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勇者
本性
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正面に待ち構えている人間の数は十人程度。
しかも木々の間が狭く連携して戦いにくい。
この狭さではカクカミやトコヤミの様な身体の大きな者は呼ぶ事ができない。
上空にはオオトリがいるだろうが、彼から私達を視認する事もできないだろう。
襲撃には絶好の場所という訳だ。
「殿下、この様な所に巨人はいないと思いますが」
私は近くを歩くマイとエレを三本指で突きながらセロ達の前に出て後ろ手で指三本のハンドサインを出す。
芽依と二人で決めたハンドサインだが、パーティを組むにあたり全員に伝えておいた。
「ここを抜けると開けた場所に出るんですよ」
そう言うフランシスだが、この先もまだ同じ様な森が続いている。
これでフランシスが仕組んだものだと判断しても良いだろう。
「殿下の今の話は嘘です。この先で人が大勢待ち構えていますね」
私はフランシスを拘束する為にツタを伸ばしたが、振り返ったフランシスを見て息を呑んだ。
彼の手には小型の銃、拳銃の様なものか握られていた。それを私に向けて今まさに発砲する所だった。
「お母さんに手を出すな!」
小剣を抜いた芽依が私の横をすり抜けてフランシスに斬りかかる。
「芽依!駄目よ!!」
私が声を発した時にはもう遅かった。
ドンという衝撃音と共に芽依がこちらに吹き飛ばされてきて仰向けに倒れる。
「芽依!」
「ちっ……」
舌打ちをしながら銃に弾を込めているフランシス。
ゲルハルトとルーウェンがこちらに向かってくる。ルーウェンをセロが、ゲルハルトをエレが引き受けてくれた。
私はフランシスの持つ銃をツタで打って落とす。そのまま無数のツタで身体の自由を奪う。
芽依の傷を見ると左の胸の辺りに弾が命中していた。鎧を身につけていたが役には立たない。貫通して血が溢れて出ていた。
「今治すわ!芽依、しっかりして!」
「う……おかあさん……ごめん……ね」
口から血を吐く芽依。
お願い……間に合って……!
《過剰分泌》をした泉の水を芽依の傷口に掛ける。
傷は塞がり始めている。
「芽依!すぐに治るから頑張って……!」
カーミラがこちらに向けて火球の魔法を放つ。マイが地面を隆起させて防いでくれた。
リンがカーミラに向かっていき、杖で攻撃を加えてこれ以上魔法を撃たせない様にしてくれた。
「そこっ……!」
ミラが矢を放った先にはヨアンが弓を構えて私を狙っていた。矢は木の幹に突き刺さっただけだったがヨアンへの牽制にはなった。
「お荷物だと思ってたのに、結構やるじゃん」
「確かに実力は劣りますが、その分修練は欠かしていませんからね」
ヨアンは木の陰から陰へと移動して攻撃の機会を伺っているが、ミラが牽制を続けてくれているので攻撃出来ないでいる。
奥から人間達がやってくる。戦闘の気配に気付いてこちらに来たようだ。
逃げ様にも今芽依を動かす事は出来ない。
私は皆を信じて治療に専念する。
「芽依……!」
水を掛けながら手を取ってみるが手には力が入っていない。
芽依は言葉を発しない。
目は虚になって……
「颯太……!カナエ……!」
「これは……!どうしたんだい?」
「メイ様!」
「颯太、助けて……芽依が死んじゃう……」
呼び掛けに応えて現れた二人に助けを求める。
「カナエは敵の排除を。マイと協力して周りの木を薙ぎ倒すんだ」
「分かりました!」
カナエは私達の上に飛び上がると襲い来る人間達の所に竜巻を起こして大木ごと薙ぎ払っていく。
マイも颯太の指示を聞いていて地面を波の様に畝らせて周りの木々を薙ぎ倒していた。
「母さん、このままだとメイは助からない」
「……どうすればいいの?」
「眷属化するしかない」
そうだ。芽依はまだ眷属化していない。
でもそうしたらアインの様に普通の人間ではなくなってしまう。
でも今は芽依に死んでほしくない。
この子を助けたい。
「芽依、私の事わかる?あなたを本当の家族にするわ。芽依、返事をして……!」
私は芽依を抱きしめると耳元で話しかける。
お願い、返事をして……!
