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冒険者
試練
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二人で何とか引き抜いた剣はセロが使っている剣と同じくらいの長さで厚みは倍位あるだろうか。とても立派な剣だ。
「抜けたね!この剣どうする?」
「恐ろしく軽いんだ。メイさん持ってみて」
セロが芽依に剣を手渡す。
「ホントだ。全然重くないよ!」
そう言いながら剣を振り回している。
「その剣どうするの?」
「折角抜いたんだし使った方がいいだろうね。メイさん使う?」
「んー、私は長剣はちょっと。セロさんが使った方が良いんじゃないかな?」
そう言って剣をセロに返す芽依。
セロは剣を受け取って掲げる。魔法の明かりに刀身が照らされて美しい輝きを見せている。
「俺じゃ使い切れないかも知れないけど、メイさんが使わないなら俺が使わせてもらうよ」
リンもミラも私も長剣は使わないから必然的にセロが持つ事になった。
『ようこそ新たな剣の主人よ。その剣の名はヴォーリヤアステール。この世界の災厄を斬り裂く為の剣だ。』
どこからともなく声が聞こえる。
年配の男性の声、力強くハッキリとした声だ。
「な、何……?」
「誰かいるの?」
全員武器を構えて周りを見渡す。声は上の方から聞こえてきた様な気がするが、姿は見えない。
『新たな剣の主人には、これから試練を受けてもらう。誰の力も借りずに乗り越えて見せよ』
試練……?一体何をさせる気かしら。
誰の力も借りずにと言う事はセロだけで受けなければならないの?
「何を言っているんだ?姿を現して教えてくれ!」
セロは叫ぶけど声は返ってこない。
代わりに起こったのは振動と轟音。
まさかこのまま生き埋めにする気?
振動はどんどんと大きくなっていき、地面が崩れていく。
「な、何よこれ!?」
「地面が崩れていく…早くここから脱出しないと!」
逃げ出そうにも入り口の付近は既に崩れてしまっていた。
そうこうしていると私達の立っていた所まで崩れてしまい下に落ちる。
バランスを失い落下するだけだ。穴は…そこが見えない程深い。下が水であっても助かりはしないだろう。
「みんな!」
セロだけが球状の結界の様なものに守られてゆっくりと落下していた。
このままじゃセロ以外は死ぬ。
《眷属召喚》でカナエを呼び出す。
トコヤミでは広さが足りず、オオトリでは四人を掴む事が出来ないと思ったからだ。
「カナエ!落ちている四人を助けて!」
「分かりました!」
すぐに状況を理解してくれたカナエは風の魔法で私達を空中で受け止めてくれた。
「くっ……これは一体……?」
ミラは無事の様だ。リンは気を失っている。
「ご無事ですか?」
「ええ、助かったわ。ありがとうカナエ」
「カナエちゃんありがとう!」
芽依も無事の様だ。リンにも怪我はない。
「おーい!みんなー!」
球体に包まれたままのセロがゆっくりと近付いて来る。
「良かった……無事で……本当に、良かった……」
セロは自分以外の全員の死亡を予想していたのだろう。私達の姿を見て崩れ落ちて泣いていた。
「ところでこの妖精は……?」
「これは私の眷属のカナエです」
ミラが聞いてきたので私が紹介する。肩に止まったカナエはニコリと笑って手を振っている。
「眷属……」
ミラは理解が追い付いていない様だ。
まあそれについては追々話していけば良い。
それよりも今は……
「この球体は下に降りているんだけど、俺はどうすればいい?」
「取り敢えず私達も降ります。試練というのが待ち構えているかも知れませんしね」
剣の持ち主だけを生かして同行者を殺す。陰湿なやり方だ。
遺跡の主がその気なら、こちらも遠慮はしない。
用意された試練なんて全員で破壊してここから脱出してやろう。
魔法で光の球を生成して下に放り投げる。
