79 / 453
養育
剣術
しおりを挟む
何度か芽依の打ち込みを受けてブライドンが言う。
「なかなか良い筋をしているな!」
「あれやりたい!」
芽依が言っているのは一対一の模擬戦の事だった。
「いやいや、流石にお嬢ちゃんには早いだろう」
「そうね芽依にはまだ早いわよ」
「むー……やってみたい~」
駄々をこねる所は子供らしくて可愛いわ。
「じゃあ僕とやろうか?」
颯太がそう言うと芽依は目を輝かせて大きく頷いた。
「大丈夫なの?」
「うん、メイだって少しやったら満足するだろうし、子供のする事だからね。ブライドンさん、木剣を貸してもらえる?」
「おう」
木剣を受け取って片手で構える颯太。
「さあ、いいよ」
「うん!」
嬉しそうに小木剣を構えて斬りかかる芽依。それを受け止める颯太。
芽依は教えていない連撃を颯太に向かって当て始める。颯太は片手で捌いているけど半歩後ろに下がった。
「ほう、あの嬢ちゃんスゲェな……」
両手で持った木剣で勢いよく斬りかかる芽依を見て感心しているブライドン。
「メイ、もういいかな?僕、疲れちゃったよ」
颯太は余裕だけど、芽依が怪我をしないか心配なのだろう。そう言えば芽依はやめてくれると思ったのだが……
「おにーちゃんよゆーじゃん!もっとあそぼーよ!」
不満の声をあげた芽依は両手で持つのをやめて片手で木剣を振り始めた。
さっきよりも動きがいいわね。
芽依は身体を動かすのが好きみたいだわ。
「おいおいあの動き……お嬢ちゃんは何か武術を?」
「いいえ、特には何もやっていません」
芽依は自分で工夫をして斬り込むタイミングや場所を変えて攻撃はしている。
身体の小ささを利点に、颯太の死角に滑り込んで攻撃。
芽依は賢いわね。
颯太も死角に入り込まれても冷静に対処している。ただ、芽依の動きが良くなって行くのに対して困惑し、大きく避ける事が多くなってきた。
そろそろ止めてあげないと颯太が可哀想だわ。
「メイ、もうやめよう。これ以上は怪我をしちゃうよ」
「や!もっとやるの!」
芽依は颯太に攻撃が届かないのが不満の様だ。
颯太は仕方ないといった様子で、芽依の攻撃を受け止めて木剣を跳ね上げると、素早く抱え上げてしまう。
「やー!もっとやるのー!」
「もうお終いだよ。僕も疲れちゃったし、また今度にしようね」
ジタバタと暴れる芽依を笑いながら颯太は抱えている。
「芽依、颯太を困らせちゃ駄目よ?それにもっとやりたければまた来れば良いじゃない」
「……うん」
私が言うと芽依はしょんぼりとしながら頷いた。
このままおてんばに育ったらどうしようか?いや、それも芽依の自由なのだから良いだろう。
「ブライドン先生、これから度々来させて頂いてもよろしいですか?」
「あ、ああ!勿論だとも」
「明日もくるー!」
芽依は毎日来たがりそうね。
特にやらなければいけない事がある訳でもないから、興味を持った事は何でもやらせてあげよう。
「君も良い体捌きをしているじゃないか。これから剣術を修めてみる気はないか?君なら良い剣士になれる」
「悪いけど僕は剣術に興味はないんだ」
「そうか……残念だ」
颯太も良い動きをしていた。それは身体能力だけでやっていた事だし、本人自身も武術に興味はないと言う。
本気でやったらここの誰よりも強くなるだろう。
最後のはただの親馬鹿発言か。
「君、初等魔法科のハルじゃないか?」
近くにやってきて声を掛けてきたのは同じ初等科の生徒らしかった。黒髪赤目の背の高い男の子だ。
「ええ、あなたは?」
「俺は初等武術科のウェーク。魔法科のセシリアの双子の兄なんだ。妹がお世話になったみたいだから」
「初めまして」
彼は今度の剣術大会に出るらしく、授業後はここで修練を重ねているらしい。
「君の妹さんは凄いね。あんな動き初めてみたよ」
「あの子は私の娘なの」
「はっ……?」
今のやり取りを聞いていた全員がこちらを凝視している。
……どうしたのかしら?
