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養育

襲撃

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パーティでは芽依が主役だった。
私に挨拶に来た後はすぐに芽依の所に行き、色々な事を聞かれていた。
芽依は戸惑いながらも礼節をもって受け答えをしている。ジョゼットが指導を入れる必要も無く、淑女らしい応待だった。

四年しか経たないのに、人の子の成長は早いわね。

私の方には剣術大会の関係者ではなく、貴族でもあり、学校の関係者である者達に囲まれてしまっていた。

「ハルさん、今度うちの研究室に是非お越しください」
「講師ではなく当校の正式な教師としてお越し頂けませんか?」
「うちの子の家庭教師をしていただけないでしょうか?」

等々。私は何においても芽依優先なので全ての誘いを断った。

「ハルよ、今度新開発の魔導力機関の実験があるのだ。見に来ないかね?」

そう声を掛けてきたのはフォルドだった。彼は貴族でもあるそうだ。

「先生、魔法の平和利用は賛成ですが、兵器に転用できる技術について私は反対です」
「分かっておるよ。今度の機関は低出力で長時間稼働させる事に特化しておるんだ。儂はこれで夜の街を明るくしたいと考えておるのだ」

私はフォルドの研究を度々見させてもらい、戦争の道具になり得る物に対して口出ししてきた。
フォルドは『備えあれば~』というが、それを持つ事によって相手側に警戒心を持たせる事にもなるだろう。戦争の火種になる物はなるべく持たないようにと説得してきたのだ。

「そういう事でしたら協力出来ると思います」
「おおそうか!それならば次の休みにでも……」
「ごめんなさい。休みの日は森に帰る事にしているので」

私達は休日には必ず森に帰っていた。今ではこちらの生活にも慣れているが、私達の生活圏はあの森であり泉なのだから。芽依も森に帰るのが嬉しい様だった。

「そうか。ならば空いた日に実験のデータだけでも見に来てくれ」

フォルドはやや残念そうにしていたが、無理を言っても私が折れない事は承知している。話が済むと離れていった。

パーティは終わり屋敷へと戻る時、従者が声を掛けてくる。

「ハル様、街の様子がおかしいとギョクリュウ様が仰っております」
「ギョクリュウ、どうおかしいの?」
『はい。人気が無さすぎます。先程から変な気配も感じます』

こんな事は初めてだ。従者に馬車に入る様に声を掛ける。

「いえ、私も多少なら戦闘の心得はあります。いざという時は皆様をお護り出来るよう訓練もしておりますのでご安心を」

彼もプロなのだ。要らぬ心配だったか。

そして彼らは突然やって来た。

馬車の側面にストストと何かがぶつかる音がした。直後火が着いて馬車が燃え始める。

「襲撃です!こんな街中でなんで……?」

従者はそう言うと御者台から降りて行った。私は直ぐに水を出して火を消して扉を開ける。

「危険ですから馬車の中に!私が食い止めている内にギョクリュウ様は屋敷まで逃げてください!」

剣を抜いて構える従者。そこに向かってくるのは黒ずくめの人影。
屋根の上に数人、物陰から更に数人が出て来ている。

多勢に無勢。彼が引き付けていられるのは精々二、三人といった所だろう。

「母さん、僕達も出よう」
「そうね。ジョゼットは芽依と馬車の中にいて。カナエは馬車に近付く者を排除よ」
「分かりました!」

私と颯太は馬車から出る。
直ぐに黒ずくめが短剣を片手に斬り掛かってきた。

私は石畳を隆起させて相手を転ばせると身体に触れて《栄養吸収》で生命力を全て吸い取る。

かなりの量が補充できた。と言う事は相当な手練れなのだろう。

「ハル様!危険です!」
「私は大丈夫よ。それよりも自分の身を守りなさい」

声を掛けつつ光の球を空に飛ばして一面を昼のような明るくする。

颯太は風の魔法でギョクリュウと馬車の連結を外していた。

『ハル様達を襲うとは不届き者め!私が踏み砕いてくれる!』

ギョクリュウが前脚で襲撃者の頭を踏み潰していく。

屋根の上の者達は更に火矢を撃ち掛けて来るが、カナエが風を起こして馬車を守り、私が氷の矢を飛ばして襲撃者達を撃ち抜いた。
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