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勇者
混沌
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次の日、私達は村を守る様に布陣して魔物がこちらにやってくるか待ち構えていた。
半日経っても何も起こることはなく、交代で昼食をとる事に。
「まあ、ここまでは予定通りじゃないか。今回俺達はほとんど魔物と戦わなくて済む計画だからな」
食事のタイミングが同じになった冒険者が言っている。
まだ掃討戦が始まって半日、東側で何かあってもこちらに伝令が来るのは早くても一日後だ。
食事をしながら《遠隔視野》を使って東の森の入り口を見てみる。
騎士達は隊列を組んで森へと入っている。立派な金属鎧に剣と盾。そんな重装備で森で動けるのかしら?
既に森に入っている部隊は魔物と戦闘も開始されていた。
相手はゴブリンで騎士よりも数が少ない。我先にと隊列を乱して斬り込んでいた。
東側には魔物がいるのね。
しかしこれは戦闘というよりは虐殺だ。
「この森の魔物は人を襲うのかしら?」
「襲うから討伐するんじゃないか?まあ、見つけたら殺しておいた方がいいだろうけど」
言葉が通じない、こちらに危害を加えるかもしれない相手を放っておく事も出来ないか。
しかし騎士が達の嬉々たる姿たるや……
「お母さん大丈夫?」
「ええ、少し気分が悪くなっただけよ」
隣にいた芽依が心配してくれる。
私は人と暮らしている時間よりも長くゴブリン達と暮らしていたからかもしれないが、ゴブリンがなぶり殺しに遭っているのは見るに堪えない。
命乞いをする子供ゴブリンの頭に騎士が剣を振り下ろす瞬間を見てしまった。
「ハル様、顔色が良くありません」
「ええ」
エレも食べるのやめて私を気遣っている。
魔物なら何をしても良いと思っているのかしらね。
ゴブリンを殲滅した騎士達は更に奥へと進んでいく。次に遭遇したのはコボルトだが様子がおかしい。この群れはゾンビ化している。
騎士達は特に気にせずにゾンビコボルトを斬り捨てていく。
ゾンビになった事で痛みや恐怖を感じる事はないが動きが鈍くなっている。
これなら多少数が多くても捌き切れるだろう。実際騎士達は数が多くても、ものともせずに突き進んでいた。
彼らはあれだけの数のゾンビの発生に疑問に思わないのだろうか?
そしてそれは現れた。
木々を縫う様にして人の腕程の太さの触手が伸びて来て騎士の一人の胴体を鎧ごと貫いた。
宙吊りになって血を溢れさせながら痙攣している騎士。その異様な光景に周りにいた騎士達は動きを止めていた。
駄目よ。早く逃げなさい。
直後無数の触手が次々と現れて立ち尽くしていた騎士達を突き刺していく。
異変に気付いた騎士達が集まって来て仲間を突き刺している触手を斬って助け出す。
ゆっくりと立ち上がった騎士は自分の剣を拾い、助けてくれた騎士に斬りかかる。
突き刺された騎士は既にゾンビになっていた。
こうなると掃討戦どころではない。
次々と触手に突き刺されてゾンビ騎士が増えていき、同士討ちの様な状況になってきた。
騎士達はようやく危険性を理解したのか号令をかけて後退を始める。
しかし既に半数近くがゾンビになっていて逃げきれずに包囲されてしまう隊も出ていた。
ゾンビ騎士と戦っていると足元に触手が絡み付き、あっという間にゾンビにされてしまう騎士達。
一帯にゾンビしか居なくなった頃、木々を分ける様にして現れたのは巨大な狼。
毛は夜闇の様に黒く体高は森の木と同じくらいか、背中の辺りに無数の触手が蠢いている。目に眼球はなく真っ赤で、開いたままの口には鋭い牙が覗いていた。
「例の魔物が騎士達の所に現れたわ」
食事もそこそこにジェイドに報告する。
休憩中の他の冒険者達も集まってくる。
「状況は?」
私は見た事を全て話した。
「マズいな。このままだと森が騎士のゾンビだらけになるぞ」
「持ち場から離れるのは村が危険だ」
「そもそも俺達が行ったところでゾンビの仲間入りをするだけだぜ」
話し合う冒険者達。
「セロ達のパーティだけ東側の救援に向かわせようと思う」
私もそれに賛成だ。
半日経っても何も起こることはなく、交代で昼食をとる事に。
「まあ、ここまでは予定通りじゃないか。今回俺達はほとんど魔物と戦わなくて済む計画だからな」
食事のタイミングが同じになった冒険者が言っている。
まだ掃討戦が始まって半日、東側で何かあってもこちらに伝令が来るのは早くても一日後だ。
食事をしながら《遠隔視野》を使って東の森の入り口を見てみる。
騎士達は隊列を組んで森へと入っている。立派な金属鎧に剣と盾。そんな重装備で森で動けるのかしら?
