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勇者
元通り
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「俺はジェレル、この隊の副隊長を務めている。我が隊の隊長が働いた非礼を許してほしい」
「私を許すの?」
「無論。むしろあれを処分してくれて感謝しているくらいだ」
そう言ってニヤリと笑うジェレル。
なるほどそう言う事か。
ジェレルはワルドが邪魔だったと。
まあそんな事はどうでも良い。
「村のものや私達に危害を加える様なら次はあなたが消える事になるわ」
「俺はそんな事はしないぜ」
「では聞くけど、あなた達はなぜこちら側にいるの?」
「ワルドの野郎のせいだ。お前らにもこの村の者にも関係のない話だが、王都の権力闘争の一端だな」
左遷みたいなものかしらね。
確かに私達には関係のない話だわ。
「こっちは私達の持ち場だと聞いているけど、騎士隊はここで何をするの?」
「何もさせない為にここに配置されたんだよ。俺達はお前らの監督だ。とはいえ俺らに口出しされても不快だろう。魔物が来たら撃退すればいい。俺達は特に口出しはせんよ」
ここにいる理由は特に無いわけね。
「あと一つ、あなた達に言っておきます」
「なんだ?」
「今すぐ接収した家を持ち主に返しなさい。あなた達は何もしないのだから野宿が妥当だわ」
周りの騎士達が騒つく。
「動くなよ。俺はまだ死にたくないからな。了解した。しかし我らは水と食料もあまり持ち合わせがない」
「村の人から買いなさい。お金も無いなら狩りでもすればいい」
「確かにその通りだ。全員北の村外れに移動して野営の準備だ。精霊殿の気が変わらぬうちにさっさと動け!」
ジェレルが怒鳴ると騎士達は慌てて動き出す。
「これでよろしいかな?」
「ええ。それから、私はあなた方も許してはいません。これ以上何かしたら……」
「分かっている。脅さなくても俺達は村人やお前ら冒険者に一切関与しない」
そう言うとジェレルは荷物を馬に積み込む騎士達に指示を出し始める。
「分かってもらえて良かったね、お母さん」
「そうね」
しかしああいう世渡りの上手い男こそ気をつけなければならない。目を離すと寝首を掻きに来そうなタイプだ。
まあ、私には関係のない話だろうけど。
ナタリーをアード達のいる家に届ける。
「お父さん!お母さん!」
「ナタリー!無事で良かった……!」
娘の無事を喜びリックとエルゼはナタリーと抱き合っていた。
「本当にありがとうございました。何とお礼を言ったら良いか……」
アードは涙ながらに私達に言ってくる。
「いえ、あんな行為を許すわけにはいかなかったので。それから家も取り戻しておきました。騎士達が村の者に危害を加えることもありません。もし何かあったらすぐに私に知らせてください」
隊長を殺害した事は伏せておいた。私が離さなくてもその内ナタリーが話すだろう。
東の宿営地に戻るとジェイド達がテントや馬車の幌を使って建物を補修していた。
「無事だったみたいだな」
「騎士達は北の外れで野営してもらう事になりました」
「そうか……また随分無茶をしたんじゃないのか?」
「いいえ、元に戻しただけですよ」
ジェイドは呆れた様に溜め息を吐いていたが「無事で良かった」と言ってくれた。
壊れた家の補修はほとんど終わっていて、どちらも寝る為のスペースとして使う事になっていた。
炊事場は仮設で井戸の側に作られていて、既に食事の準備が始まっている。
「今は一パーティを偵察に出している。セロ達は自分の荷物を家の隣に建てたテントに入れて、食事の準備を手伝ってくれ」
「分かりました」
到着して早々に揉め事になりはしたが、それ以外は順調の様だ。
明日からは森の地形把握に魔物の迎撃準備にと大忙しになるだろう。
