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冒険者

斥候

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馬車は速度を変える事なく道を進んでいる。
私達もそれに合わせて歩いて行くが後方の警戒を怠らない様にする。
丘の上で私地を見ていた連中はついさっき丘を降りて行方をくらましていた。

「ハル、君が見つけた集団は今どこにいる?」
「はい。丘を降りてこちらに向かって来ています」

ヴァンがやって来て状況を聞いて来たので《遠隔視野》で見ているままを説明する。

「だからどうやって見てるんだよ?」
「私の能力、魔法みたいなものです」
「お母さんはこの間までウルゼイドの学園で魔法を教えていたんだよ」
「ウルゼイドで魔法を……!?」
「魔族の国だろ……人間とは比べ物にならない程魔法が発達している」

レイルとロッシュが驚いているが、それはいい。

「分かった。数は十二で合っているか?編成は分かるか?」
「はい。弓持ちが六、槍持ちが二、剣持ちが三、小剣二本持ちが一です。このままだと半刻もせずに仕掛けてくるかと」

鐘が鳴るのがおよそ二時間おきなら半刻は一時間おきだ。ヴァンはその言い回しで理解してくれた。

「よし、こちらから仕掛ける。人員は──」
「はい!私がやります!」

ヴァンの声を遮って芽依が手を上げながら言う。

「いや、最低八人は出したい。メイを含めるのは編成を決めてからだ」
「私、さっき言われたんです。戦闘になったら前に出ろって」

ロッシュを見ながら言う芽依。

ヴァンは溜め息を吐いて、言った。

「今は喧嘩している場合じゃない。奴らを捕らえるのは任務上重要な事なんだ。ふざけているなら隊列から外す」
「ふざけてなんかない!」

芽依は引き下がらない。
今後の事もあるし、十二人位、私と芽依で片付けてしまおうか。

「ヴァンさん、私と芽依で迎え撃ちます。元々私達はこの隊形では居てもいなくても問題ないでしょう?私達二人が戻らなかったら次の手を打てばいい」
「しかし……」
「いいんじゃねぇの?最悪居なくなっても商隊が無事なら問題ねーし」

レイルは笑いながら言っている。

「言っておくけど全員捕縛して戻ってくるから!」
「わ、分かった。それならハルとメイに任せよう」
「俺達も行かせてください!」
「お前らは駄目でしょ。みんなで居なくなったら誰が雑用するんだよ?」

そう言って来たのはレイル。
セロは悔しそうに歯噛みし、リンとミラも恨めしげにレイルを睨んでいた。

「大丈夫。私達だけで対処できるわ。すぐに戻ってくるから商隊を護衛していてください」

私が言うと、三人は何か言いたそうにしていたが、このままいると「やはりついて行く」と言い出しかねない。

「行こう!お母さん」
「ええ」

私達は商隊から離れて真っ直ぐ野盗達の方へと向かう。

「私が先に仕掛けるよ!」
「ええ、囲まれない様に気をつけて」

芽依は小剣二本を抜き放ち、低い姿勢で先行する。

道を外れて林の方へ進む。

「そろそろよ」
「分かった!」

芽依が茂みを飛び越えると「何!?」「コイツ!商隊の護衛だぞ!」などと声が聞こえて来た。

芽依は声を発せず近くにいた槍持ちの男と剣持ちの男を斬り付けて距離を取る。
私も茂みを飛び越えて芽依と合流した。

「コイツ……ガキのワリには強えぞ!」
「二人だけかよ。随分舐められたもんだなぁ!」

弓使いは素早く扇状に展開して私達目掛けて矢を放とうとする。

私は地面から水を吸い上げ、高圧縮して無数に撃ち出す。

弓使い六人の肩と脚を撃ち抜いて動きを封じる。

芽依はその間に次々と男達を斬りつけていく。素早い動きで攻撃を躱し。腕や脚に小剣で深傷を負わせていた。

「このっ……!」

槍を持った男が芽依の僅かな隙を突いて攻撃に出る。
鋭い連続突きで芽依の脚を狙っているが冷静にそれをステップして避けると、槍の上に乗って飛び上がりながら回し蹴りを放ち男の顔を蹴飛ばした。

大きく吹き飛んで倒れて動かなくなる槍使いの男。

「ま、まて!降伏する!」

芽依が小剣を構えて近くの男を睨みつけると、男は剣を捨てて両手を上げた。
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