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冒険者

六対六

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「兄ちゃん、俺達を舐めない方がいいぜ」
「本人達を目の前に失礼だったね。謝罪しよう」

リーダーの言葉に素直に謝る颯太。

「それでこの兄ちゃんは魔法使いか?」
「そうだよ。でも僕は素手で戦うよ」

颯太の言う事にムッとするリーダー。

「どこまでも舐めた事を言ってくれるな。俺達は構わねえが後悔するなよ」

そう言ってリーダーは仲間達に指示を出している。

「ルールはどうする?」

振り返って聞いてくるリーダー。

「弓は危険なのでやめておきましょう。魔法は殺傷能力の高いものは無しでどうですか?」

私達は防具まで身につけているが、『雷鳴』のメンバーは防具は身に付けておらず剣などの持ち運びやすい武器のみをそれぞれが携帯していた。

「分かった。武器は鞘から抜かないって事でいいんだな?」
「はい。それでお願いします」

こうして急遽だが模擬戦をやれる事になった。

「大丈夫かな……」
「何とかなるよ!折角銀級シルバークラスのパーティが戦ってくれるんだから楽しまなくちゃ!」

不安がるセロとは正反対に楽しみでしょうがない様子の芽依。

「楽しむのはいいけど、これは訓練だからね。私達の連携力を確かめるのが目的よ」
「うん!みんな頑張ろうね!」
「私は回復魔法と杖で戦えばいいのね?」
「私は弓が使えないので短剣ですね」
「はい。セロさん、芽依、颯太が前衛よ。颯太、相手は人間だから加減してあげてね」
「分かってるよ母さん。でも森で戦った人間よりは強いよね?」

颯太は相変わらず爽やかに笑いながら言っている。決して挑発しているわけではないのだが、相手にはどう映っただろうか?

「ソータさんも人間じゃないの?」
「ええ。この子も私と同じ精霊よ」
「そうなんですか……」

リンとミラは颯太を見ながら聞いてくる。視線に気付いた颯太は二人に笑いかけている。

相手の編成は、リーダーが大剣持ち、長剣と盾持ちの男性は今回は盾は置いてきているので剣のみ。槍使いの男性、弓使いの女性は小剣に持ち替えている。
回復魔法使いの少女は格闘術を使うらしい。攻撃魔法使い、アルは間違いなく後衛だ。
こちらの編成を見て、弓使いと回復魔法使いの二人はすぐに前には出てこないだろう。状況を見てミラとリンに前衛フォローをしてもらう。

全員の準備が出来たのでいよいよ開始だ。

あちらは私達の事を下に見ている為か、直ぐにはこちらに向かっては来ない。
悠々と歩いてくる。

「よし、行くよ!」
「待ちなさい芽依。一人で突出しないで。互いにフォローし合うのよ」

飛び出そうとする芽依を呼び止める。

「僕達はチームだからね。僕がリーダーの人を押さえるからメイは槍使いをお願い。君は剣士を頼むよ」
「分かった!」「了解!」

前衛もフォーメーションを作って迎え撃つ。

「後衛も動いて来ているわ。注意して」

後ろにいた小剣持ちの女性と回復魔法使いの少女も横に展開して様子を伺っている。

最後列のアルが呪文の詠唱を始めた。
あの位置から味方を巻き込まない様に撃てる魔法は限られるだろう。私は注意深くアルを観察し、魔法の発動を待つ事にした。

「兄ちゃん、大口叩いたからには手加減はしねえぞ!大怪我したらママに治して貰うんだな!」

大剣を振りかぶって踏み込んでくるリーダー。颯太は構えずにそれを見ている。

間合いに入って大剣が振り下ろされた。
が、颯太はこれを片手で受け止めている。

「何!?」
「心配しなくてもこれくらいじゃ怪我はしないよ」

颯太ら大剣を押し返してリーダーを吹き飛ばす。ややバランスを崩しながらも着地をして剣を構え直すリーダー。

槍使いは芽依に鋭い連続突きを放っていた。それを二本の小剣で巧みに攻撃を捌いている。

槍には鞘がないので厚手の布を指輪から出して巻きつけてもらった。

「やるな!」
「そっちこそ!」

セロは大丈夫だろうか?
剣士の攻撃を何とか防いでいるセロは反撃出来ないでいた。

「私、援護にいくよ!」

リンが前に出るとそれに合わせて回復魔法使いの少女も動いた。
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