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冒険者

集団模擬戦

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二人の模擬戦が終わった所で私は泉の水を注いだコップを出して二人に手渡す。

「ありがとう」「ありがと!」

よく冷えた水を飲んで二人は落ち着いた様だ。
泉の水には疲労を取る効果もある。これならまたすぐに模擬戦を始められるだろう。

「その水を出すのは魔法なの?」
「厳密に言えば魔法ではないわ。精霊としての能力よ。私の泉の水と同じ成分のものを取り出しているの」

どんな怪我でも病気でも治すことができる水だ。

「そんな凄い水をもらってしまっていいのかい?」

飲むのをやめて聞いてくるセロ。

「いくらでも出せるから大丈夫よ。おかわりもあるから遠慮なく言ってください」

そう言うと芽依の方が「おかわり!」と言ってきた。
すぐに水を注いであげる。
リンとミラにもコップを出して渡す。

「ただの水を出せるだけでも凄い事なのに、治癒能力を持った水をこんなに簡単に…」
「ハルさん、この事はあまり人に話さない方が良いと思います」

驚くリンに忠告してくれるミラ。

「そうね。気を付けます」

悪意のある人間を呼び寄せてしまうのは良くない。私と芽依が対処できても、3人を人質に取られるような事があったらマズい。

「んー?誰かこっちに来るよ?」

芽依が見ている方を見ると、中心街の方から人が歩いてくる。
あれは『雷鳴』の攻撃魔法使いの少年だ。手を後ろに回したまま歩いてくる。
何か持っているのね。

何かあったのかしら?

「あの、ハルさん!先日は助けてもらってありがとうございました!」

態々そんな事を言いにこんな所まで来てくれたのね。宿で言ってくれれば良かったのに、きっと仲間に聞かれるのが恥ずかしかったのだろう。

「気にしないで。手遅れにならなくて本当に良かったです」

そう言って微笑みかけると少年は顔を赤らめて俯いてしまう。
何だか初々しくて可愛いわね。

「ええと……良かったらこれを」

そう言って差し出してきたのは赤、白、黄色の小さな花束だった。

「あら、ありがとう。いい香りね」

花は優しく甘い香りだった。自分で摘んだのかしら。

「ステキな贈り物をありがとう。この花達にはここで咲いてもらいましょう」

花束を優しく解いて地面に一本ずつ差していく。泉の水を一雫与えるとすぐに根を生やし植わっていく。そのまま花畑になって広がっていった。

「す、すごい……」

息を飲む少年。

「あなたが優しく摘んでくれたから花に生命力が残っていたのよ」
「ハルさんスゴいよ!こんな事が出来るのね!」

リンも一面に広がった花畑を見て喜んでいる。

「な、なんだこりゃ!?」

いつの間にかやって来た『雷鳴』の他のメンバー達。

「みんな……ついて来たのか?」
「仲間の雄志を見守ろうと思ってな」

そう言って笑うリーダー。
どうやら少年の事が心配でコッソリついて来ていた様だ。

「丁度よかった。私達、今連携について確認していた所なんです。一つ模擬戦でもどうですか?」
「それは構わんが、君はともかく他のメンバーは実力不足だろう」

リーダーにそう言われて芽依は不満そうだ。

「勿論勝てるなんて思っていません。私達の動きを見てご指導して貰えばと思っています」
「それなら構わんぞ。その代わりこれからもアルと仲良くしてやってくれ」

アルというのは攻撃魔法使いの少年の名だ。

「それは勿論です。こんな素敵な物を頂いて無下に出来ません」
「それなら良かった。お前ら、アルの為に一肌脱いでやろうぜ!」
「しゃあねぇな!」

笑いながら答える剣盾持ちの男。

「いいよ。銀級シルバークラスの実力見せちゃうんだから」

回復魔法使いの少女も言っている。
アルは恥ずかしそうにしていた。

「こっちは六人だがどうする?一人外れるか?」
「いえ、こちらも一人増やしましょう」

《眷属召喚》で颯太を呼び出す。

「呼んでくれたね」
「ソータお兄ちゃん!」
「メイ、元気そうで何よりだよ」

抱きつくメイの髪を撫でながら微笑み掛ける。

「颯太、今から模擬戦をするからこちらのチームに加わって」
「いいよ。手加減すればいいんだよね」

そう言って爽やかに笑う颯太。
その様子を見てリーダー達は少し苛立った様だ。
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