「……嬉しい。これでみんなとずっと一緒にいられるんだね……」
芽依は掠れた声でそう言った。
しかも木々の間が狭く連携して戦いにくい。
この狭さではカクカミやトコヤミの様な身体の大きな者は呼ぶ事ができない。
上空にはオオトリがいるだろうが、彼から私達を視認する事もできないだろう。
襲撃には絶好の場所という訳だ。
「殿下、この様な所に巨人はいないと思いますが」
私は近くを歩くマイとエレを三本指で突きながらセロ達の前に出て後ろ手で指三本のハンドサインを出す。
芽依と二人で決めたハンドサインだが、パーティを組むにあたり全員に伝えておいた。
「ここを抜けると開けた場所に出るんですよ」
そう言うフランシスだが、この先もまだ同じ様な森が続いている。
これでフランシスが仕組んだものだと判断しても良いだろう。
「殿下の今の話は嘘です。この先で人が大勢待ち構えていますね」
私はフランシスを拘束する為にツタを伸ばしたが、振り返ったフランシスを見て息を呑んだ。
彼の手には小型の銃、拳銃の様なものか握られていた。それを私に向けて今まさに発砲する所だった。
「お母さんに手を出すな!」
小剣を抜いた芽依が私の横をすり抜けてフランシスに斬りかかる。
「芽依!駄目よ!!」
私が声を発した時にはもう遅かった。
ドンという衝撃音と共に芽依がこちらに吹き飛ばされてきて仰向けに倒れる。
「芽依!」
「ちっ……」
舌打ちをしながら銃に弾を込めているフランシス。
ゲルハルトとルーウェンがこちらに向かってくる。ルーウェンをセロが、ゲルハルトをエレが引き受けてくれた。
私はフランシスの持つ銃をツタで打って落とす。そのまま無数のツタで身体の自由を奪う。
芽依の傷を見ると左の胸の辺りに弾が命中していた。鎧を身につけていたが役には立たない。貫通して血が溢れて出ていた。
「今治すわ!芽依、しっかりして!」
「う……おかあさん……ごめん……ね」
口から血を吐く芽依。
お願い……間に合って……!
《過剰分泌》をした泉の水を芽依の傷口に掛ける。
傷は塞がり始めている。
「芽依!すぐに治るから頑張って……!」
カーミラがこちらに向けて火球の魔法を放つ。マイが地面を隆起させて防いでくれた。
リンがカーミラに向かっていき、杖で攻撃を加えてこれ以上魔法を撃たせない様にしてくれた。
「そこっ……!」
ミラが矢を放った先にはヨアンが弓を構えて私を狙っていた。矢は木の幹に突き刺さっただけだったがヨアンへの牽制にはなった。
「お荷物だと思ってたのに、結構やるじゃん」
「確かに実力は劣りますが、その分修練は欠かしていませんからね」
ヨアンは木の陰から陰へと移動して攻撃の機会を伺っているが、ミラが牽制を続けてくれているので攻撃出来ないでいる。
奥から人間達がやってくる。戦闘の気配に気付いてこちらに来たようだ。
逃げ様にも今芽依を動かす事は出来ない。
私は皆を信じて治療に専念する。
「芽依……!」
水を掛けながら手を取ってみるが手には力が入っていない。
芽依は言葉を発しない。
目は虚になって……
「颯太……!カナエ……!」
「これは……!どうしたんだい?」
「メイ様!」
「颯太、助けて……芽依が死んじゃう……」
呼び掛けに応えて現れた二人に助けを求める。
「カナエは敵の排除を。マイと協力して周りの木を薙ぎ倒すんだ」
「分かりました!」
カナエは私達の上に飛び上がると襲い来る人間達の所に竜巻を起こして大木ごと薙ぎ払っていく。
マイも颯太の指示を聞いていて地面を波の様に畝らせて周りの木々を薙ぎ倒していた。
「母さん、このままだとメイは助からない」
「……どうすればいいの?」
「眷属化するしかない」
そうだ。芽依はまだ眷属化していない。
でもそうしたらアインの様に普通の人間ではなくなってしまう。
でも今は芽依に死んでほしくない。
この子を助けたい。
「芽依、私の事わかる?あなたを本当の家族にするわ。芽依、返事をして……!」
私は芽依を抱きしめると耳元で話しかける。
お願い、返事をして……!
「……嬉しい。これでみんなとずっと一緒にいられるんだね……」
芽依は掠れた声でそう言った。
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