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冒険者

庇護

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「罪を認める事は良い事よ。でもこの街で全てを打ち明けるのは賛成出来ないわ」

もしラティーシアが全てを話したら人として処罰を受けられるだろうか?
ヴァンパイアと知られた時点で処刑されるだけだ。私はそれを正当な処罰だとは思わない。

「でも……それでは私はどうしたら……」
「生きなさい。あなたが生きているだけで同胞の力になります」
「そうです姫様。我らは姫様がご健在なだけで生きる勇気が湧くのです」

イシュリアはラティーシアの目の前に跪き手を握る。

「人間の街に居るのが辛いなら私の泉に行きますか?」
「いえ、皆の希望になるのなら人間の街にいなければ」

彼女は前を向いて生きていく事を決めた様だ。
いつも表情の見えなかった顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。

「ラティーシアさん、私にも何か手伝わせてください」
「そんな……助けていただいただけで充分です」
「いつも美味しいご飯を頂いているお礼です。ラティーシアさん、イシュリアさん、泉の精霊ハルはあなた方二人をお護りします」

ここでの私は大した力はないかも知れないが、いざとなれば二人を連れて逃げるくらいはできる。

私が宣言するとラティーシアとイシュリアの身体が光り始める。

「これは……」
「温かい……不思議な感じです」

暫くして光は収まった。

「お母さん、何をしたの?」
「何と言われても……私はただ二人を護ると宣言しただけなのだけど」

今の現象を起こしたのは私に違い無いのだが、名付けを行った訳でもないし眷属にした訳でもない。
こんな事は初めてだ。

「悪い事じゃないんだろう?」
「はい。体調が良くなった気がします」
「なら良いんじゃないか?」
「お二人が大丈夫なら」
「大丈夫です」「ありがとうございます」

余計な事をしまったかと思ったが、二人は嬉しそうだったので良しとしよう。

「それじゃ、俺たちはそろそろ帰りますね」
「そうだな。明日ギルドで報酬を受け取ろうぜ。昼に集合な」
「お疲れ~」「また明日」

それぞれに挨拶をして解散していく。

「私達も休みましょうか」
「うん。今日もいっぱい働いて楽しかった!」
「ご飯美味しかったです!ありがとうございました!」
「明日の朝は多めに用意しておきますね」
「今日は本当にありがとうございました」

ラティーシアとイシュリアにおやすみを告げて三階へと上がる。

部屋に戻ったら服を寝衣に着替えて、脱いだ服には《洗浄》の魔法を掛ける。自分達にも掛けておいた。

「芽依、こっちにいらっしゃい」
「うん!」

芽依の髪を解いて櫛で梳かす。
気持ちよさそうにしている芽依を見て羨ましそうなエレ。

「次はエレの番よ。いらっしゃい」
「私もいいんですか?」
「当然よ。さあ」
「はい!」

人の姿で生活した事が無い彼女にとっては初めての経験で終始嬉しそうだった。

この子も戦闘経験が無いのによく頑張ってくれた。
いきなりあんな危険な仕事をする事になってしまった事を申し訳なく思いつつ、今回はいい経験になったと思っていた。

明日は修練はやらずにのんびりしてはどうだろうか?
報酬を受け取ったらエレの武器を見にいって、街を散策したりしてもいい。
セロに提案してみようかしら。

「お母さんは私がやるね」
「あら、ありがとう。お願いね」

櫛を芽依に渡して背中を向ける。
芽依は慎重に櫛を通している。

「そんなに丁寧にやらなくても大丈夫よ?」
「お母さんの髪サラサラで櫛で梳くのが勿体ない感じ」
「勿体ないって……ありがとう。でも気にしなくていいからやって頂戴」
「うん」

寝る準備も出来たのでベッドに入って灯りを落とす。

「人の姿って何だか不思議です。ドラゴンの時よりも色んなものが感じられて楽しいです」
「これからもっと沢山の事を経験出来るわ。楽しみね」
「はい!」

芽依はもう寝てしまったみたい。疲れていたのね。
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