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養育

剣術大会

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そして剣術大会の日がやって来た。

この大会は年に一度、国の闘技場で行われており、一般の部と学生の部に分けて執り行われる。
闘技場はほぼ円形の石造りで観客席は野球場やサッカーのスタジアムの様に階段状にベンチが配置されている。

国王アルザハーンも観に来るという事で、私達は国王と同じ中央部の来賓の席に座らされた。

「私と同じ席で恐縮ですが、どうぞゆるりと御観戦下さい」
「ありがとう。楽しませてもらうわね」

芽依は近くで観たそうだったけど、眺めの良いこの席も気に入ったみたいで、今は颯太の膝の上に座ってご機嫌だ。

実はこの大会に芽依も出たがっていたが流石にそれは無理と言う事で説得した。

大会はトーナメント方式で、すでに予選は終わっており、これから行われるのは本戦のみ。
一般の部は六十四人とかなり多く、見応えがあるとアルザハーンも笑っていた。学生の部は初等部から高等部までが出場できる部門で、こちらは出場枠は三十二人だ。

この国の教育制度は、七歳までが幼児学校。八歳から十二歳が初等部、十三歳から十四歳で中等部、十五歳から十六歳で高等部になっている。

つまり学生の部は最年少は八歳から最年長は十六歳とかなり幅が広い。
身体能力の差で、初等部の子は殆ど本戦には勝ち進んでいない。

驚いた事に、その数少ない初等部の予選通過者にウェークが入っていた。
大会前日まで芽依に付き合わされて模擬戦をしていたのだが、それが功を奏したらしく彼の剣の腕前は格段に成長していた。

今日は一般の部が次々と行われていく。
二回戦までは闘技場を四分割して一度に試合が行われ、三回戦以降は一試合ずつ行われる。
剣術大会なので基本的には剣を使って戦うのだけど、色々な形や大きさの剣を使って試合が繰り広げられていく。

「あれは本物の剣なの?」
「はい。彼らは熟練者なので、大怪我はさせても命を奪う事は致しません。そして負けを認めて去るのも何ら恥ではありません」

そういえばいつもこの時期に泉の水の取引が多かったけど、大会で使っていたのかしら。

試合は次々と進められていき、昼休みを挟んで午後からは準々決勝。
ここまで来ると互いの技術が拮抗している対戦が多く、一試合毎がかなり長い。
元々剣術に興味は無かったけど、迫力のある戦いに思わず息を飲んで見守っていた。

優勝者はこの国の騎士団の者。華麗な剣捌きで相手を翻弄しながら追い詰めていく戦法の使い手だった。
準優勝は騎士ではなく冒険者と言われていた。冒険者とは魔物の討伐から要人の護衛まで、何でもこなす仕事らしい。騎士の攻撃を耐え続け、豪快な一撃で逆転を狙ったが一歩及ばず。素晴らしい戦いだった。

「それではこれよりエキシビジョンマッチを行います」

今日の試合は全て終わりだと思ったけど、まだ何かやるの?

「実はどうしてもと頼まれまして……」

申し訳なさそうに言うアルザハーン。

「ごめんね母さん。僕が提案したんだ。メイがどうしてもあそこで試合がしたいって言うから」

そう言って颯太と芽依が立ち上がる。

「おかーさん、いってきます!」

二人は席を立って闘技場の中へと入って行く。

颯太が判断した事ならいいでしょう。
熱くなって怪我をしない様にして欲しい。

対戦は颯太と芽依の一騎討ち。
二人とも木剣だ。
突然の事で観客達が怒り出したりしないか心配だったが、皆歓迎の拍手をしてくれた。

司会の合図で試合開始。
因みに剣術の試合ではないらしい。何が違うのかと思って見ていたら颯太は魔法を使い出した。
それを素早く避けたり木剣で弾いたりしながら斬りかかる芽依。

始まってから剣と魔法を使った息を切らさぬ攻防に観客達は唖然としていた。

芽依の動きは子供のものではなく、颯太も剣を使いながら魔法を行使する器用さを見せている。

芽依も負けじと魔法を撃ちながら斬り込んだりと攻防は白熱していく。

「ハル様……ソータ様は分かるのですがメイ様はあれ程までに戦えるのですか……」
「ええ。最近剣術を習っていたので」
「そうですか……」

アルザハーンも驚いている。
護衛の騎士達も、「流石は精霊様の御子息と御息女、上級騎士並みの戦闘力ですな」と感心していた。

……二人ともやり過ぎね。
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