5 / 12
魔術、習得したい!
想像の本
しおりを挟む
「……長生き、な」
ライチはそう言って、不敵に笑う。少女を見る左目は、熱を持つ。
その目が、その口元が、彼女を焼き焦がすように感じる。見ているだけの俺も例外じゃない。それは憎悪の炎だろうか、はたまたそれ以外か。どちらにせよ、それは人を殺せる熱だ────!
「そんなものは、いいものじゃない。そう言っておいてやる」
言い返したライチに、少女は眉をひそめた。もう一度ライチを見ると、不敵な笑みは自然と無表情に戻っている。俺はその寒暖差に、心臓が激しく鼓動する。自然と汗が吹き出し、そこにいる二人がただ者じゃないことをはっきりさせる。
「ふーん……あなた、ただの魔術師じゃなさそうね。画像解析、データ照合するわ」
少女も何か感じ取ったかもしれない。俺に向けられた目じゃないのに、俺が震えが止まらない、でも二人は平常だ。
……それがなおさら怖いんだよ。周囲の空気すら変えてしまうような圧を、二人は発しているのに、どちらにも影響がないなんて。
「永遠の少女、レーゼン。長生きの秘訣は、魔術と科学のハイブリッドときたか。悪くない、我々はそれが最善だ」
「ずいぶんと喋るのね……データにない魔術師さん。ここまで派手に動いていたら、何回か目についていたはずだけど」
「今回はこれが初めてだ、データになくて当然。書き加えられるかは……さておき」
話している途中に、ライチは行動に出る。すぐさま右手を空間にかざし、呪文を唱えた。
「存在、遮蔽!」
少女の表情が、少し曇る。その隙に、ライチは俺の手を握り、走り出した。
「逃げるぞ! あんなやつ、相手にしても死ぬだけだ!」
「なっ……何が起こったかよくわかんないけど、正しいと思うよ、それ!」
ライチはさっきまでいた吹雪の中へ、戻ろうとしていた。スキー板はすぐにライチがどこかへ仕舞って、俺たちは素足で走っている。今は魔術を使う余裕もなく、ただ距離を取ることが大事だ。
俺は、こんな状況でこの先を考えていた。魔術を早く使えるようにして、科学軍と戦う時も苦戦しないように、これからしっかり頑張らなきゃいけない。 そうだ、そうすれば次だって……
「────この程度で逃げられたとでも?」
────絶句。目の前に立ちふさがった少女を前に、俺は思わず足を止めた。
宙づりの少女の手には、何かがついている。それがわずかな知識で銃口とわかったのが、関の山だ。
「カガリ────!」
そうか、次はないのか。うん、さすがにこれは無理だったかな。油断もしてたし、いろいろわかってなかったし、仕方ないよね。
その事実を前にゆっくりと目を閉じ、死を覚悟した。意識が完全に闇に落ちる前、俺は少し思いとどまる────俺の生きるって、こんなものだったのか?
耳を貫くような、発砲音。どうしてこんなにゆっくりに感じるかはわからないが、この後は弾丸が体を貫通するんだろう。死ぬ瞬間を、ゆっくりとゆっくりと、味わうように体感する。
……いや、待て。これはさすがに遅すぎるだろう。目を開けると、そこには止まった弾丸がある。いいや、動きがすごく遅くなっている?
冷静に考えろ、状況をよく見るんだ。少女の動きは笑みを浮かべたまま、完全に止まっている。ライチは、手を伸ばして魔術をかける途中みたいだ。魔術っぽい螺旋が、手から離れる前に止まっている。
「周りは……」
ここで声が出ることを確認し、自分だけがしっかり動けることを理解する。空の雲は動きを止め、砂ぼこりは広がりが遅い。空中に虫のようなものが3匹、素早く動く羽が止まりそうなほどゆっくりと動く。見た目は機械だし、これで俺たちを追いかけてきたみたいだ。
そこには時間が停止したに近いほど、ゆっくりと時が流れていた。でも、どうして? とりあえず、弾丸の軌道から離れる。この時が止まっている間にライチを抱え、できる限り遠くへ走りだした。
「もちろん、こんなのずっと続くわけないし、何とかしなきゃ……」
想像力を働かせろ、何かあるはずだ。
抱きかかえ走るにも、スピードが足らない。あの虫が動き出したら、俺たちはまた見つかるだろう。このあたりに隠れられそうなものは……ないなぁ。建物の残骸しかない。
「ライチが何か持ってないかな」
そう言えば、最初に出会った時から、ライチはどこからともなくものを出す。それは何か体に……隠し扉とか、隠しポケットとか……
服のあたりをゴソゴソと探ると、そこから紫色の巾着が出てきた。これっぽいなと思って手を入れると、袋の中は思ったより広い。やっぱり持ってるじゃないか、隠し巾着!
