上 下
17 / 76

第17話 3家族サークル その1

しおりを挟む
その話は降って湧いたようにして出てきた。

「はぁ~、海行きたいねぇ」
「はいィ? 何よいきなり沙奈枝、そんなこと言って」

「いやぁ何ねぇ、この前さぁ、パパとモールに出かけた時になんか気になるていうか、よさげな水着見つけちゃってさぁ」
「パパに買ってもらったの?」
「あははは、美奈子、よくわかるねぇ」
「なんとなく」

「あああ、もしかして沙奈枝のパパさん、それ沙奈枝に着させてプレイしようなんて……」
「ちょっと待て朋絵! おニューの水着でそんなことはしないぞぉ! スク水だったらいいけど」
「スク水だったら? そっちの方がなんかエロイわぁ。そう言うのもやってんだ朋絵んとこは」
「えへへへへ」照れ笑いする朋絵。顔がちょっと赤い。

私がきょとんとしてると。
そのすきに朋絵がひょいと私のお弁当箱から卵焼きをつまんで口に「あむっ!」とほおばった。
「ああああ、この甘い卵焼きとっても美味しい。さすが沙奈枝のお母さんが作る卵焼きはいつの絶品ですなぁ」
「ああ朋絵、私の卵焼きぃ―。最後のお楽しみに取っておいたのにぃ」
「ごちそうさまでした」
「もう――――!!」ちょっとぷんとした顔をすると

「はい、アーんして」美奈子が自分のお弁当箱から、卵焼きをつまんで私の方に差し出した。
「あむっ」と、その卵焼きを口にする。
「美味しいい!! 美味しいよう美奈子」
「はいはい、それはようございました。私が作った卵焼きですけど、お口に合ったみたいで」

「へぇ、美奈子が作ったんだこの卵焼き。上手!」
「そうかなぁ。普通だと思うんだけど。でも料理は好きだから。……お父さんに食べてもらえると思うとうれしくて沢山作っやうのが困り者だね。この前もお母さんから、今日は何の日? なんて言われちゃった」

はぁ、美奈子はほんとお父さんラブだよねぇ。
まぁこの前の朋絵のお父さんとのことは聞いたけど、それ以来なんか前よりラブ度上がってんじゃないの?
「でさぁ、海いきたいぁ―いって言うけどさぁ。私達のお小遣いで行ける?」
「ひぇ―、現実をたたきつけないでよ美奈子。無理無理。いけるわけないじゃん」

「だったらまた稼ぐ? ”あれで”」
「あれって、あれでしょ。う―――――ん」と、考えてみたものの、”あれ”って援助交際のことで、ちょっと怖い目にあってたし、それにもう、知らないおじさんに媚び売るのはなんか嫌だなぁ。
「私はやんない!」美奈子はきっぱりと断った。
「そっかぁ。そうだよねぇ」
「う――――――ん」
「あのねぇ沙奈枝、あんたやる気もないんでしょ。それなのに悩んでいるふりしないの!」
「あれぇ、やっぱりばれてたかぁ」

「もうバレバレよ。やっぱ”あれ”はやめておこう」
こうんこくんと3人ともうなずいて、意思統合。
「でも私達ってお金稼ぐことも出来ないのがつらいよねぇ。ああ、これがさぁ、高校生くらいだったらバイトでもして、お金貯められるんだけどなぁ」
無理だよねぇ。中学生を雇ってくれるとこなんてないからねぇ。

現実直視! 厳しいねぇ。

それと私たちの計画にはまだ課題が残っている。
私のお母さんと朋絵のお父さん。朋絵のお父さんと美奈子のお父さん。この二つのカップルは成立しているんだけど、うちのお父さんと、美奈子のお母さんがまだくっついていないんだなこれが。

美奈子のお母さんも話によると、今まで付き合っていたセフレさんとは別れたみたいなんだけど、お互いにまだフリーであることは好都合。
なんとかこの状態のうちに、くっ付けないと!
ここさえ、完璧にくっついちゃえば、3家族サークルは完成するんだよねぇ。

