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勇者

訓練

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ジェイドに夕飯をご馳走になった次の日、私達は午前中は訓練場で戦闘訓練をする事にした。

ジェイドも付き合ってくれると言うので、朝から来てもらっている。
準備運動を終えたら早速芽依がジェイドなら模擬戦を申し込んで始める。
手にするのは訓練用の木剣。ジェイドは短木剣を一本、芽依は小木剣を二刀流だ。

ジェイドは終始芽依に押されっぱなしだったが、戦闘が得意ではないという割には良い動きをしていた。

「分かっちゃいたけどメイちゃん強えな。技のキレも重たさも今まで戦った剣士の誰よりもある。その上あれだけ動いて息一つ切らしていないんだからな。参ったぜ」
「こう見えてもウルゼイドの剣術大会で準優勝だったからね」
「通りで強い訳だ」

次はセロとエレが模擬戦を始める。
セロは長木剣と盾。エレは大木剣一本だ。

エレは得物が大きく、大振りな攻撃が多いので隙が大きい。
セロはエレの攻撃を上手く空振らせて攻撃を加える。

「うぅっ……まだまだ!」

有効打を受けて悔しそうにしているエレだが、すぐに攻撃に出る。
それを冷静に受け流して後退するセロ。

セロの動きが随分と良くなっている。
緩急を付けた攻撃にエレは翻弄されて自身が繰り出す攻撃の数が減っていく。

「う~!捕まえられない~!」

エレの低い軌道のフルスイングをジャンプして躱すセロ。次の瞬間エレは大木剣を左手一本に持ち替えて右手でセロを捕まえた。

胸ぐらを掴まれる様な状態になり、抵抗するも地面に叩きつけられて得物を取り落とすセロ。

「やっと捕まえました!」
「流石エレさんだ。あの体勢から掴みにこれるなんて思わなかったよ」

エレの伸ばした手を取り立ち上がるセロ。

「もう一本!」
「はい!」

元気よく声を出して打ち合いを再開する二人。

ミラは弓を使って的当てを繰り返している。彼女の弓の精度もかなり上がっていた。味方の至近距離への援護射撃も出来るようになったので頼りになる。

私とリンも杖や素手での近接戦闘を練習している。

私達二人は基本的には後衛なので、近接戦闘を強いられた時点でパーティはかなり厳しい状況になっている事だろう。
だからこそ私達は慌てずに近接戦闘で敵を捌いて味方を援護しなければならない。

リンは杖を使った立ち回りが上手い。
私も《栄養吸収》のみに頼り切った戦術ではなく、体術を使って応戦する。

私は体術の訓練を受けていないので芽依の体捌きを見様見真似しているだけだ。
リンの杖の攻撃を捌く事は難しい。

「お母さんも武器を使ってみたらどう?」
「確かに素手よりは良いかもしれないわね。何を持ったらいいのかしら」

普段は使わないから携帯性の良いものの方が良い。
魔力で生成するのはどうだろうか?

「取り回しが簡単なのは短剣だけど、お母さんなら魔法で作った槍とかどうかな?」

芽依のアドバイスで地面から石の槍を取り出して持ってみる。

「少し重いわね」
「石だからね。木で作った方が取り回しが簡単だよ」

何もない地面から直線の木を出すのには時間がかかる。

「鞭とかどう?よく木の根を出しているじゃない」

リンのアドバイスを聞いて地面から木の根を出して手に持ってみる。

振り回してみるが意外と力が必要だ。

引き抜いた根だが、念じれば動かす事に気付く。
これなら力を使わずに取り回す事が出来る。

「いいんじゃない?」
「うん。サマになってるよ!」

芽依とリンは褒めてくれるが、これなら地面から出して操るのと変わらないのではないのだろうか?

「手に持つ事で威嚇になるからいいんだよ」

確かに私は見た目が子供だから、敵と対峙した時に素手だと手頃な相手だと侮られてしまう。

手に鞭を持っていたくらいでその印象を覆す事は出来ないだろうけど、何も持たないよりはマシだろう。

逆に相手の油断を誘う事もできるから悪い事ばかりではないのだが。

「おーやってるな!」

入り口で声をかけて来たのはバルドルだ。

「こんにちは」
「おう。お前らに一つやってもらい事があるんだが、聞いて貰えるか?」

仕事の依頼だろうか?
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