「なんか……役立ちそうなもの……」
巾着の中がガチャガチャと音を立てる。もっとライチみたいにスムーズに出せればいいんだけど。とりあえず持てそうなものは……
「これは、触った感じ本かな」
取り出したのは、汚い本。いかにも古そうで、いかにも魔導書っぽい。ここにお役立ちの魔術が乗っていて、俺を何とか助けてくれる……なんて考えは甘いだろうか。
「……何も書いてないっ!」
甘かった。開くとそこは白紙、何も書いていない古い紙だった。触ってみたり、息を吹きかけてみたりするが、何の反応もない。そうしている間にも、だんだん時は流れ始める。次第に何もかもが動き始め、俺に残された時間は少なかった。
どうすればいい、どうすればこの状況を打破できる? 誰に願っても、一人だけの時間で叶えてくれる人はいない。自分しかいないんだから。
たった一人しかいないのに、助けてくれは甘い。一人でいるということは、一人で戦うと決めたこと。それがどんな理由だったとしても、生きる限りどこかで戦わなければいけない。
────俺は何もできない、でも何もしないまま終わりたくはないんだ。この時が止まったチャンス、逃すものか!
「……ここは俺一人。叶える人がいないなら、自分の願いは自分で叶える! かかってこい現実、俺は逃げない!」
チャンスは逃がさないし、俺は逃げない。何もできないけど、何かはできる。
そんな、空想と現実を行き来しながら、不安定でも戦っていく。
……今の俺は、それでいい。
────俺の時は動き出す、現実は息を吹き返す。そして一人、空想から帰還した────
「あら、逃げても無駄よ」
少女は状況を見て、すぐに弾丸を放つ。ライチの時はまだ動き出していない、彼女のほうが早かったんだ。冷静で無駄がなくて、完璧だ。でも俺だって、ただ自分の時間を使ったわけじゃない。
「無駄なんてない、俺は覚悟を決めてきた!」
もちろん、この状況を打開する策はない。それでも、逃げずに戦うと決めた。俺は俺のできる限りをやる、そして満足して終わってやるんだ!
放たれた弾丸を、その分厚い本で受け止める。相手もただの弾丸ではない。本に触れたとたん、ビリビリと焼けるような電流が流れてくる。そしてその勢いは衰えることなく、加速している。ドリルのようにそのまま、穴をあけそうな勢いだ。
「ぐっ……あぁっ!!」
両手が今にも焼ききれそうだ。体中が危険と叫ぶ、手を放せという。手を離せば弾丸が命中する、しかし離さなければ焼き焦がされる。どちらにせよあるものは死だった。
「無意味で……終われるかっ……!」
限界が近い、その時だ────
ライチはそう言って、不敵に笑う。少女を見る左目は、熱を持つ。
その目が、その口元が、彼女を焼き焦がすように感じる。見ているだけの俺も例外じゃない。それは憎悪の炎だろうか、はたまたそれ以外か。どちらにせよ、それは人を殺せる熱だ────!
「そんなものは、いいものじゃない。そう言っておいてやる」
言い返したライチに、少女は眉をひそめた。もう一度ライチを見ると、不敵な笑みは自然と無表情に戻っている。俺はその寒暖差に、心臓が激しく鼓動する。自然と汗が吹き出し、そこにいる二人がただ者じゃないことをはっきりさせる。
「ふーん……あなた、ただの魔術師じゃなさそうね。画像解析、データ照合するわ」
少女も何か感じ取ったかもしれない。俺に向けられた目じゃないのに、俺が震えが止まらない、でも二人は平常だ。
……それがなおさら怖いんだよ。周囲の空気すら変えてしまうような圧を、二人は発しているのに、どちらにも影響がないなんて。
「永遠の少女、レーゼン。長生きの秘訣は、魔術と科学のハイブリッドときたか。悪くない、我々はそれが最善だ」
「ずいぶんと喋るのね……データにない魔術師さん。ここまで派手に動いていたら、何回か目についていたはずだけど」
「今回はこれが初めてだ、データになくて当然。書き加えられるかは……さておき」
話している途中に、ライチは行動に出る。すぐさま右手を空間にかざし、呪文を唱えた。
「存在、遮蔽!」
少女の表情が、少し曇る。その隙に、ライチは俺の手を握り、走り出した。
「逃げるぞ! あんなやつ、相手にしても死ぬだけだ!」
「なっ……何が起こったかよくわかんないけど、正しいと思うよ、それ!」
ライチはさっきまでいた吹雪の中へ、戻ろうとしていた。スキー板はすぐにライチがどこかへ仕舞って、俺たちは素足で走っている。今は魔術を使う余裕もなく、ただ距離を取ることが大事だ。
俺は、こんな状況でこの先を考えていた。魔術を早く使えるようにして、科学軍と戦う時も苦戦しないように、これからしっかり頑張らなきゃいけない。 そうだ、そうすれば次だって……
「────この程度で逃げられたとでも?」
────絶句。目の前に立ちふさがった少女を前に、俺は思わず足を止めた。
宙づりの少女の手には、何かがついている。それがわずかな知識で銃口とわかったのが、関の山だ。
「カガリ────!」
そうか、次はないのか。うん、さすがにこれは無理だったかな。油断もしてたし、いろいろわかってなかったし、仕方ないよね。
その事実を前にゆっくりと目を閉じ、死を覚悟した。意識が完全に闇に落ちる前、俺は少し思いとどまる────俺の生きるって、こんなものだったのか?
