「これはハル様、すぐに馬車をご用意致しますので暫しお待ち下さい」
「ありがとう。今日は巨人達の移動の件でお礼を言いに来ただけなの」
「畏まりました。陛下にはその様にお話します」
詰所で休ませてもらっていたら馬車がやって来たので乗り込む。
「今更だけど、ハルさんってスゴいよね」
「ここの人達が良くしてくれているだけよ」
リンは馬車の内装を見渡しながら言っていた。
この馬車はアンヴァールが引いていて軽快に進むが振動は殆ど無い。ライアッド国のどの馬車よりも乗り心地が良い。
着いた先はザハーンの屋敷。
玄関の前にアルザハーンとイルザハーンが待っていた。
「ハル様、ようこそお越しくださいました」
「ご無沙汰しております」
二人は揃って跪く。
「王族が簡単に跪いてはいけないわ。二人ともお久し振りね」
そのやり取りを見て驚いているセロとリンとミラ。
以前に見ている筈だけど。
「巨人達の移動の手配ありがとう。お陰で無事に森に到着できたわ」
「いえ、あの程度の事でしたら何の問題もございません」
アルザハーンは嬉しそうに頷いていた。
「ところでメイ様はおられないのですか?」
ザハーンが聞いてくる。
私が芽依の方を見ると芽依はニコニコと笑い出す。
「まさか……メイ様ですか?」
「うん。お久し振り!」
ザハーンは困惑している。アルザハーンも同じだ。
「なんとお美しく……少し見ない内に大きくなられて……」
私は芽依を正式に眷属にした事、その際に芽依の姿が今のものに変わってしまった事を説明した。
「そうでしたか。メイ様、さぞ驚かれた事でしょう」
ザハーンは優しい目で芽依を見ていた。
これからは技術提供の為にウルゼイドやディアブレルから魔族達が来る様になるだろう。言葉が通じないのは困るだろうから魔族の言葉を学ぶ準備も必要だ。
「それについてはウルゼイドに手配済みだよ。こちらに来てもらって教育するから学校の様なものを作ろうと思ってる」
「それはいいわね」
建物はディアブレルの方から技術提供を受けて造るそうだ。
ヤトが大量に溜め込んで捨てていたミスリルが取引に使えるだろうからいつでも颯太に渡せる様にしてもらっておく。
オリハルコンは取引には出さずに森の者で使う事に決めた。
三日間は森でゆっくりしようと話をしていたのだが、巨人の移動や取引の件でウルゼイドにも随分と世話になったのでお礼を言う為に一日早く森を出る事にした。
「お母さんどう?」
「とても良く似合ってるわ」
颯太に直してもらった服を着た芽依が私の前でクルクルと回ってみせる。
ツインテールが基本だった髪型はイメージチェンジというやつだろうか、ハーフツインテールに変わっていた。
「お兄ちゃんありがとう!」
「どういたしまして。よく似合ってるよ」
颯太に抱きつく芽依。身体は大きくなってもまだまだ子供ね。
「僕の直した服を気に入ってくれるの嬉しいけど、ウルゼイドで幾つか服を買ってあげて」
「ええ、そうするわ。森の事とライブラをお願いね」
「任せておいて」
予定通りライブラは颯太の元でこの世界の事を学んでもらう。
それぞれ挨拶を交わしながら泉から飛び立つ。今回はエレに乗せてもらうことにした。
エレは上機嫌だが、途中までついて行くと言って聞かなかったトコヤミが厳しい目で見ていた。
『そんな目で見たって代わってあげませんよー』
『お前の飛び方が危なっかしいから見ているのだ。ハル様達を落とすんじゃないぞ』
『はいはーい』
トコヤミも初めて私達を乗せてくれた時にカナエに怒られていたわね。
それが今では指導する側。皆成長しているのだと実感した。
ウルゼイドにはすぐに到着する。トコヤミは『何かあればいつでもお呼び下さい』と言って泉に帰って行った。
街の入り口に着地すると門衛達が集まってきた。
「これはハル様、すぐに馬車をご用意致しますので暫しお待ち下さい」
「ありがとう。今日は巨人達の移動の件でお礼を言いに来ただけなの」
「畏まりました。陛下にはその様にお話します」
詰所で休ませてもらっていたら馬車がやって来たので乗り込む。
「今更だけど、ハルさんってスゴいよね」
「ここの人達が良くしてくれているだけよ」
リンは馬車の内装を見渡しながら言っていた。
この馬車はアンヴァールが引いていて軽快に進むが振動は殆ど無い。ライアッド国のどの馬車よりも乗り心地が良い。
着いた先はザハーンの屋敷。
玄関の前にアルザハーンとイルザハーンが待っていた。
「ハル様、ようこそお越しくださいました」
「ご無沙汰しております」
二人は揃って跪く。
「王族が簡単に跪いてはいけないわ。二人ともお久し振りね」
そのやり取りを見て驚いているセロとリンとミラ。
以前に見ている筈だけど。
「巨人達の移動の手配ありがとう。お陰で無事に森に到着できたわ」
「いえ、あの程度の事でしたら何の問題もございません」
アルザハーンは嬉しそうに頷いていた。
「ところでメイ様はおられないのですか?」
ザハーンが聞いてくる。
私が芽依の方を見ると芽依はニコニコと笑い出す。
「まさか……メイ様ですか?」
「うん。お久し振り!」
ザハーンは困惑している。アルザハーンも同じだ。
「なんとお美しく……少し見ない内に大きくなられて……」
私は芽依を正式に眷属にした事、その際に芽依の姿が今のものに変わってしまった事を説明した。
「そうでしたか。メイ様、さぞ驚かれた事でしょう」
ザハーンは優しい目で芽依を見ていた。
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