でもなんかすごいこと考えるよ美奈子は。
その美奈子のお母さん。うちのおお父さんのとの接点がほとんどないっていうのが問題。
まぁ家族ぐるみでなんかこう一緒になることなんて、小学校の時の運動会とか、あと中学になってからは学校祭くらいだもんね。
私達部活もやっていないから、部活での交流もないしさ。

うちのお母さんと朋絵のお母さんはどうやってお父さんたちと関係を持つようになったんだろう。
これはお母さんから聞くしかないか。
ちょっと気が引ける気もするけど、あ、もしかして朋絵ならなんか聞いているかも?

「あのさ、朋絵」
「ん、何?」デザートで用意していたヨーグルトをスプーンで口に入れて、パクリと開いて口の中を見せた。
おいおい、それはかなり誤解を招くぞ! 学校じゃやばいぞこら朋絵!
ごっくん!とのどを鳴らして飲み込むと。

「えへへへ。」笑いながら
「どうしたのよ?」

「あのさ、朋絵のお母さんと美奈子のお父さんてどうやって関係持つようになったのか聞いている?」
「ああ、そのことね。聞いてるよ」

と、朋絵が言ったとき、私のスマホからメッセージの着信音が鳴った。
お母さんからだった。開いてみると……。

「やったぁ! 懸賞当たちゃったぁ!」

へっ? 懸賞?

「海山どちらでも楽しめる。天然温泉旅館無料クーポン券。ゲット!」


おっ! こ、これは……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒミツの能力~時間停止能力所持の兄と~

イセヤ レキ
恋愛
※この作品は、R18の作品です。また他にも読む方を選ぶキーワードのある作品となりますので、ご注意下さい※ 西暦2×00年。 超能力を所持する人間がエリートと呼ばれ、特別扱いをされる時代で、時間停止能力所持者の兄を持つ亜矢音(妹)。 しかし兄は、その能力を使って、溺愛している亜矢音の身体を開発していくのであった。 何でもこいな方向けのお話です。←大事 ※がっつり近親相姦(兄×妹、年の差五歳)です。 ※ヒロインハート喘ぎや、ヒーローの台詞にも♡入ります。 ※ヒーローはヘタレです。 ※モラル等色々気になる繊細な方はUターン下さい。 ※時間停止能力ものですが、女性向けの内容です。 ギャグ/ほのぼの/未来/超能力/ハッピーエンド/日常/近親相姦/兄妹/♡喘ぎ/淫語/開発

二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです

矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。 それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。 本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。 しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。 『シャロンと申します、お姉様』 彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。 家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。 自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。 『……今更見つかるなんて……』 ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。  これ以上、傷つくのは嫌だから……。 けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。 ――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。 ◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _) ※感想欄のネタバレ配慮はありません。 ※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m

イカセテクダサイゴシュジンサマ

但馬憂姫
BL
イカせてもらえず涙する少年のお話。

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨
ファンタジー
テンプレのような展開で、僕はグロリエスという世界に転生した。 クソみたいな人生を送っていた僕は、人間なんて絶滅すれば良いと思っていたせいで……魔王となって転生を果たしてしまったようだ。 都合のいいことに、ステータスはカンスト、スキルは笑っちゃうくらいチートで、これから、この世界の人間を皆殺しにしないといけない。 まったく、なんて簡単なお仕事なのだろう。 こうなったら、前世の恨みをこの世界で晴らしてやる! そんな決意を胸に、魔物サイドのチート物語を伝説へと変える。 *** 完結いたしました! (即答ではありませんが、感想をいただければ感謝を込めて返信いたします! ただ、強い心を持ち合わせてはいないので、心が折れてしまった場合は断念させてください……) ※とぉ様からイラストを提供していただきました! 掲載許可をいただきましたので、表紙、挿絵として使用させていただいております。 この作品を愛でていただき感謝しかありません! あざっす!

処理中です...