耳を貫くような、発砲音。どうしてこんなにゆっくりに感じるかはわからないが、この後は弾丸が体を貫通するんだろう。死ぬ瞬間を、ゆっくりとゆっくりと、味わうように体感する。
……いや、待て。これはさすがに遅すぎるだろう。目を開けると、そこには止まった弾丸がある。いいや、動きがすごく遅くなっている?
冷静に考えろ、状況をよく見るんだ。少女の動きは笑みを浮かべたまま、完全に止まっている。ライチは、手を伸ばして魔術をかける途中みたいだ。魔術っぽい螺旋が、手から離れる前に止まっている。
「周りは……」
ここで声が出ることを確認し、自分だけがしっかり動けることを理解する。空の雲は動きを止め、砂ぼこりは広がりが遅い。空中に虫のようなものが3匹、素早く動く羽が止まりそうなほどゆっくりと動く。見た目は機械だし、これで俺たちを追いかけてきたみたいだ。
そこには時間が停止したに近いほど、ゆっくりと時が流れていた。でも、どうして? とりあえず、弾丸の軌道から離れる。この時が止まっている間にライチを抱え、できる限り遠くへ走りだした。
「もちろん、こんなのずっと続くわけないし、何とかしなきゃ……」
想像力を働かせろ、何かあるはずだ。
抱きかかえ走るにも、スピードが足らない。あの虫が動き出したら、俺たちはまた見つかるだろう。このあたりに隠れられそうなものは……ないなぁ。建物の残骸しかない。
「ライチが何か持ってないかな」
そう言えば、最初に出会った時から、ライチはどこからともなくものを出す。それは何か体に……隠し扉とか、隠しポケットとか……
服のあたりをゴソゴソと探ると、そこから紫色の巾着が出てきた。これっぽいなと思って手を入れると、袋の中は思ったより広い。やっぱり持ってるじゃないか、隠し巾着!
「なんか……役立ちそうなもの……」
巾着の中がガチャガチャと音を立てる。もっとライチみたいにスムーズに出せればいいんだけど。とりあえず持てそうなものは……
「これは、触った感じ本かな」
取り出したのは、汚い本。いかにも古そうで、いかにも魔導書っぽい。ここにお役立ちの魔術が乗っていて、俺を何とか助けてくれる……なんて考えは甘いだろうか。
「……何も書いてないっ!」
甘かった。開くとそこは白紙、何も書いていない古い紙だった。触ってみたり、息を吹きかけてみたりするが、何の反応もない。そうしている間にも、だんだん時は流れ始める。次第に何もかもが動き始め、俺に残された時間は少なかった。
どうすればいい、どうすればこの状況を打破できる? 誰に願っても、一人だけの時間で叶えてくれる人はいない。自分しかいないんだから。
たった一人しかいないのに、助けてくれは甘い。一人でいるということは、一人で戦うと決めたこと。それがどんな理由だったとしても、生きる限りどこかで戦わなければいけない。
────俺は何もできない、でも何もしないまま終わりたくはないんだ。この時が止まったチャンス、逃すものか!
「……ここは俺一人。叶える人がいないなら、自分の願いは自分で叶える! かかってこい現実、俺は逃げない!」
チャンスは逃がさないし、俺は逃げない。何もできないけど、何かはできる。
そんな、空想と現実を行き来しながら、不安定でも戦っていく。
……今の俺は、それでいい。
────俺の時は動き出す、現実は息を吹き返す。そして一人、空想から帰還した────
「あら、逃げても無駄よ」
少女は状況を見て、すぐに弾丸を放つ。ライチの時はまだ動き出していない、彼女のほうが早かったんだ。冷静で無駄がなくて、完璧だ。でも俺だって、ただ自分の時間を使ったわけじゃない。
「無駄なんてない、俺は覚悟を決めてきた!」
もちろん、この状況を打開する策はない。それでも、逃げずに戦うと決めた。俺は俺のできる限りをやる、そして満足して終わってやるんだ!
放たれた弾丸を、その分厚い本で受け止める。相手もただの弾丸ではない。本に触れたとたん、ビリビリと焼けるような電流が流れてくる。そしてその勢いは衰えることなく、加速している。ドリルのようにそのまま、穴をあけそうな勢いだ。
「ぐっ……あぁっ!!」
両手が今にも焼ききれそうだ。体中が危険と叫ぶ、手を放せという。手を離せば弾丸が命中する、しかし離さなければ焼き焦がされる。どちらにせよあるものは死だった。
「無意味で……終われるかっ……!」
限界が近い、その時だ────
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる