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勇者
森の調査
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食事をとっていたらオオトリが降りてきて軽く騒ぎになった。
「ああ、そいつはハルの眷属だから大丈夫だぞ」
「なんだ、ハルの使い魔か」
「じゃあ大丈夫だな」
ジェイドが皆に告げると全員安堵して食事に戻る。
「どうしたのオオトリ?」
『少し気になる事がありまして。森が静か過ぎるのです』
「どういう事?」
『普通の森よりも生物が少ないのです。魔物も獣も森から逃げてしまったのではないでしょうか?』
「ありがとう、調べてみるわ」
オオトリの言う事が気になる。
「村の人に聞いてみようよ」
「そうね。ご飯を食べ終わったら村に行ってみましょう」
芽依の提案に全員賛成の様だ。
ジェイドは全体の指揮を執らなくてはならないため私達だけで村長のアードの所へ聞きに行った。
「森の様子ですか。狩猟についてはここの所全然獲物が獲れないそうです」
「他には何か気付いた事はありますか?」
「山の地盤が緩くなった気がします」
「というと?」
「木が傾いていたりいつも通る場所が不自然に窪んでいたりしているのです。水が染み出している所もありました」
それは魔物や獣が少ない事と関係があるだろうか?
森を歩いて注意深く調べてみる必要があるだろう。
「そういえば狩りに出た者の中に巨大な獣を見たと言う者がいましたな」
この辺りでは見た事のない巨大な狼で、人間を一飲みに出来そうな程大きな口をしていたらしい。
「カクカミやメトよりも大きいかな?」
「流石にそこまで大きな個体ではないでしょう」
あの子達はすでに普通の動物ではないのだから。
情報を得た私達は森の見回りをしながら不自然な地形を探してみる。
地面が窪んだ跡を数カ所見つけた。
地表の植物はそのままで中の土が無くなったかの様に緩やかに陥没している。
それから腐食した様な嫌な匂いも感じられた。
「ハル様、この部分の土は死んでいます」
「土が死んでいる?」
マイが地に両手を付きながら告げてくる。
「大地のエネルギーを奪われてます」
「奪われているという事は何者かが故意にやったという事で良いのね?」
「はいです。自然に起きる現象ではありません」
大地の女神が言うのだから間違いないだろう。
やはりこの森では何かが起きている。
森に住む者に聞いてみるのが一番早いのだが、都合良く見つける事は出来なかった。
戻ってジェイドに報告する。
「報告ご苦労さん。ハル達はどうしたい?」
「一度深部まで調査に出た方が良いかと思います。動物にでも会えればこの森で起こっている事を聞く事が出来るので」
「セロの装備で動物と会話か……いや、ハル達も話せるんだったな。騎士団が森に入るのは明後日の朝からだ。明日一日なら調査に出てもらっても構わないぞ。俺はついて行ってやれないが」
ジェイドの様な冒険者が一緒にいてくれれば心強いが、私達だけでも問題はない。
「一日あれば何か分かると思います。やらせてください」
「分かった。セロ達のパーティは明日の朝から森の内部の調査をしてくれ」
私達は翌日から森の奥へ向かう事になった。
次の日の朝、食事を終えると装備を整えて森へと入る。
私達のいる村は、この森林地帯南西部に位置している。私達はより森の深い北東方向に調査に出る事にした。
半日ほど歩いたが、オオトリの言った通り森は異常な程静かだ。鳥の囀りも聞こえてこない。
時折踏み締める地面がブヨブヨと柔らかくなっていて不快で、そういった場所は腐臭が強かった。
「こんな局地的に大地のエネルギーを吸い上げる事なんて出来るの?」
「やり方によっては出来るです。ハル様の吸収能力も触った所からエネルギーを吸い取っている様なので、似た様な事が出来るはずです」
私の《栄養吸収》の場合は何もかもを吸い上げて塵になる等して腐臭は残らない。となるとこの臭いは何なのだろうか?
