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冒険者
連行
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森を出て草原を歩いていると街の方から複数の騎馬がやって来た。
数は十三人。全員同じ金属の鎧兜を身に付けていた。どうやら街を護っている兵士の様だ。
乗っているのはアンヴァールではなく普通の馬だ。
「私はセイラン駐屯兵団第二分隊所属のハーツだ。冒険者ギルドからの要請で来た。お前達がハルとメイか?」
先頭にいた兵士が馬を止めて聞いてくる。
「はい、そうです。人攫いとそれに与する商人を捕らえました」
「二人でか?」
驚いた表情で聞いてくるハーツ。オオトリはついて来ず、上空から私達を見守っている。
「はい。彼らが捕らえた者達です。他は余裕が無かったので殺害しました」
「そ、そうか。それではこの者達を預かろう」
兵士達は馬から降りてロープで男達を縛り直し、馬の後ろに繋いでいく。
「君達も一緒に行こう。馬に乗りなさい」
「いいえ、歩けます」
「私も大丈夫です」
「遠慮することはない。さあ」
ハーツは私を軽々と抱え上げ、前に座らされる。
「お嬢ちゃんはこっちだ」
芽依は近くにいた兵士の前に乗せられていた。
馬は人が歩くより早い速度で街へと進んでいく。当然繋がれている男達はそれに併せて走る事になる。
連行している者達の体力を奪うのが目的らしい。
馬に乗っている事もあり、セイランの街に直ぐに着いた。
とはいえ街に入る様子はなく、街を囲う壁を伝って東側へ。そこには軍の駐屯所があった。
街の外壁の外側に同じく強固な壁が造られている駐屯所の門を潜って中に入ると、まるで砦の様な構造になっていた。
「ここに来るのは初めてだろう。ここはセイランより西側の防衛の為に造られた砦なのだよ」
「魔族を警戒しているのですか?」
「それもあるが、それより西には魔境と呼ばれる大森林が広がっていてな、魔族よりも恐ろしい魔物が大量にいるそうだ」
恐ろしい魔物……カクカミやメトにヤト、トコヤミも居るわね。数だけならコボルトやゴブリン、オークにオーガ、ノールもいる。
恐れて近付かないでくれるのは良い事だ。不要な争いを起こさずに済む。
「お嬢ちゃんみたいな新米の冒険者じゃあ入った途端に喰われちまうぞ。絶対に近付くな」
「はい」
ハーツは思いやりのある良い兵士の様だ。
「分隊長、お疲れ様です」
「冒険者二人を保護し、捕えていた悪漢共を連行した。奴らは牢にぶち込んでおけ」
ハーツは駆け寄ってきた兵士に命じると、随伴の兵士達も男達を連行するのを手伝って行った。
「君達はこっちだ」
ハーツに案内されて行ったのは大きな屋敷だった。
ここは駐屯兵団の将校が住んでいる所らしく、今回の事で駐屯兵団の指揮官に報告をしに行かなければならないそうだ。
「私が説明するが、当事者の君達でないと説明できない事があるかも知れない。その時は包み隠さず話してくれ」
「分かりました」
屋敷の二階へと上がり、両開きの豪華な扉の前まで来た。
ハーツはノックをして「第二分隊長、ハーツ入ります」と大きな声で告げて扉を開ける。
中に入ると黒髪で立派な髭を蓄えた中年の男が革張りの豪華な椅子に座って待っていた。
「ご報告します──」
ハーツは冒険者ギルドから要請を受けて私達の救助と賊の討伐に向かった所から説明していった。
「ご苦労。君達が賊を捕らえた冒険者かね?」
一通り話を聞いた指揮官が私達に質問してくる。
「はい。ハルと申します」
「メイです」
私達を交互に見比べて暫く沈黙する。
「他の協力者は居らんのかね?」
「はい」
「君達が賊を倒せる程の実力者だとは思えんのだが、何か事情があって協力者の事を話せないのではないかね?」
「いいえ、私達が倒しました」
怪訝な顔でこちらを見てくる指揮官。
「まあ良い。君達の功績を讃えて報奨金を出そう。ハーツから受け取りなさい」
