146 / 453
冒険者
集団模擬戦
しおりを挟む
二人の模擬戦が終わった所で私は泉の水を注いだコップを出して二人に手渡す。
「ありがとう」「ありがと!」
よく冷えた水を飲んで二人は落ち着いた様だ。
泉の水には疲労を取る効果もある。これならまたすぐに模擬戦を始められるだろう。
「その水を出すのは魔法なの?」
「厳密に言えば魔法ではないわ。精霊としての能力よ。私の泉の水と同じ成分のものを取り出しているの」
どんな怪我でも病気でも治すことができる水だ。
「そんな凄い水をもらってしまっていいのかい?」
飲むのをやめて聞いてくるセロ。
「いくらでも出せるから大丈夫よ。おかわりもあるから遠慮なく言ってください」
そう言うと芽依の方が「おかわり!」と言ってきた。
すぐに水を注いであげる。
リンとミラにもコップを出して渡す。
「ただの水を出せるだけでも凄い事なのに、治癒能力を持った水をこんなに簡単に…」
「ハルさん、この事はあまり人に話さない方が良いと思います」
驚くリンに忠告してくれるミラ。
「そうね。気を付けます」
悪意のある人間を呼び寄せてしまうのは良くない。私と芽依が対処できても、3人を人質に取られるような事があったらマズい。
「んー?誰かこっちに来るよ?」
芽依が見ている方を見ると、中心街の方から人が歩いてくる。
あれは『雷鳴』の攻撃魔法使いの少年だ。手を後ろに回したまま歩いてくる。
何か持っているのね。
何かあったのかしら?
「あの、ハルさん!先日は助けてもらってありがとうございました!」
態々そんな事を言いにこんな所まで来てくれたのね。宿で言ってくれれば良かったのに、きっと仲間に聞かれるのが恥ずかしかったのだろう。
「気にしないで。手遅れにならなくて本当に良かったです」
そう言って微笑みかけると少年は顔を赤らめて俯いてしまう。
何だか初々しくて可愛いわね。
「ええと……良かったらこれを」
そう言って差し出してきたのは赤、白、黄色の小さな花束だった。
「あら、ありがとう。いい香りね」
花は優しく甘い香りだった。自分で摘んだのかしら。
「ステキな贈り物をありがとう。この花達にはここで咲いてもらいましょう」
花束を優しく解いて地面に一本ずつ差していく。泉の水を一雫与えるとすぐに根を生やし植わっていく。そのまま花畑になって広がっていった。
「す、すごい……」
息を飲む少年。
「あなたが優しく摘んでくれたから花に生命力が残っていたのよ」
「ハルさんスゴいよ!こんな事が出来るのね!」
リンも一面に広がった花畑を見て喜んでいる。
「な、なんだこりゃ!?」
いつの間にかやって来た『雷鳴』の他のメンバー達。
「みんな……ついて来たのか?」
「仲間の雄志を見守ろうと思ってな」
そう言って笑うリーダー。
どうやら少年の事が心配でコッソリついて来ていた様だ。
「丁度よかった。私達、今連携について確認していた所なんです。一つ模擬戦でもどうですか?」
「それは構わんが、君はともかく他のメンバーは実力不足だろう」
リーダーにそう言われて芽依は不満そうだ。
「勿論勝てるなんて思っていません。私達の動きを見てご指導して貰えばと思っています」
「それなら構わんぞ。その代わりこれからもアルと仲良くしてやってくれ」
アルというのは攻撃魔法使いの少年の名だ。
「それは勿論です。こんな素敵な物を頂いて無下に出来ません」
「それなら良かった。お前ら、アルの為に一肌脱いでやろうぜ!」
「しゃあねぇな!」
笑いながら答える剣盾持ちの男。
「いいよ。銀級の実力見せちゃうんだから」
回復魔法使いの少女も言っている。
アルは恥ずかしそうにしていた。
「こっちは六人だがどうする?一人外れるか?」
「いえ、こちらも一人増やしましょう」
《眷属召喚》で颯太を呼び出す。
「呼んでくれたね」
「ソータお兄ちゃん!」
「メイ、元気そうで何よりだよ」
抱きつくメイの髪を撫でながら微笑み掛ける。
「颯太、今から模擬戦をするからこちらのチームに加わって」
「いいよ。手加減すればいいんだよね」
そう言って爽やかに笑う颯太。
その様子を見てリーダー達は少し苛立った様だ。
「ありがとう」「ありがと!」
よく冷えた水を飲んで二人は落ち着いた様だ。
泉の水には疲労を取る効果もある。これならまたすぐに模擬戦を始められるだろう。
「その水を出すのは魔法なの?」
「厳密に言えば魔法ではないわ。精霊としての能力よ。私の泉の水と同じ成分のものを取り出しているの」
どんな怪我でも病気でも治すことができる水だ。
「そんな凄い水をもらってしまっていいのかい?」
飲むのをやめて聞いてくるセロ。
「いくらでも出せるから大丈夫よ。おかわりもあるから遠慮なく言ってください」
そう言うと芽依の方が「おかわり!」と言ってきた。
すぐに水を注いであげる。
リンとミラにもコップを出して渡す。
「ただの水を出せるだけでも凄い事なのに、治癒能力を持った水をこんなに簡単に…」
「ハルさん、この事はあまり人に話さない方が良いと思います」
驚くリンに忠告してくれるミラ。
「そうね。気を付けます」
悪意のある人間を呼び寄せてしまうのは良くない。私と芽依が対処できても、3人を人質に取られるような事があったらマズい。
「んー?誰かこっちに来るよ?」
芽依が見ている方を見ると、中心街の方から人が歩いてくる。
あれは『雷鳴』の攻撃魔法使いの少年だ。手を後ろに回したまま歩いてくる。
何か持っているのね。
何かあったのかしら?
「あの、ハルさん!先日は助けてもらってありがとうございました!」
態々そんな事を言いにこんな所まで来てくれたのね。宿で言ってくれれば良かったのに、きっと仲間に聞かれるのが恥ずかしかったのだろう。
「気にしないで。手遅れにならなくて本当に良かったです」
そう言って微笑みかけると少年は顔を赤らめて俯いてしまう。
何だか初々しくて可愛いわね。
「ええと……良かったらこれを」
そう言って差し出してきたのは赤、白、黄色の小さな花束だった。
「あら、ありがとう。いい香りね」
花は優しく甘い香りだった。自分で摘んだのかしら。
「ステキな贈り物をありがとう。この花達にはここで咲いてもらいましょう」
花束を優しく解いて地面に一本ずつ差していく。泉の水を一雫与えるとすぐに根を生やし植わっていく。そのまま花畑になって広がっていった。
「す、すごい……」
息を飲む少年。
「あなたが優しく摘んでくれたから花に生命力が残っていたのよ」
「ハルさんスゴいよ!こんな事が出来るのね!」
リンも一面に広がった花畑を見て喜んでいる。
「な、なんだこりゃ!?」
いつの間にかやって来た『雷鳴』の他のメンバー達。
「みんな……ついて来たのか?」
「仲間の雄志を見守ろうと思ってな」
そう言って笑うリーダー。
どうやら少年の事が心配でコッソリついて来ていた様だ。
「丁度よかった。私達、今連携について確認していた所なんです。一つ模擬戦でもどうですか?」
「それは構わんが、君はともかく他のメンバーは実力不足だろう」
リーダーにそう言われて芽依は不満そうだ。
「勿論勝てるなんて思っていません。私達の動きを見てご指導して貰えばと思っています」
「それなら構わんぞ。その代わりこれからもアルと仲良くしてやってくれ」
アルというのは攻撃魔法使いの少年の名だ。
「それは勿論です。こんな素敵な物を頂いて無下に出来ません」
「それなら良かった。お前ら、アルの為に一肌脱いでやろうぜ!」
「しゃあねぇな!」
笑いながら答える剣盾持ちの男。
「いいよ。銀級の実力見せちゃうんだから」
回復魔法使いの少女も言っている。
アルは恥ずかしそうにしていた。
「こっちは六人だがどうする?一人外れるか?」
「いえ、こちらも一人増やしましょう」
《眷属召喚》で颯太を呼び出す。
「呼んでくれたね」
「ソータお兄ちゃん!」
「メイ、元気そうで何よりだよ」
抱きつくメイの髪を撫でながら微笑み掛ける。
「颯太、今から模擬戦をするからこちらのチームに加わって」
「いいよ。手加減すればいいんだよね」
そう言って爽やかに笑う颯太。
その様子を見てリーダー達は少し苛立った様だ。
0
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~
骨折さん
ファンタジー
なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。
どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。
そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。
世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。
「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」
来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。
このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?
壁だぜ!? 無理なんじゃない!?
これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である!
※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。
※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します。
夕立悠理
恋愛
ベルナンデ・ユーズには前世の記憶がある。
そして、前世の記憶によると、この世界は乙女ゲームの世界で、ベルナンデは、この世界のヒロインだった。
蝶よ花よと愛され、有頂天になっていたベルナンデは、乙女ゲームのラストでメインヒーロ―である第一王子のラウルに告白されるも断った。
しかし、本来のゲームにはない、断るという選択をしたせいか、ベルナンデにだけアナウンスが聞こえる。
『愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します』
そのアナウンスを最後に、ベルナンデは意識を失う。
次に目を覚ました時、ベルナンデは、ラウルの妃になっていた。
なんだ、ラウルとのハッピーエンドに移行しただけか。
そうほっとしたのもつかの間。
あんなに愛されていたはずの、ラウルはおろか、攻略対象、使用人、家族、友人……みんなから嫌われておりー!?
※小説家になろう様が一番早い(予定)です
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる