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勇者

眷属化

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芽依は私を力強く抱きしめ返してくれた。

私は芽依に『本当の家族』と言ってしまったが、この子と私は出会った時から本当の家族だ。

しかし私はウルゼイドの学校に通っていた頃に、芽依に『いずれ人間の社会に帰す』と言っている。それを聞いて芽依はとても悲しんだ。
自分は本当の家族ではないと思ったかも知れない。

今の私の言葉を聞いて芽依は嬉しかったのだろう。

ただの言葉の綾なのに。

これまでもこれからもあなたは本当の家族なのよ。

「お母さん……」
「芽依、大丈夫?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「よかった……本当に、良かった……」

あと少しで芽依を失う所だった。

「泣かないで、お母さん」

芽依が頭を撫でてくれる。

「もう動ける?」
「うん。戦えるよ!」

芽依はもう大丈夫だ。
戦いはどうなっただろう?

カナエとマイの魔法で木々は薙ぎ倒され森に大きな広場が出来ている。

木から伸ばしていてツタは千切れてしまいフランシスの拘束は外れてしまった様だ。

森の奥からやって来ていた人間達はカナエの起こした竜巻で全滅。

フランシスは仲間と共に逃亡。森の奥側へと走っているのが見えた。

そこにオオトリが急降下して来て行手を阻む。ゲルハルトとルーウェンが攻撃を加えて惹きつける間にフランシス、カーミラ、ヨアンは逃げようとしている。

逃がさないわ。

「カクカミ、メト!」

呼び掛けに応じて二体が同時に現れる。

「あの者達を捕えて」
『畏まりました』
『はい!』

カクカミとメトが凄まじい勢いで走り出す。

フランシス達は森の中に逃れたがカクカミは木々を蹴散らして回り込むとフランシス達を前足で踏みつける様に牽制する。

メトは後方から木々を引き裂いてフランシス達を追い込んでいく。

オオトリを攻撃していた二人に対してセロ達が攻撃を加え始める。

オオトリという強大な敵と向き合いながらセロ、エレ、ミラの攻撃を受けて二人は降伏した。

フランシスはどうか?

ドンと衝撃音が聞こえてくる。逃げる際に銃を拾っていたか。
カクカミに向けて発砲した様だが彼には全く効かなかった。

『そんなものが効くとでも思ったか?』

カクカミは前足を振り下ろして攻撃している。

『殺さない様にするのは難しいね。人間は脆いから』

メトは木を薙ぎ払いながら三人を捕らえようとしている。

その時閃光が迸り辺りを白で覆い尽くす。次いで煙の様なものが木々の間から立ち昇る。

『小賢しい真似を』

どうやら目眩しの様だ。カーミラが魔法で起こしたのかフランシスが道具を持っていたのかは不明だが、いずれにせよ無駄な足掻きだ。

「私も行くよ」
「いいえ、フランシスはまだあの武器を持っているから近付かない方がいいわ」

先程は奇跡的に助かったが、あの威力では即死も有り得る。セロ達にも近付かない様に告げた。

メトが木を薙ぎ倒すと煙の中に人影が見えた。

私は水を圧縮させて撃ち放つ。
急所となる頭や上体に当てない様にする。

「うわぁっ!!?」

水弾は右肩に命中。人影はその場に倒れた。

『お見事ですハル様!』

メトが倒れた者を慎重に爪で服を引っ掛けて持ち上げる。
私が撃ち抜いたのはフランシスだった。

「後の二人は近くにいますか?」
『見当たりません』

カクカミは周囲を見渡して答える。

メトの顔に向かって火球が放たれる。

「殿下を放せ!」

木の陰から出て来たのはカーミラ。
目眩しを使って逃げ出した所をフランシスのみが捕まってしまい、救出のために戻ってきたのだろう。

彼女の放つ魔法程度ではメトに傷を負わせる事は出来ない。メトはフランシスを捕えていた逆の手でカーミラを叩く。
横に薙ぎ払われたカーミラは勢いよく飛ばされて木に叩きつけられ動かなくなった。

『しまった。殺しちゃったかな……』

リンが駆け寄って確認、回復魔法をかけているのでどうやら息はある様だ。

ヨアンの姿は確認できなかった。
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