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勇者

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エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、巨人の四種族への報告と打ち合わせが済んだのでその他の種族の所へ順番に回っていく。

どの種族も先祖にあたる者達がディアブレルと戦った事があるだけなので同盟状態になる事に抵抗は無い様だ。

トコヤミに乗せてもらい森林中を飛び回って各種族の集落を往来したが、改めてかなり広いのだと実感した。空を飛んで移動しておるのにだ。

地上を行き来するのはかなり大変だろう。

「集落間に道があった方が良さそうね」
『それならば巨人達に命じてみては如何でしょう?奴らは木材を必要としているので丁度良いかと』
「そうね。余裕のある時だけで良いのでお願いしてみましょう」

トコヤミが良い提案をしてくれたので早速話をさせてもらう。

『私たちでお役に立てるのであれば喜んでやらせていただきます』

ザムドは快く引き受けてくれ、他の巨人達もやる気に満ち溢れていた。

くれぐれも無理をしない様にと念を押しておいた。

道を作る場所については颯太と相談して決めよう。

お昼になったので泉に戻ると、いい匂いがしてきた。
エルフのアルカとフェイが魚を獲ってきてくれたので、お昼は焼き魚が出てきた。折角なのでアルカ、フェイ、リリア、イルとも一緒に食べる事になった。

昼食をいただきながらディアブレルの用件と取り決めについて報告する。颯太は「母さんの決めた事ならその通りにするよ」と爽やかに笑っていた。

道についても相談すると、颯太は部屋の奥から森の地図を持ってきた。

「こんなものいつの間に?」
「時間だけはあるからね。かなり精度は高いと思うよ」

地図があるのは有難い。颯太と相談しながらどこに道を作ってもらうかを話して決めた。

「ディアブレルの技術提供についてだけど、建築関係を重点的に要請したいんだけどいいかい?」
「勿論よ。農業はどうするの?」
「そっちはウルゼイドと調整済みだよ」

流石颯太、抜かりはないわね。

「しかしルドガイアが勢力を拡大すればする程ここを目指してくる種族が増えるんじゃないかな」
「そうね。そろそろ何とかしないといけないわね」

何とかと言っても今の所出来る事は抗議くらいだろうか。それも効果はないだろう。
そもそも私達は国ではなく共同体だ。

ディアブレルかウルゼイドが攻撃を受ければ戦う理由にはなるが、ここに住まう者達を巻き込みたくないという気持ちもある。
しかしルドガイアの侵略の仕方を見ている限り穏便に済ませる事はまず無理だろう。

それにあの国には例の石がある。
あれだけは何としてでも排除せねばならない。

「お母さん怖い顔してる」
「そう?」

芽依が私の顔をじって見て言ってくる。

芽依は午後からは颯太が直してくれた服を試着するらしい。
まだ体の変化に戸惑っているが元気そうだ。

「メイお姉ちゃん大きくなって美人さんになったです」
「そ、そう?」

マイに言われて恥ずかしそうに頬に手を当てている芽依。

「セロはメイさんを見過ぎ」
「そ、そんなに見てないって!」

リンに言われて慌てるセロ。

「午後からはアルカさんに弓を教えてもらいます。よろしくお願いしますね」
「私で宜しければいつでもお教えします。宜しくお願いしますね」

ミラはアルカと仲良くなっていた。

「私はリリアさんに近接戦闘を教えてもらうんだ」
「はい。よろしくです」

リンはリリアに、セロはイルと模擬戦をするらしい。

このエルフ四人は山の麓のエルフ達よりも戦闘力が高いらしい。
颯太が教えた訳ではないそうだが、泉の周りの食べ物で育ってきた分、基礎身体能力が高くなっているらしい。

という事は芽依の身体能力もここで育ったから高いのだろうか。

「そういえば母さん、背丈の事を気にしていたけど、その身体は成長しないんじゃないかな?」
「そういえばそうかも知れないわね」

颯太が言いたいのは《実体化》で獲得した身体の事だ。
よく考えればこの身体は仮初のものだから成長しないのは当たり前か。

一度《実体化》を解いてみれば今の姿が分かるのだけど、ヴァンパイアソーンから吸収した膨大なエネルギーを捨てる事になってしまうので今はやめておいた。
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