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勇者
捕虜と巨人
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起き上がって逃げようとするフランシスをカクカミが前足で押さえつけて動きを封じた。
どうやら水弾は右肩に命中した様で銃は取り落としていた。私はそれを拾い上げる。
前世でも銃など持った事はないが、金属で出来ているため重い。私では片手で構えるのは難しいだろう。
「うぐっ……僕にこんな真似をしてタダで済むと思うなよ……」
「待ち伏せなんて真似までしておいてよく言えるわね」
一国の王子だろうと関係ない。
生命を脅かす者は排除する。
「あなたは私の最も大切なものを奪おうとしました。それだけで生かしておくつもりはありません」
「ひっ……」
フランシスを見下ろしながら冷たく告げると彼は顔を真っ青にしていた。
「ハルさん……カーミラが死にそう」
リンがおずおずと伝えてくる。
どうせ殺すのだから放っておきなさい。と言いたいところだが、何か使い道があるかも知れない。水を掛けて治療しておく。
「ぼ、僕を殺したら国を敵に回すことになるんだぞ……!」
「それは仕方がないわね。戦争になるならどちらかが滅ぶまでやりましよう」
だからあなたはここで死になさい。
流石にそこまでは言わなかったが、フランシスは悟ったようで喚き始める。
「その程度の覚悟で何故この様な事をしたの?あなたはもっと頭が良いと思っていたのに」
「いやだ……死にたくない……」
呆れたわね。何があっても自分は死なないとでも思っていたのかしら。
「答えなさい。あなたの持っていた武器はどうやって手に入れたの?」
「アドラスのシュウという男からもらった」
アドラスのシュウ……
「あなたはアドラスと繋がっていたのね。この武器は元々何の為に手に入れたの?」
「……泉の精を殺せば王にしてくれると言われた」
「シュウという男に?」
頷くフランシス。
私の事を知っていて排除しようとしている?
『ハル様、何か来ます』
カクカミが警告を発する。
地鳴りの様な轟音と共に木々の裂ける音。森の奥側から大きな人影がやって来ている。あれは巨人……
一体の巨人が石斧を携えてこちらにやって来ていた。
『何か用か?』
カクカミが巨人を睨みつける。
巨人は身長が十メートル程。対するカクカミの体高はそれよりも大きい。
見下ろす様にして巨人を威嚇する。
メトもカクカミの横に並び立ち上がる。
立ち上がったメトはかなり大きい。
『お、おお……』
『何だ?言いたい事があるならハッキリと言え』
巨人はカクカミとメトを交互に見比べて震えている。
「カクカミ、メト、巨人が怯えています。下がりなさい」
『はい』
カクカミは頭を下げ、メトは立ち上がるのをやめる。
「驚かせてごめんなさい。私は泉の精のハルです。あなたはこの先の巨人の領域の住人ですね」
『い、いずみの……せい』
言葉は通じる様だ。
巨人が村にやって来たというのは嘘ではなかった様だ。
彼らは領域の狭間である森を破壊した事に怒っているのではないか?
或いは森の破壊に恐れているのか。
『泉の精霊、ハルさま……』
「森を破壊して申し訳ありませんでした」
『精霊さま……どうかお助けください』
予想外の言葉が返ってきた。
「どういう事ですか?」
『俺たちの住処にとても強い竜がやって来て住む所を奪われてしまったんです』
彼らが自分達の領域から出て来たのには理由があった様だ。
「その前に一つ聞かせて。あなた達は最近人間を殺した?」
『俺たち人間は殺しません。父祖の盟約があります』
「父祖の盟約?」
『俺たちの先祖が人間と交わした約束。その人間に俺たちの先祖は救われたのです』
何代も前の話らしいが巨人達の中で病気が蔓延した時に一人の人間に助けられたそうだ。
『その男、アインが言っていた。困った事があれば泉の精霊ハルさまを頼れと。それから人間と敵対してはならないと』
ここにもアインが来ていたのね。
どうやら水弾は右肩に命中した様で銃は取り落としていた。私はそれを拾い上げる。
前世でも銃など持った事はないが、金属で出来ているため重い。私では片手で構えるのは難しいだろう。
「うぐっ……僕にこんな真似をしてタダで済むと思うなよ……」
「待ち伏せなんて真似までしておいてよく言えるわね」
一国の王子だろうと関係ない。
生命を脅かす者は排除する。
「あなたは私の最も大切なものを奪おうとしました。それだけで生かしておくつもりはありません」
「ひっ……」
フランシスを見下ろしながら冷たく告げると彼は顔を真っ青にしていた。
「ハルさん……カーミラが死にそう」
リンがおずおずと伝えてくる。
どうせ殺すのだから放っておきなさい。と言いたいところだが、何か使い道があるかも知れない。水を掛けて治療しておく。
「ぼ、僕を殺したら国を敵に回すことになるんだぞ……!」
「それは仕方がないわね。戦争になるならどちらかが滅ぶまでやりましよう」
だからあなたはここで死になさい。
流石にそこまでは言わなかったが、フランシスは悟ったようで喚き始める。
「その程度の覚悟で何故この様な事をしたの?あなたはもっと頭が良いと思っていたのに」
「いやだ……死にたくない……」
呆れたわね。何があっても自分は死なないとでも思っていたのかしら。
「答えなさい。あなたの持っていた武器はどうやって手に入れたの?」
「アドラスのシュウという男からもらった」
アドラスのシュウ……
「あなたはアドラスと繋がっていたのね。この武器は元々何の為に手に入れたの?」
「……泉の精を殺せば王にしてくれると言われた」
「シュウという男に?」
頷くフランシス。
私の事を知っていて排除しようとしている?
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カクカミが警告を発する。
地鳴りの様な轟音と共に木々の裂ける音。森の奥側から大きな人影がやって来ている。あれは巨人……
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『何か用か?』
カクカミが巨人を睨みつける。
巨人は身長が十メートル程。対するカクカミの体高はそれよりも大きい。
見下ろす様にして巨人を威嚇する。
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立ち上がったメトはかなり大きい。
『お、おお……』
『何だ?言いたい事があるならハッキリと言え』
巨人はカクカミとメトを交互に見比べて震えている。
「カクカミ、メト、巨人が怯えています。下がりなさい」
『はい』
カクカミは頭を下げ、メトは立ち上がるのをやめる。
「驚かせてごめんなさい。私は泉の精のハルです。あなたはこの先の巨人の領域の住人ですね」
『い、いずみの……せい』
言葉は通じる様だ。
巨人が村にやって来たというのは嘘ではなかった様だ。
彼らは領域の狭間である森を破壊した事に怒っているのではないか?
或いは森の破壊に恐れているのか。
『泉の精霊、ハルさま……』
「森を破壊して申し訳ありませんでした」
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予想外の言葉が返ってきた。
「どういう事ですか?」
『俺たちの住処にとても強い竜がやって来て住む所を奪われてしまったんです』
彼らが自分達の領域から出て来たのには理由があった様だ。
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『その男、アインが言っていた。困った事があれば泉の精霊ハルさまを頼れと。それから人間と敵対してはならないと』
ここにもアインが来ていたのね。
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