「止まってください。何か居ます」
先頭を歩いていたミラが全員を止めた。
「ああ、そいつはハルの眷属だから大丈夫だぞ」
「なんだ、ハルの使い魔か」
「じゃあ大丈夫だな」
ジェイドが皆に告げると全員安堵して食事に戻る。
「どうしたのオオトリ?」
『少し気になる事がありまして。森が静か過ぎるのです』
「どういう事?」
『普通の森よりも生物が少ないのです。魔物も獣も森から逃げてしまったのではないでしょうか?』
「ありがとう、調べてみるわ」
オオトリの言う事が気になる。
「村の人に聞いてみようよ」
「そうね。ご飯を食べ終わったら村に行ってみましょう」
芽依の提案に全員賛成の様だ。
ジェイドは全体の指揮を執らなくてはならないため私達だけで村長のアードの所へ聞きに行った。
「森の様子ですか。狩猟についてはここの所全然獲物が獲れないそうです」
「他には何か気付いた事はありますか?」
「山の地盤が緩くなった気がします」
「というと?」
「木が傾いていたりいつも通る場所が不自然に窪んでいたりしているのです。水が染み出している所もありました」
それは魔物や獣が少ない事と関係があるだろうか?
森を歩いて注意深く調べてみる必要があるだろう。
「そういえば狩りに出た者の中に巨大な獣を見たと言う者がいましたな」
この辺りでは見た事のない巨大な狼で、人間を一飲みに出来そうな程大きな口をしていたらしい。
「カクカミやメトよりも大きいかな?」
「流石にそこまで大きな個体ではないでしょう」
あの子達はすでに普通の動物ではないのだから。
情報を得た私達は森の見回りをしながら不自然な地形を探してみる。
地面が窪んだ跡を数カ所見つけた。
地表の植物はそのままで中の土が無くなったかの様に緩やかに陥没している。
それから腐食した様な嫌な匂いも感じられた。
「ハル様、この部分の土は死んでいます」
「土が死んでいる?」
マイが地に両手を付きながら告げてくる。
「大地のエネルギーを奪われてます」
「奪われているという事は何者かが故意にやったという事で良いのね?」
「はいです。自然に起きる現象ではありません」
大地の女神が言うのだから間違いないだろう。
やはりこの森では何かが起きている。
森に住む者に聞いてみるのが一番早いのだが、都合良く見つける事は出来なかった。
戻ってジェイドに報告する。
「報告ご苦労さん。ハル達はどうしたい?」
「一度深部まで調査に出た方が良いかと思います。動物にでも会えればこの森で起こっている事を聞く事が出来るので」
「セロの装備で動物と会話か……いや、ハル達も話せるんだったな。騎士団が森に入るのは明後日の朝からだ。明日一日なら調査に出てもらっても構わないぞ。俺はついて行ってやれないが」
ジェイドの様な冒険者が一緒にいてくれれば心強いが、私達だけでも問題はない。
「一日あれば何か分かると思います。やらせてください」
「分かった。セロ達のパーティは明日の朝から森の内部の調査をしてくれ」
私達は翌日から森の奥へ向かう事になった。
次の日の朝、食事を終えると装備を整えて森へと入る。
私達のいる村は、この森林地帯南西部に位置している。私達はより森の深い北東方向に調査に出る事にした。
半日ほど歩いたが、オオトリの言った通り森は異常な程静かだ。鳥の囀りも聞こえてこない。
時折踏み締める地面がブヨブヨと柔らかくなっていて不快で、そういった場所は腐臭が強かった。
「こんな局地的に大地のエネルギーを吸い上げる事なんて出来るの?」
「やり方によっては出来るです。ハル様の吸収能力も触った所からエネルギーを吸い取っている様なので、似た様な事が出来るはずです」
私の《栄養吸収》の場合は何もかもを吸い上げて塵になる等して腐臭は残らない。となるとこの臭いは何なのだろうか?
「止まってください。何か居ます」
先頭を歩いていたミラが全員を止めた。
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