「なかなか良い筋をしているな!」
「あれやりたい!」
芽依が言っているのは一対一の模擬戦の事だった。
「いやいや、流石にお嬢ちゃんには早いだろう」
「そうね芽依にはまだ早いわよ」
「むー……やってみたい~」
駄々をこねる所は子供らしくて可愛いわ。
「じゃあ僕とやろうか?」
颯太がそう言うと芽依は目を輝かせて大きく頷いた。
「大丈夫なの?」
「うん、メイだって少しやったら満足するだろうし、子供のする事だからね。ブライドンさん、木剣を貸してもらえる?」
「おう」
木剣を受け取って片手で構える颯太。
「さあ、いいよ」
「うん!」
嬉しそうに小木剣を構えて斬りかかる芽依。それを受け止める颯太。
芽依は教えていない連撃を颯太に向かって当て始める。颯太は片手で捌いているけど半歩後ろに下がった。
「ほう、あの嬢ちゃんスゲェな……」
両手で持った木剣で勢いよく斬りかかる芽依を見て感心しているブライドン。
「メイ、もういいかな?僕、疲れちゃったよ」
颯太は余裕だけど、芽依が怪我をしないか心配なのだろう。そう言えば芽依はやめてくれると思ったのだが……
「おにーちゃんよゆーじゃん!もっとあそぼーよ!」
不満の声をあげた芽依は両手で持つのをやめて片手で木剣を振り始めた。
さっきよりも動きがいいわね。
芽依は身体を動かすのが好きみたいだわ。
「おいおいあの動き……お嬢ちゃんは何か武術を?」
「いいえ、特には何もやっていません」
芽依は自分で工夫をして斬り込むタイミングや場所を変えて攻撃はしている。
身体の小ささを利点に、颯太の死角に滑り込んで攻撃。
芽依は賢いわね。
颯太も死角に入り込まれても冷静に対処している。ただ、芽依の動きが良くなって行くのに対して困惑し、大きく避ける事が多くなってきた。
そろそろ止めてあげないと颯太が可哀想だわ。
「メイ、もうやめよう。これ以上は怪我をしちゃうよ」
「や!もっとやるの!」
芽依は颯太に攻撃が届かないのが不満の様だ。
颯太は仕方ないといった様子で、芽依の攻撃を受け止めて木剣を跳ね上げると、素早く抱え上げてしまう。
「やー!もっとやるのー!」
「もうお終いだよ。僕も疲れちゃったし、また今度にしようね」
ジタバタと暴れる芽依を笑いながら颯太は抱えている。
「芽依、颯太を困らせちゃ駄目よ?それにもっとやりたければまた来れば良いじゃない」
「……うん」
私が言うと芽依はしょんぼりとしながら頷いた。
このままおてんばに育ったらどうしようか?いや、それも芽依の自由なのだから良いだろう。
「ブライドン先生、これから度々来させて頂いてもよろしいですか?」
「あ、ああ!勿論だとも」
「明日もくるー!」
芽依は毎日来たがりそうね。
特にやらなければいけない事がある訳でもないから、興味を持った事は何でもやらせてあげよう。
「君も良い体捌きをしているじゃないか。これから剣術を修めてみる気はないか?君なら良い剣士になれる」
「悪いけど僕は剣術に興味はないんだ」
「そうか……残念だ」
颯太も良い動きをしていた。それは身体能力だけでやっていた事だし、本人自身も武術に興味はないと言う。
本気でやったらここの誰よりも強くなるだろう。
最後のはただの親馬鹿発言か。
「君、初等魔法科のハルじゃないか?」
近くにやってきて声を掛けてきたのは同じ初等科の生徒らしかった。黒髪赤目の背の高い男の子だ。
「ええ、あなたは?」
「俺は初等武術科のウェーク。魔法科のセシリアの双子の兄なんだ。妹がお世話になったみたいだから」
「初めまして」
彼は今度の剣術大会に出るらしく、授業後はここで修練を重ねているらしい。
「君の妹さんは凄いね。あんな動き初めてみたよ」
「あの子は私の娘なの」
「はっ……?」
今のやり取りを聞いていた全員がこちらを凝視している。
……どうしたのかしら?
0
お気に入りに追加
431
あなたにおすすめの小説
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
転生したら妖精や精霊を統べる「妖精霊神王」だったが、暇なので幼女になって旅に出ます‼︎
月華
ファンタジー
21歳、普通の会社員として過ごしていた「狐風 空音」(こふう そらね)は、暴走したトラックにひかれそうになっていた子供を庇い死亡した。 次に目を覚ますとものすごい美形の男性がこちらを見、微笑んでいた。「初めまして、空音。 私はギレンフイート。全ての神々の王だ。 君の魂はとても綺麗なんだ。もし…君が良いなら、私の娘として生まれ変わってくれないだろうか?」えっ⁉︎この人の娘⁉︎ なんか楽しそう。優しそうだし…よしっ!「神様が良いなら私を娘として生まれ変わらせてください。」「‼︎! ほんとっ!やった‼︎ ありがとう。これから宜しくね。私の愛娘、ソルフイー。」ソルフィーって何だろう? あれ? なんか眠たくなってきた…? 「安心してお眠り。次に目を覚ますと、もう私の娘だからね。」「は、い…」
数年後…無事に父様(神様)の娘として転生した私。今の名前は「ソルフイー」。家族や他の神々に溺愛されたりして、平和に暮らしてたんだけど…今悩みがあります!それは…暇!暇なの‼︎ 暇すぎて辛い…………………という訳で下界に降りて幼女になって冒険しに行きます‼︎!
これはチートな幼女になったソルフイーが下界で色々とやらかしながらも、周りに溺愛されたりして楽しく歩んでいく物語。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お久しぶりです。月華です。初めての長編となります!誤字があったり色々と間違えたりするかもしれませんがよろしくお願いします。 1週間ずつ更新していけたらなと思っています!
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。
亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません!
いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。
突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。
里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。
そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。
三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。
だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。
とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。
いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。
町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。
落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。
そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。
すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。
ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。
姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。
そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった……
これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。
※ざまぁまで時間かかります。
ファンタジー部門ランキング一位
HOTランキング 一位
総合ランキング一位
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる