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冒険者

マルダ救援

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「しかしこの戦力で何が出来る?」

ロディが聞いてくる。

「眷属を呼び出します」
「あれを……か」

眉間に皺を作りながらヴァンが呟く。

「しかしあれだけでは軍隊には勝てないんじゃないか?」
「大丈夫です。皆強いですから」

『雷鳴』のリーダーが聞いてくるが、彼が見たのは眷属達の力の一端だけだ。

「確かに眷属だけでは難しいかも知れません。なので皆さんにも力を貸して貰います」

颯太とカナエ以外は小回りが効かない。そして味方であると示す者も必要だ。

「当然だ」

『鋼鉄の壁』のリーダーが頷く。

私達はこの場で一日野営をして、翌日には商隊を置いてマルダを目指す事にした。
商隊の護衛にはギョクリュウとオオトリを置いていく。

もし対応しきれない敵が現れたらオオトリが私の所に知らせに来る様に打ち合わせておいた。

商隊の食料も乏しかったので、私が個人で用意した食料を全て渡しておいた。
これで暫くは保つだろう。

小高い丘を登りきり、眼下に広がるのは青い海とマルダの港町。
依然戦闘は継続している。

「颯太、カクカミ、メト、カナエ、ヤト」

丘の裏側で皆を召喚する。

「また呼んでくれたね。今度はみんな呼んだのかな?」
「トコヤミは大森林の守備として呼ばなかったわ」

彼だけ仲間外れにしてしまっている様で申し訳ないけど、泉周辺を留守にするのは望ましくない。

「な、なんだこれは……化け物、いや……なんて神々しいんだ……」

ヴァンはカクカミ達を見上げたまま呟いた。

「これから港町を包囲している人間の軍隊を排除します。颯太とカナエは連続になってしまって悪いのだけどお願いね」
「全然大丈夫です!何だったらずっと一緒に着いて行きますよ!」
「僕も問題はないよ。それで、敵は殺してしまっていいんだよね?」
「ええ。ただし味方は巻き込まない様にお願いね。それからヤトは海上の軍船を全て沈めてもらえるかしら?」
『お任せください』

山の様な巨大な蜷局を巻いていたヤトは力強く返事をして地面に潜っていく。

その巨大で地面を潜っていくのだから、大地は大きく揺れ立っていられない程だった。颯太が私と芽依を抱き留めてくれて無事だったが他の者は地面に手を付いて振動を堪えている。

「ヤトは初めて呼ばれて張り切っているね」

颯太は笑いながらヤトを見送っていた。

「俺達は彼らと一緒に戦えばいいのか?」
「いえ、颯太とカナエを入れて私達は一番手薄な箇所を攻撃しましょう。中の人達と連絡を取らないと味方と認識してもらえないでしょうから」
「そうだな。よし、全員それでいいか?」

ヴァンが聞くと全員が頷いた。

簡単に作戦を練る。
私達がいるのがマルダの北側一キロメートルの地点。敵はマルダの三つの門、北門、東門、西門を破壊して中に入ろうとしている。

東側は川の河口になっていて、敵軍はそこから小舟を使って次々と上陸してきていた。
西側は切り立った崖があるため陸上戦力のみが展開中。

「カクカミとメトは正面から突撃を掛けて出来るだけ敵を引き付けながら蹴散らして。東側の敵軍の上陸地点まで破壊して。私達は西側の門から内部と連絡を取ります。それで良いですね?」
「ああ。完璧だ」

ヴァンの賛同を得たのでその通りに動く事に。

沖では船が突然真っ二つに折れて沈んでいくのが見える。
ヤトが海に出て海中から攻撃を始めた様だ。

何が起こったのか分からず慌てふためいているのが分かる。

海中から頭を出したヤトは船体に喰らい付いて半分を飲み込み、近くにいた他の船に体当たりをして粉砕した。

地上に向けて攻撃していた大砲をヤトに向けて撃ち始めるが、砲弾はヤトの体に弾かれて全く効いていなかった。

「これで海側からの攻撃もないでしょう。然程時間が掛からずに全ての船を撃沈すると思います。次は地上戦力の掃討ですね」

沖で起こっている地獄の様な光景を見て全員が固まっていた。
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