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勇者

成敗

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ナタリーをなだめながら部屋から出て、リンとミラに彼女を預ける。
部屋の中、ベッドの向こう側で隊長は完全に伸びていた。

「あの人どうするの?」
「彼の出方次第ね」

芽依は腰の小剣に手を掛けて聞いてくる。この子が手を下す様な事はさせられない。

芽依には部屋の待つ様に言って私一人で隊長に近付く。
泉の水を少量頭に振り掛けると彼は飛び起きた。

「貴様……俺をライアッド王国の騎士と知っての狼藉か!?」
「お黙りなさい!幼気いたいけな少女に乱暴を働いて何が騎士ですか!恥を知りなさい!」
「何を……!小娘の分際で!」

武器を抜きそうな剣幕だが、彼は肌着を着ているだけの状態だ。
どうやら私を泉の精霊のハルとは認識していない様だ。

「……まあいい。お前が相手をしろ」

そう言いながらにじり寄ってくる隊長。

仕方がないわね。
後ろ手で扉を閉める。

「お母さん!」
「大丈夫。すぐに済むから待っていて」

入って来ようとする芽依を制して扉を閉める。

「その身体であんな大きな娘がいるのか?」
「あの子は私の娘だけど私が産んだのではないわ」
「それを聞いて安心したぜ。早く服を抜いでベッドに横になれ」

そう言いながら自身も肌着を脱ぎ始めた。

「ナタリーも私も女性としては成熟していないわ。あなたはそういうのが好みなの?」
「小娘が泣き叫びながら女になるのを見るのが堪らなく好きなんだよ。特にお前みたいな気丈な娘は大好物だ。死ぬほど痛いから良い声で鳴いてみせろよ?」

救いようのないクズだ。
こんな男が部隊長を務めていて、これまでに何人もの女性に同じ事を繰り返してきたと思うと吐き気がする。

「どうした?脱がして欲しいのか?」

鼻息を荒くして手を伸ばしてくる。
私はその手を取ると《栄養吸収》を行う。
手加減なしで。

「うっ!ああああぁぁぁっっ!!?」

手を振り解こうと暴れるが今更彼が抵抗しても子供の力ほども無い。

隊長はあっという間に全身が痩せ細り、灰色になって粉々に砕け散った。
その場には先程まで隊長が身に付けていた肌着のみが床に落ちていた。

扉を開けると心配そうにしていた芽依が聞いてくる。

「あの男はどうなったの?」
「消えてもらったわ」

部屋の中を覗いて隊長がいない事を確認した芽依は私の身体に触れながら聞いてくる。

「お母さん大丈夫?何もされてない?」
「ええ、大丈夫よ」

しかし隊長は私が消してしまった。
他の騎士達は何と言うだろうか?
いや、それはこの際どうでもいい。
あの騎士隊長を野放しにしておく事こそ危険だ。

騎士達と戦う事になっても仕方がない。
まずは事実を話し様子を見るとしよう。

隊長の肌着を持って外に出る。
念の為仲間達には騎士達と戦闘になる可能性がある事を告げておく。
セロ達を巻き込んでしまって申し訳なく思うが、私は決して悪い事をしたとは思っていない。

リンとミラはナタリーを庇い、セロも三人の前に立つ様にしてゆっくりと家から出てきた。

「ワルド隊長はどうした?」

黒髪髭面の大柄の中年騎士が聞いてくる。鎧こそ着ていないが手には剣を持っていた。

「私が殺しました」

肌着を目の前に投げ捨てて言う。

「殺し……自分が何をしたのか分かっているのか?」
「害獣駆除よ。村を荒らす害獣を一匹消しただけ」

他の騎士達も剣を手に集まってくる。
芽依とエレが私の横に並ぶ。マイもセロの横に立っていつでも魔法を発動できる態勢だ。

戦闘は避けられないわね。

「はっはっはっ!!そうか!害獣駆除か!結構。それで死体はどうした?」
「跡形もないわ」
「そうかそうか!実に結構!それならば行方不明でも魔物に食われたとでも、幾らでも言い訳が出来る。よくやってくれた!全員武器は抜くなよ。泉の精霊殿と戦って勝てるわけがないからな!」

鞘に収めたままの剣を地面に突き立てて豪快に笑う。

予想外の反応で驚いたが、同時に不快感も覚えた。
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