84 / 453
養育
襲撃
しおりを挟む
パーティでは芽依が主役だった。
私に挨拶に来た後はすぐに芽依の所に行き、色々な事を聞かれていた。
芽依は戸惑いながらも礼節をもって受け答えをしている。ジョゼットが指導を入れる必要も無く、淑女らしい応待だった。
四年しか経たないのに、人の子の成長は早いわね。
私の方には剣術大会の関係者ではなく、貴族でもあり、学校の関係者である者達に囲まれてしまっていた。
「ハルさん、今度うちの研究室に是非お越しください」
「講師ではなく当校の正式な教師としてお越し頂けませんか?」
「うちの子の家庭教師をしていただけないでしょうか?」
等々。私は何においても芽依優先なので全ての誘いを断った。
「ハルよ、今度新開発の魔導力機関の実験があるのだ。見に来ないかね?」
そう声を掛けてきたのはフォルドだった。彼は貴族でもあるそうだ。
「先生、魔法の平和利用は賛成ですが、兵器に転用できる技術について私は反対です」
「分かっておるよ。今度の機関は低出力で長時間稼働させる事に特化しておるんだ。儂はこれで夜の街を明るくしたいと考えておるのだ」
私はフォルドの研究を度々見させてもらい、戦争の道具になり得る物に対して口出ししてきた。
フォルドは『備えあれば~』というが、それを持つ事によって相手側に警戒心を持たせる事にもなるだろう。戦争の火種になる物はなるべく持たないようにと説得してきたのだ。
「そういう事でしたら協力出来ると思います」
「おおそうか!それならば次の休みにでも……」
「ごめんなさい。休みの日は森に帰る事にしているので」
私達は休日には必ず森に帰っていた。今ではこちらの生活にも慣れているが、私達の生活圏はあの森であり泉なのだから。芽依も森に帰るのが嬉しい様だった。
「そうか。ならば空いた日に実験のデータだけでも見に来てくれ」
フォルドはやや残念そうにしていたが、無理を言っても私が折れない事は承知している。話が済むと離れていった。
パーティは終わり屋敷へと戻る時、従者が声を掛けてくる。
「ハル様、街の様子がおかしいとギョクリュウ様が仰っております」
「ギョクリュウ、どうおかしいの?」
『はい。人気が無さすぎます。先程から変な気配も感じます』
こんな事は初めてだ。従者に馬車に入る様に声を掛ける。
「いえ、私も多少なら戦闘の心得はあります。いざという時は皆様をお護り出来るよう訓練もしておりますのでご安心を」
彼もプロなのだ。要らぬ心配だったか。
そして彼らは突然やって来た。
馬車の側面にストストと何かがぶつかる音がした。直後火が着いて馬車が燃え始める。
「襲撃です!こんな街中でなんで……?」
従者はそう言うと御者台から降りて行った。私は直ぐに水を出して火を消して扉を開ける。
「危険ですから馬車の中に!私が食い止めている内にギョクリュウ様は屋敷まで逃げてください!」
剣を抜いて構える従者。そこに向かってくるのは黒ずくめの人影。
屋根の上に数人、物陰から更に数人が出て来ている。
多勢に無勢。彼が引き付けていられるのは精々二、三人といった所だろう。
「母さん、僕達も出よう」
「そうね。ジョゼットは芽依と馬車の中にいて。カナエは馬車に近付く者を排除よ」
「分かりました!」
私と颯太は馬車から出る。
直ぐに黒ずくめが短剣を片手に斬り掛かってきた。
私は石畳を隆起させて相手を転ばせると身体に触れて《栄養吸収》で生命力を全て吸い取る。
かなりの量が補充できた。と言う事は相当な手練れなのだろう。
「ハル様!危険です!」
「私は大丈夫よ。それよりも自分の身を守りなさい」
声を掛けつつ光の球を空に飛ばして一面を昼のような明るくする。
颯太は風の魔法でギョクリュウと馬車の連結を外していた。
『ハル様達を襲うとは不届き者め!私が踏み砕いてくれる!』
ギョクリュウが前脚で襲撃者の頭を踏み潰していく。
屋根の上の者達は更に火矢を撃ち掛けて来るが、カナエが風を起こして馬車を守り、私が氷の矢を飛ばして襲撃者達を撃ち抜いた。
私に挨拶に来た後はすぐに芽依の所に行き、色々な事を聞かれていた。
芽依は戸惑いながらも礼節をもって受け答えをしている。ジョゼットが指導を入れる必要も無く、淑女らしい応待だった。
四年しか経たないのに、人の子の成長は早いわね。
私の方には剣術大会の関係者ではなく、貴族でもあり、学校の関係者である者達に囲まれてしまっていた。
「ハルさん、今度うちの研究室に是非お越しください」
「講師ではなく当校の正式な教師としてお越し頂けませんか?」
「うちの子の家庭教師をしていただけないでしょうか?」
等々。私は何においても芽依優先なので全ての誘いを断った。
「ハルよ、今度新開発の魔導力機関の実験があるのだ。見に来ないかね?」
そう声を掛けてきたのはフォルドだった。彼は貴族でもあるそうだ。
「先生、魔法の平和利用は賛成ですが、兵器に転用できる技術について私は反対です」
「分かっておるよ。今度の機関は低出力で長時間稼働させる事に特化しておるんだ。儂はこれで夜の街を明るくしたいと考えておるのだ」
私はフォルドの研究を度々見させてもらい、戦争の道具になり得る物に対して口出ししてきた。
フォルドは『備えあれば~』というが、それを持つ事によって相手側に警戒心を持たせる事にもなるだろう。戦争の火種になる物はなるべく持たないようにと説得してきたのだ。
「そういう事でしたら協力出来ると思います」
「おおそうか!それならば次の休みにでも……」
「ごめんなさい。休みの日は森に帰る事にしているので」
私達は休日には必ず森に帰っていた。今ではこちらの生活にも慣れているが、私達の生活圏はあの森であり泉なのだから。芽依も森に帰るのが嬉しい様だった。