「ありがとうございます」
指揮官との面会はそれだけだった。
数は十三人。全員同じ金属の鎧兜を身に付けていた。どうやら街を護っている兵士の様だ。
乗っているのはアンヴァールではなく普通の馬だ。
「私はセイラン駐屯兵団第二分隊所属のハーツだ。冒険者ギルドからの要請で来た。お前達がハルとメイか?」
先頭にいた兵士が馬を止めて聞いてくる。
「はい、そうです。人攫いとそれに与する商人を捕らえました」
「二人でか?」
驚いた表情で聞いてくるハーツ。オオトリはついて来ず、上空から私達を見守っている。
「はい。彼らが捕らえた者達です。他は余裕が無かったので殺害しました」
「そ、そうか。それではこの者達を預かろう」
兵士達は馬から降りてロープで男達を縛り直し、馬の後ろに繋いでいく。
「君達も一緒に行こう。馬に乗りなさい」
「いいえ、歩けます」
「私も大丈夫です」
「遠慮することはない。さあ」
ハーツは私を軽々と抱え上げ、前に座らされる。
「お嬢ちゃんはこっちだ」
芽依は近くにいた兵士の前に乗せられていた。
馬は人が歩くより早い速度で街へと進んでいく。当然繋がれている男達はそれに併せて走る事になる。
連行している者達の体力を奪うのが目的らしい。
馬に乗っている事もあり、セイランの街に直ぐに着いた。
とはいえ街に入る様子はなく、街を囲う壁を伝って東側へ。そこには軍の駐屯所があった。
街の外壁の外側に同じく強固な壁が造られている駐屯所の門を潜って中に入ると、まるで砦の様な構造になっていた。
「ここに来るのは初めてだろう。ここはセイランより西側の防衛の為に造られた砦なのだよ」
「魔族を警戒しているのですか?」
「それもあるが、それより西には魔境と呼ばれる大森林が広がっていてな、魔族よりも恐ろしい魔物が大量にいるそうだ」
恐ろしい魔物……カクカミやメトにヤト、トコヤミも居るわね。数だけならコボルトやゴブリン、オークにオーガ、ノールもいる。
恐れて近付かないでくれるのは良い事だ。不要な争いを起こさずに済む。
「お嬢ちゃんみたいな新米の冒険者じゃあ入った途端に喰われちまうぞ。絶対に近付くな」
「はい」
ハーツは思いやりのある良い兵士の様だ。
「分隊長、お疲れ様です」
「冒険者二人を保護し、捕えていた悪漢共を連行した。奴らは牢にぶち込んでおけ」
ハーツは駆け寄ってきた兵士に命じると、随伴の兵士達も男達を連行するのを手伝って行った。
「君達はこっちだ」
ハーツに案内されて行ったのは大きな屋敷だった。
ここは駐屯兵団の将校が住んでいる所らしく、今回の事で駐屯兵団の指揮官に報告をしに行かなければならないそうだ。
「私が説明するが、当事者の君達でないと説明できない事があるかも知れない。その時は包み隠さず話してくれ」
「分かりました」
屋敷の二階へと上がり、両開きの豪華な扉の前まで来た。
ハーツはノックをして「第二分隊長、ハーツ入ります」と大きな声で告げて扉を開ける。
中に入ると黒髪で立派な髭を蓄えた中年の男が革張りの豪華な椅子に座って待っていた。
「ご報告します──」
ハーツは冒険者ギルドから要請を受けて私達の救助と賊の討伐に向かった所から説明していった。
「ご苦労。君達が賊を捕らえた冒険者かね?」
一通り話を聞いた指揮官が私達に質問してくる。
「はい。ハルと申します」
「メイです」
私達を交互に見比べて暫く沈黙する。
「他の協力者は居らんのかね?」
「はい」
「君達が賊を倒せる程の実力者だとは思えんのだが、何か事情があって協力者の事を話せないのではないかね?」
「いいえ、私達が倒しました」
怪訝な顔でこちらを見てくる指揮官。
「まあ良い。君達の功績を讃えて報奨金を出そう。ハーツから受け取りなさい」
「ありがとうございます」
指揮官との面会はそれだけだった。
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