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勇者

後処理

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カクカミ、メト、ヤト、ギョクリュウを送還して、私と颯太とカナエはトコヤミの背に乗ってセイランに帰る事にした。

「母さん、まだやる事があるのかい?」
「ええ。これも個人的な事なのだけど」

抗議する相手がもう一人いる。
冒険者ギルドのマスターのドルフだ。

彼はリフィナとバルドルが処刑されるかも知れない中で二人を庇いもしなかった。ギルドのトップなのだから部下を守るくらいの事はして欲しかった。

流石に眷属を引き連れて抗議に行くつもりはない。
颯太とカナエを送還しなかったのは芽依に会わせてあげたかっただけだ。
他の者とも会わせてやりたいが彼らは大き過ぎる。近いうちに一度泉に帰るのも良いかもしれない。

あれこれ考えているうちにセイランに到着した。

街の外で降ろしてもらい、トコヤミに礼を言って送還する。

まずはドルフに会う為に冒険者ギルドに向かう。

ギルドホールには冒険者達が集まっていた。

「ハルが帰ってきたぞ!」

一人が声を上げると一斉にこちらを向いて歓声が上がる。

「おかえり」や「お疲れ様」などそれぞれが声を掛けてくれた。

「お母さん!」
「芽依、ただいま。国王陛下に直接抗議してきたわ。エリオット殿下も反省すると言っていたからもう大丈夫よ」

それを聞いた皆が更に歓声を上げる。

エリオットの勝手な振る舞いに全員が怒っていた。

「ハルを奴隷みたいに扱いやがって……!」
「変な事されなかった?」
「あの野郎、王子じゃなかったら俺らで砂にしてやるところだぜ!」

どうやら私の扱いに怒ってくれていた様だ。

「皆さん、ご心配をお掛けしました。一時は従属の首輪を着けたりしていましたが、今はこの通り自由です」
「従属の首輪を引きちぎったってホント?」
「はい。魔力を注いで暴走させただけですけどね」
「普通そんな事は出来ないんだよなあ」

笑いながら教えてくれた。

「ところでギルドマスターはどちらに?」
「マスターなら今回のエリオット殿下の件の責任をとって辞職するとか言っていたぞ」

冒険者達が言うにはバルドルがドルフに『あの首輪みたいにアンタの両手両足を引き千切りに来るぞ』と脅かしていたらしい。それを真に受けたドルフはリフィナを正式な次期マスターに任命して荷物をまとめて逃げ出したそうだ。

バルドルは私を何だと思っているのかしら?

私は一言抗議したかっただけなのだけど。

冒険者達はドルフについても印象が悪かったらしい。
彼は元々貴族の家の出で、家督争いに敗れ冒険者ギルドのマスターになったそうだ。
しかしギルドの仕事よりも周囲の貴族に取り入る事に執心で、エリオットや彼を利用しようとしている貴族の派閥に取り入り、ソリムド伯爵を追い落とそうと画策していると噂されていた。

「それが見事にハルに粉砕された訳だ。傑作だよな!」

真意が分からない以上一緒に笑う事は出来ないが、火の無いところに煙は立たないと言うし、もしドルフに会う機会があったら本人にでも聞いてみるとしよう。

「リフィナさんとバルドルさんは無事なんですね?」
「ああ、ハルのお陰で元気そのものだ。今は今後のギルド運営をどうするか職員を集めて協議している所だぜ」

それなら邪魔するのは申し訳ない。
冒険者の皆に感謝を伝えると、駐屯兵団の宿舎に向かう事にする。
芽依とエレ、セロ達も一緒に行くとついて来た。

「セロさんは大丈夫でした?」
「ハルさんの水のお陰で傷も残ってないよ。ありがとう」

そう言っていつもの笑顔を向けてくるセロ。
私がもっと気を付けていれば彼に痛い思いをさせずに済んだのにと後悔した。

宿舎に着いて、警備に当たっていた兵士にハーツを呼んでもらう様にお願いする。

外で待っていたら扉が勢いよく開け放たれハーツが飛び出してきた。
一直線に私の所に走ってきて両肩を掴み首を凝視している。

「ハーツさん、先程はお騒がせしてすみませんでした」
「何もされていないな?」
「はい。特には」
「そうか……無事で良かった……」

両肩を掴んでいた手から力が抜け、その場に崩れるハーツ。

「俺は謀叛人にならずに済んだ様だ」

……思い詰め過ぎよハーツ。
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