今回は魔物の数が少ないから楽な仕事だと言っていたが、そうはならない気がする。
強い風に揺れる森の木々を見ながら胸騒ぎを感じていた。
「私を許すの?」
「無論。むしろあれを処分してくれて感謝しているくらいだ」
そう言ってニヤリと笑うジェレル。
なるほどそう言う事か。
ジェレルはワルドが邪魔だったと。
まあそんな事はどうでも良い。
「村のものや私達に危害を加える様なら次はあなたが消える事になるわ」
「俺はそんな事はしないぜ」
「では聞くけど、あなた達はなぜこちら側にいるの?」
「ワルドの野郎のせいだ。お前らにもこの村の者にも関係のない話だが、王都の権力闘争の一端だな」
左遷みたいなものかしらね。
確かに私達には関係のない話だわ。
「こっちは私達の持ち場だと聞いているけど、騎士隊はここで何をするの?」
「何もさせない為にここに配置されたんだよ。俺達はお前らの監督だ。とはいえ俺らに口出しされても不快だろう。魔物が来たら撃退すればいい。俺達は特に口出しはせんよ」
ここにいる理由は特に無いわけね。
「あと一つ、あなた達に言っておきます」
「なんだ?」
「今すぐ接収した家を持ち主に返しなさい。あなた達は何もしないのだから野宿が妥当だわ」
周りの騎士達が騒つく。
「動くなよ。俺はまだ死にたくないからな。了解した。しかし我らは水と食料もあまり持ち合わせがない」
「村の人から買いなさい。お金も無いなら狩りでもすればいい」
「確かにその通りだ。全員北の村外れに移動して野営の準備だ。精霊殿の気が変わらぬうちにさっさと動け!」
ジェレルが怒鳴ると騎士達は慌てて動き出す。
「これでよろしいかな?」
「ええ。それから、私はあなた方も許してはいません。これ以上何かしたら……」
「分かっている。脅さなくても俺達は村人やお前ら冒険者に一切関与しない」
そう言うとジェレルは荷物を馬に積み込む騎士達に指示を出し始める。
「分かってもらえて良かったね、お母さん」
「そうね」
しかしああいう世渡りの上手い男こそ気をつけなければならない。目を離すと寝首を掻きに来そうなタイプだ。
まあ、私には関係のない話だろうけど。
ナタリーをアード達のいる家に届ける。
「お父さん!お母さん!」
「ナタリー!無事で良かった……!」
娘の無事を喜びリックとエルゼはナタリーと抱き合っていた。
「本当にありがとうございました。何とお礼を言ったら良いか……」
アードは涙ながらに私達に言ってくる。
「いえ、あんな行為を許すわけにはいかなかったので。それから家も取り戻しておきました。騎士達が村の者に危害を加えることもありません。もし何かあったらすぐに私に知らせてください」
隊長を殺害した事は伏せておいた。私が離さなくてもその内ナタリーが話すだろう。
東の宿営地に戻るとジェイド達がテントや馬車の幌を使って建物を補修していた。
「無事だったみたいだな」
「騎士達は北の外れで野営してもらう事になりました」
「そうか……また随分無茶をしたんじゃないのか?」
「いいえ、元に戻しただけですよ」
ジェイドは呆れた様に溜め息を吐いていたが「無事で良かった」と言ってくれた。
壊れた家の補修はほとんど終わっていて、どちらも寝る為のスペースとして使う事になっていた。
炊事場は仮設で井戸の側に作られていて、既に食事の準備が始まっている。
「今は一パーティを偵察に出している。セロ達は自分の荷物を家の隣に建てたテントに入れて、食事の準備を手伝ってくれ」
「分かりました」
到着して早々に揉め事になりはしたが、それ以外は順調の様だ。
明日からは森の地形把握に魔物の迎撃準備にと大忙しになるだろう。
今回は魔物の数が少ないから楽な仕事だと言っていたが、そうはならない気がする。
強い風に揺れる森の木々を見ながら胸騒ぎを感じていた。
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