既に森に入っている部隊は魔物と戦闘も開始されていた。
相手はゴブリンで騎士よりも数が少ない。我先にと隊列を乱して斬り込んでいた。
東側には魔物がいるのね。
しかしこれは戦闘というよりは虐殺だ。
「この森の魔物は人を襲うのかしら?」
「襲うから討伐するんじゃないか?まあ、見つけたら殺しておいた方がいいだろうけど」
言葉が通じない、こちらに危害を加えるかもしれない相手を放っておく事も出来ないか。
しかし騎士が達の嬉々たる姿たるや……
「お母さん大丈夫?」
「ええ、少し気分が悪くなっただけよ」
隣にいた芽依が心配してくれる。
私は人と暮らしている時間よりも長くゴブリン達と暮らしていたからかもしれないが、ゴブリンがなぶり殺しに遭っているのは見るに堪えない。
命乞いをする子供ゴブリンの頭に騎士が剣を振り下ろす瞬間を見てしまった。
「ハル様、顔色が良くありません」
「ええ」
エレも食べるのやめて私を気遣っている。
魔物なら何をしても良いと思っているのかしらね。
ゴブリンを殲滅した騎士達は更に奥へと進んでいく。次に遭遇したのはコボルトだが様子がおかしい。この群れはゾンビ化している。
騎士達は特に気にせずにゾンビコボルトを斬り捨てていく。
ゾンビになった事で痛みや恐怖を感じる事はないが動きが鈍くなっている。
これなら多少数が多くても捌き切れるだろう。実際騎士達は数が多くても、ものともせずに突き進んでいた。
彼らはあれだけの数のゾンビの発生に疑問に思わないのだろうか?
そしてそれは現れた。
木々を縫う様にして人の腕程の太さの触手が伸びて来て騎士の一人の胴体を鎧ごと貫いた。
宙吊りになって血を溢れさせながら痙攣している騎士。その異様な光景に周りにいた騎士達は動きを止めていた。
駄目よ。早く逃げなさい。
直後無数の触手が次々と現れて立ち尽くしていた騎士達を突き刺していく。
異変に気付いた騎士達が集まって来て仲間を突き刺している触手を斬って助け出す。
ゆっくりと立ち上がった騎士は自分の剣を拾い、助けてくれた騎士に斬りかかる。
突き刺された騎士は既にゾンビになっていた。
こうなると掃討戦どころではない。
次々と触手に突き刺されてゾンビ騎士が増えていき、同士討ちの様な状況になってきた。
騎士達はようやく危険性を理解したのか号令をかけて後退を始める。
しかし既に半数近くがゾンビになっていて逃げきれずに包囲されてしまう隊も出ていた。
ゾンビ騎士と戦っていると足元に触手が絡み付き、あっという間にゾンビにされてしまう騎士達。
一帯にゾンビしか居なくなった頃、木々を分ける様にして現れたのは巨大な狼。
毛は夜闇の様に黒く体高は森の木と同じくらいか、背中の辺りに無数の触手が蠢いている。目に眼球はなく真っ赤で、開いたままの口には鋭い牙が覗いていた。
「例の魔物が騎士達の所に現れたわ」
食事もそこそこにジェイドに報告する。
休憩中の他の冒険者達も集まってくる。
「状況は?」
私は見た事を全て話した。
「マズいな。このままだと森が騎士のゾンビだらけになるぞ」
「持ち場から離れるのは村が危険だ」
「そもそも俺達が行ったところでゾンビの仲間入りをするだけだぜ」
話し合う冒険者達。
「セロ達のパーティだけ東側の救援に向かわせようと思う」
私もそれに賛成だ。
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