「そうか。ならば空いた日に実験のデータだけでも見に来てくれ」
フォルドはやや残念そうにしていたが、無理を言っても私が折れない事は承知している。話が済むと離れていった。
パーティは終わり屋敷へと戻る時、従者が声を掛けてくる。
「ハル様、街の様子がおかしいとギョクリュウ様が仰っております」
「ギョクリュウ、どうおかしいの?」
『はい。人気が無さすぎます。先程から変な気配も感じます』
こんな事は初めてだ。従者に馬車に入る様に声を掛ける。
「いえ、私も多少なら戦闘の心得はあります。いざという時は皆様をお護り出来るよう訓練もしておりますのでご安心を」
彼もプロなのだ。要らぬ心配だったか。
そして彼らは突然やって来た。
馬車の側面にストストと何かがぶつかる音がした。直後火が着いて馬車が燃え始める。
「襲撃です!こんな街中でなんで……?」
従者はそう言うと御者台から降りて行った。私は直ぐに水を出して火を消して扉を開ける。
「危険ですから馬車の中に!私が食い止めている内にギョクリュウ様は屋敷まで逃げてください!」
剣を抜いて構える従者。そこに向かってくるのは黒ずくめの人影。
屋根の上に数人、物陰から更に数人が出て来ている。
多勢に無勢。彼が引き付けていられるのは精々二、三人といった所だろう。
「母さん、僕達も出よう」
「そうね。ジョゼットは芽依と馬車の中にいて。カナエは馬車に近付く者を排除よ」
「分かりました!」
私と颯太は馬車から出る。
直ぐに黒ずくめが短剣を片手に斬り掛かってきた。
私は石畳を隆起させて相手を転ばせると身体に触れて《栄養吸収》で生命力を全て吸い取る。
かなりの量が補充できた。と言う事は相当な手練れなのだろう。
「ハル様!危険です!」
「私は大丈夫よ。それよりも自分の身を守りなさい」
声を掛けつつ光の球を空に飛ばして一面を昼のような明るくする。
颯太は風の魔法でギョクリュウと馬車の連結を外していた。
『ハル様達を襲うとは不届き者め!私が踏み砕いてくれる!』
ギョクリュウが前脚で襲撃者の頭を踏み潰していく。
屋根の上の者達は更に火矢を撃ち掛けて来るが、カナエが風を起こして馬車を守り、私が氷の矢を飛ばして襲撃者達を撃ち抜いた。
0
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します。
夕立悠理
恋愛
ベルナンデ・ユーズには前世の記憶がある。
そして、前世の記憶によると、この世界は乙女ゲームの世界で、ベルナンデは、この世界のヒロインだった。
蝶よ花よと愛され、有頂天になっていたベルナンデは、乙女ゲームのラストでメインヒーロ―である第一王子のラウルに告白されるも断った。
しかし、本来のゲームにはない、断るという選択をしたせいか、ベルナンデにだけアナウンスが聞こえる。
『愛されイージーモードはサービスを終了しました。ただいまより、嫌われハードモードを開始します』
そのアナウンスを最後に、ベルナンデは意識を失う。
次に目を覚ました時、ベルナンデは、ラウルの妃になっていた。
なんだ、ラウルとのハッピーエンドに移行しただけか。
そうほっとしたのもつかの間。
あんなに愛されていたはずの、ラウルはおろか、攻略対象、使用人、家族、友人……みんなから嫌われておりー!?
※小説家になろう様が一番早い(予定)です
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
農民の少年は混沌竜と契約しました
アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた
少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された
これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
悪役令嬢ですが最強ですよ??
鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。
で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw
ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。
だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw
主人公最強系の話です。
苦手な方はバックで!
乙女ゲームに悪役転生な無自覚チートの異世界譚
水魔沙希
ファンタジー
モブに徹していた少年がなくなり、転生したら乙女ゲームの悪役になっていた。しかも、王族に生まれながらも、1歳の頃に誘拐され、王族に恨みを持つ少年に転生してしまったのだ!
そんな運命なんてクソくらえだ!前世ではモブに徹していたんだから、この悪役かなりの高いスペックを持っているから、それを活用して、なんとか生き残って、前世ではできなかった事をやってやるんだ!!
最近よくある乙女ゲームの悪役転生ものの話です。
だんだんチート(無自覚)になっていく主人公の冒険譚です(予定)です。
チートの成長率ってよく分からないです。
初めての投稿で、駄文ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
会話文が多いので、本当に状況がうまく伝えられずにすみません!!
あ、ちなみにこんな乙女ゲームないよ!!という感想はご遠慮ください。
あと、戦いの部分は得意ではございません。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる