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養育

屋敷

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馬車から降りて玄関前で屋敷を見上げていたら声を掛けられる。

「ようこそお越しくださいました。」

玄関の前には男女合わせて十人の使用人が私達に挨拶をしてきた。

「ザハーン、ここはあなたの屋敷なの?」
「私の別邸でございます。ハル様方にはここでお過ごし頂こうとご用意させていただきました」

この屋敷を、私達だけで使わせて貰えるの?

「ザハーンも一緒なの?」
「いえ、私は本宅に戻ります。こちらにご滞在の間はこの使用人達がお世話をさせていただきます」

ザハーンは仕事があるから別の方が良いのかしら。何にせよ迷惑は掛けてはいけない。

「家令のアルフレッドと申します。本日より皆様のお世話をさせていただきます。宜しくお願い申し上げます」

アルフレッドは四十代位の英国紳士の様な風貌の魔族の男性だった。

「ご丁寧にありがとう。私はハルです。こっちは……」

全員を紹介する。
カナエとギョクリュウを見て一瞬驚いていたが、すぐに表情を消して綺麗なお辞儀をしている。

使用人は家令のアルフレッド、侍女、家政婦長、メイドが三名、シェフ、従者、厩番、従僕。全員魔族の様だ。

私達が滞在する為にこんなに人を用意してくれたのかしら?

「それではご案内致します」
「お願いします」
「それでは私はこれにて。夜食の時間にお伺いさせていただきます」
「ええ、ありがとう」

そう言ってザハーンは馬車に乗って帰って行った。

ギョクリュウは厩番に案内されて馬車を引いたまま厩舎の方へと移動していく。

私達はアルフレッドに屋敷の中を案内してもらう。家政婦長、侍女、メイド三人は後ろをついてくる。

部屋はいくつあるのだろうか?高級ホテルの様な佇まいで何だか申し訳なくなってしまう。

「皆様にはそれぞれ一部屋ずつと言われておりますが……」
「私と芽依とカナエは同じにして欲しいのだけど」
「畏まりました」

私達が通されたのはスイートルームの様に何部屋も繋がっている部屋だった。

「何か御用がありましたら呼び鈴をお使いください。こちらの部屋に待機しているメイドがすぐに参ります」

これなら颯太も同じ部屋で良かったのではないだろうか?
まあ、気分でこちらで寝てもらってもいいと思うので、取り敢えずはそのままという事で。

「旦那様からお召し物をご用意させていただきました。お好きなものをお選びください」

クローゼットを開けて見せてくれる。

私用のドレスと芽依用のドレスと靴がズラリと並んでいた。
こんなに用意をしてくれたの?
流石にお金を掛け過ぎではないだろうか?

「どれが良いのか分からないわ。申し訳ないのだけど、選んでもらえるかしら?」

「畏まりました」
「それでは私が選ばさせていただきます。家政婦長のメアリーと申します」
「着付けは家政婦長と私、アンナがさせていただきます」

メアリーは三十代位の長い黒髪の女性で、アンナは二十代前半のセミロングの銀髪の女性。
私には薄紫色のカジュアルなドレスを、芽依には青色のフレアードレスを選んでくれた。

私にはメアリーが芽依にはアンナが着付けをしてくれる。

「お二人ともとても良くお似合いですよ」

お世辞であっても嬉しいものだ。

「ありがとう。こんな格好初めてしたから不思議な感じよ」
「おかーさんとってもキレイ!」
「芽依も可愛らしいわよ」
「えへへー」

暫く互いの服を見ては大人気なくはしゃいでしまった。

「ごめんなさいね」
「いいえ、気に入っていただけた様で幸いです」

メアリーもアンナも笑顔で言ってくれる。
そういえば颯太はアルフレッドが見てくれているみたいだけど、着替えたのかしら?

コンコンもドアがノックされ、アンナが対応する。
扉が開いて入ってきたのは紺のジャケットに白のシャツを着た颯太だった。

「あら颯太、良く似合っているわ。見違えちゃった」
「母さんとメイもよく似合っているよ」

颯太は私達を見ながら優しい笑顔で言ってくれる。

「皆様非常に良くお似合いでございます」

アルフレッドも恭しくお辞儀をしながら褒めてくれた。
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