下は浅く水が溜まっていた。
勿論あの高さから落ちて助かる見込みはない。
広さ自体は上と変わらない。
さて、何が出てくるか。
「抜けたね!この剣どうする?」
「恐ろしく軽いんだ。メイさん持ってみて」
セロが芽依に剣を手渡す。
「ホントだ。全然重くないよ!」
そう言いながら剣を振り回している。
「その剣どうするの?」
「折角抜いたんだし使った方がいいだろうね。メイさん使う?」
「んー、私は長剣はちょっと。セロさんが使った方が良いんじゃないかな?」
そう言って剣をセロに返す芽依。
セロは剣を受け取って掲げる。魔法の明かりに刀身が照らされて美しい輝きを見せている。
「俺じゃ使い切れないかも知れないけど、メイさんが使わないなら俺が使わせてもらうよ」
リンもミラも私も長剣は使わないから必然的にセロが持つ事になった。
『ようこそ新たな剣の主人よ。その剣の名はヴォーリヤアステール。この世界の災厄を斬り裂く為の剣だ。』
どこからともなく声が聞こえる。
年配の男性の声、力強くハッキリとした声だ。
「な、何……?」
「誰かいるの?」
全員武器を構えて周りを見渡す。声は上の方から聞こえてきた様な気がするが、姿は見えない。
『新たな剣の主人には、これから試練を受けてもらう。誰の力も借りずに乗り越えて見せよ』
試練……?一体何をさせる気かしら。
誰の力も借りずにと言う事はセロだけで受けなければならないの?
「何を言っているんだ?姿を現して教えてくれ!」
セロは叫ぶけど声は返ってこない。
代わりに起こったのは振動と轟音。
まさかこのまま生き埋めにする気?
振動はどんどんと大きくなっていき、地面が崩れていく。
「な、何よこれ!?」
「地面が崩れていく…早くここから脱出しないと!」
逃げ出そうにも入り口の付近は既に崩れてしまっていた。
そうこうしていると私達の立っていた所まで崩れてしまい下に落ちる。
バランスを失い落下するだけだ。穴は…そこが見えない程深い。下が水であっても助かりはしないだろう。
「みんな!」
セロだけが球状の結界の様なものに守られてゆっくりと落下していた。
このままじゃセロ以外は死ぬ。
《眷属召喚》でカナエを呼び出す。
トコヤミでは広さが足りず、オオトリでは四人を掴む事が出来ないと思ったからだ。
「カナエ!落ちている四人を助けて!」
「分かりました!」
すぐに状況を理解してくれたカナエは風の魔法で私達を空中で受け止めてくれた。
「くっ……これは一体……?」
ミラは無事の様だ。リンは気を失っている。
「ご無事ですか?」
「ええ、助かったわ。ありがとうカナエ」
「カナエちゃんありがとう!」
芽依も無事の様だ。リンにも怪我はない。
「おーい!みんなー!」
球体に包まれたままのセロがゆっくりと近付いて来る。
「良かった……無事で……本当に、良かった……」
セロは自分以外の全員の死亡を予想していたのだろう。私達の姿を見て崩れ落ちて泣いていた。
「ところでこの妖精は……?」
「これは私の眷属のカナエです」
ミラが聞いてきたので私が紹介する。肩に止まったカナエはニコリと笑って手を振っている。
「眷属……」
ミラは理解が追い付いていない様だ。
まあそれについては追々話していけば良い。
それよりも今は……
「この球体は下に降りているんだけど、俺はどうすればいい?」
「取り敢えず私達も降ります。試練というのが待ち構えているかも知れませんしね」
剣の持ち主だけを生かして同行者を殺す。陰湿なやり方だ。
遺跡の主がその気なら、こちらも遠慮はしない。
用意された試練なんて全員で破壊してここから脱出してやろう。
魔法で光の球を生成して下に放り投げる。
下は浅く水が溜まっていた。
勿論あの高さから落ちて助かる見込みはない。
広さ自体は上と変わらない。
さて、何が出てくるか。
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