135 / 453
冒険者
オーク戦
しおりを挟む
『草原の風』は全員軽装備なので足が早い。
しかし距離がある為、どれだけ急いでも十分は掛かってしまう。全力で走ってしまったら辿り着く頃には疲れてしまっていて戦闘にならないからだ。
このままでは戦っている冒険者達が全滅してしまう。彼らには悪いが私だけ先行しよう。
「すみません、先に行っています」
「何?これ以上速度をあげたら戦う体力が残らないぞ」
リーダーがそう言って来るが構う事はない。私は走る訳ではないのだから。
「オオトリ!」
『お任せを!』
上空に待機していたオオトリが急降下してきて私を掴んで飛び上がる。
一気に加速して森の手前の戦場へ。
『オーク達に警告します!今すぐここから去りなさい!さもなくば殲滅します!』
声の届く距離まで来てから警告する。
『ナンダ?』
『増エタゾ。人間ノめすダ』
『おすハ喰ウ!めすハ犯ス!』
オークに言葉は伝わっている筈だが、私の言う事を聞くつもりは無いらしい。
……どうやら私の知っているオーク族とは少し違うようだ。あれは知性の無いただの獣。殺してしまって構わないだろう。
冒険者の内二人は既に戦闘不能。一人は腹部を槍で貫かれて致命傷、もう一人は棍棒で背中を強打されて骨を砕かれている。もう長くはないだろう。
着地する前に致命傷の二人に向かって泉の水を生成して多めに振りかける。
オオトリに離してもらって地面に着地した。
「君は……?」
「助けに来ました。もうすぐ銀級冒険者が来ます」
「助かった……みんなあと少し踏ん張れ!」
「お、おう!」
冒険者達の士気が上がる。
防御に徹していればあと少しくらいは保つだろう。
『旨ソウナ子供ダ!』
棍棒を持ったオークが巨体を揺らしてこちらに来る。
私は短剣程の尖らせた氷を作り出して撃ち出す。
向かってきたオークは頭に突き刺さって絶命した。
「魔法使い?」
「詠唱が無かったぞ……」
冒険者達は驚いているがそんな場合ではない。
余所見をしている剣士に向かってボロボロの大剣を持ったオークが突進して来る。
オオトリが急降下してきてオークの頭を掴んで引き千切っていった。
「今のは私の眷属です。目の前の敵に集中しなさい!」
「は、はい!」
冒険者達は何とか集中力を取り戻して反撃に出る。
「俺は……死んでないのか?」
「身体が痛くない……?」
倒れていた二人が起き上がる。腹部を貫かれていたのは男性の剣士、背骨を砕かれていたのは女性の弓使いだ。二人とも十代後半だろう。
「回復したなら仲間を助けなさい!」
「あ、ありがとう!」「はい!」
慌てて立ち上がると自分の武器を拾って仲間の援護に向かう。
彼らは元々オークと戦えるだけの戦闘力を持っていたのだろう。冷静に対処を始めてからは数的不利でも簡単に押し負けはしなかった。
きっと不意打ちを受けて浮き足立ってしまったのだろう。それで逃走か反撃かの判断に迷いが生じて乱戦になってしまったという所か。
私は負傷した者に泉の水をかけて回復させて戦線を維持していた。
程なくして『草原の風』の面々が到着して形勢は逆転。全てのオークを倒すことができた。
「助かった。本当にありがとう」
長剣と盾を巧みに操り、最前列で仲間を鼓舞していた男が『草原の風』のリーダーに礼を言う。
「ああ、礼ならその子に言うんだな。お前らを発見して、俺達よりも早く駆け付けた」
「彼女は君らのパーティメンバーではないのか?」
「ああ違う。この子は鉄級で余所のパーティのメンバーだ」
「まさか……あれだけの回復魔法が使えるのに鉄級?」
「はい。まだ冒険者を始めたばかりなので」
私が答えると冒険者達はしきりに驚いていた。
しかし距離がある為、どれだけ急いでも十分は掛かってしまう。全力で走ってしまったら辿り着く頃には疲れてしまっていて戦闘にならないからだ。
このままでは戦っている冒険者達が全滅してしまう。彼らには悪いが私だけ先行しよう。
「すみません、先に行っています」
「何?これ以上速度をあげたら戦う体力が残らないぞ」
リーダーがそう言って来るが構う事はない。私は走る訳ではないのだから。
「オオトリ!」
『お任せを!』
上空に待機していたオオトリが急降下してきて私を掴んで飛び上がる。
一気に加速して森の手前の戦場へ。
『オーク達に警告します!今すぐここから去りなさい!さもなくば殲滅します!』
声の届く距離まで来てから警告する。
『ナンダ?』
『増エタゾ。人間ノめすダ』
『おすハ喰ウ!めすハ犯ス!』
オークに言葉は伝わっている筈だが、私の言う事を聞くつもりは無いらしい。
……どうやら私の知っているオーク族とは少し違うようだ。あれは知性の無いただの獣。殺してしまって構わないだろう。
冒険者の内二人は既に戦闘不能。一人は腹部を槍で貫かれて致命傷、もう一人は棍棒で背中を強打されて骨を砕かれている。もう長くはないだろう。
着地する前に致命傷の二人に向かって泉の水を生成して多めに振りかける。
オオトリに離してもらって地面に着地した。
「君は……?」
「助けに来ました。もうすぐ銀級冒険者が来ます」
「助かった……みんなあと少し踏ん張れ!」
「お、おう!」
冒険者達の士気が上がる。
防御に徹していればあと少しくらいは保つだろう。
『旨ソウナ子供ダ!』
棍棒を持ったオークが巨体を揺らしてこちらに来る。
私は短剣程の尖らせた氷を作り出して撃ち出す。
向かってきたオークは頭に突き刺さって絶命した。
「魔法使い?」
「詠唱が無かったぞ……」
冒険者達は驚いているがそんな場合ではない。
余所見をしている剣士に向かってボロボロの大剣を持ったオークが突進して来る。
オオトリが急降下してきてオークの頭を掴んで引き千切っていった。
「今のは私の眷属です。目の前の敵に集中しなさい!」
「は、はい!」
冒険者達は何とか集中力を取り戻して反撃に出る。
「俺は……死んでないのか?」
「身体が痛くない……?」
倒れていた二人が起き上がる。腹部を貫かれていたのは男性の剣士、背骨を砕かれていたのは女性の弓使いだ。二人とも十代後半だろう。
「回復したなら仲間を助けなさい!」
「あ、ありがとう!」「はい!」
慌てて立ち上がると自分の武器を拾って仲間の援護に向かう。
彼らは元々オークと戦えるだけの戦闘力を持っていたのだろう。冷静に対処を始めてからは数的不利でも簡単に押し負けはしなかった。
きっと不意打ちを受けて浮き足立ってしまったのだろう。それで逃走か反撃かの判断に迷いが生じて乱戦になってしまったという所か。
私は負傷した者に泉の水をかけて回復させて戦線を維持していた。
程なくして『草原の風』の面々が到着して形勢は逆転。全てのオークを倒すことができた。
「助かった。本当にありがとう」
長剣と盾を巧みに操り、最前列で仲間を鼓舞していた男が『草原の風』のリーダーに礼を言う。
「ああ、礼ならその子に言うんだな。お前らを発見して、俺達よりも早く駆け付けた」
「彼女は君らのパーティメンバーではないのか?」
「ああ違う。この子は鉄級で余所のパーティのメンバーだ」
「まさか……あれだけの回復魔法が使えるのに鉄級?」
「はい。まだ冒険者を始めたばかりなので」
私が答えると冒険者達はしきりに驚いていた。
0
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~
骨折さん
ファンタジー
なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。
どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。
そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。
世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。
「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」
来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。
このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?
壁だぜ!? 無理なんじゃない!?
これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である!
※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。
※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します。
夕立悠理
恋愛
ベルナンデ・ユーズには前世の記憶がある。
そして、前世の記憶によると、この世界は乙女ゲームの世界で、ベルナンデは、この世界のヒロインだった。
蝶よ花よと愛され、有頂天になっていたベルナンデは、乙女ゲームのラストでメインヒーロ―である第一王子のラウルに告白されるも断った。
しかし、本来のゲームにはない、断るという選択をしたせいか、ベルナンデにだけアナウンスが聞こえる。
『愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します』
そのアナウンスを最後に、ベルナンデは意識を失う。
次に目を覚ました時、ベルナンデは、ラウルの妃になっていた。
なんだ、ラウルとのハッピーエンドに移行しただけか。
そうほっとしたのもつかの間。
あんなに愛されていたはずの、ラウルはおろか、攻略対象、使用人、家族、友人……みんなから嫌われておりー!?
※小説家になろう様が一番早い(予定)です
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる