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第50話 あの子とこの娘とそして君もなの? ACT 16
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「笹崎君、本当にあの子と付き合っているの?」
ブルブルと顔を振った。
「付き合っているとかそういうんじゃないんだけど」
「でもお弁当作ってあげたんでしょ」
「そ、それは……その」
「キスもしたって……」
まったくもって否定は出来ないこの状況。
ふと見る地面に落ちた弁当の残骸。とにかくこれ、片付けないと。
問われながらも、しゃがみ弁当の残骸を片付けた。そっと杉村の手が僕の手に触れる。
「今日、また……来ない?」
「えっ!」
「勉強、教えてくれるんでしょ」
「怒ってるんじゃないの?」
「どうして、私が怒らないといけないのよ」
「だって……」
「べ、別に。気にしていないから」
そう言い、スクっと立ち上がり「もうじき休み時間終わるよ」そう言って、教室の方に歩き始めた。
地面に落ちた弁当を片付けて僕も教室に戻ると、杉村は戸鞠と話していた。何もなかったかのように。
ちらっと僕の姿をみて、そのあと話しかけることもなかった。
午後の授業も終わり、生徒玄関の下駄箱に手をかけようとした時、「笹崎君」と僕を呼び止める声。振り向けば杉村だった。
杉村は淡々と「もう、帰るんだったら、声かけてくれたっていいんじゃない? 今日来るんでしょ」
「あ、ごめん。うん、行くよ」
杉村はにっこりをほほ笑んで「それじゃ一緒に帰ろ」と言った。
雲が空を泳いでいた。
流れる雲の隙間から見える青空。多分、今日も夜に雨が降るのかもしれないな。
そして感じる。一雨ごとに夏が遠ざかっていくのを。
「ねぇ、笹崎君ちょっと寄り道していい?」
「寄り道?」
「うん、買い物。うちの方に行くとお店少ないから、こっちで買いも済ませたいんだけど」
「別にいいよ」と言った手前、あとには引けなかった。
す、杉村、お前これってもしかして企画的犯行か! 両手にずっしりと重みを感じさせる袋を持ちなんとか杉村の家の前までやってきた。
「重かったでしょ」
そう聞かれて、ものすごく重かったと答えるほど、僕らの仲は親密ではない。
「大丈夫だよ。これくらい」
「ああ、よかった。本当はね、一人じゃ多分持てないからどうしよかなって思っていたの」
もしかしてはじめっから今日は荷物持ちに僕を誘ったのか?
「あ、誤解しないでよ。笹崎君を荷物持ちのために誘ったんじゃないから」
すぐにそんなことを返さないでくれ。なんだかもう僕の考えていることがすべて見透かされているようだ。
あの格子戸のカギを開けようとした杉村の手が止まった。
鍵が開いていたみたいだ。
カラカラと音を立て、戸を開けると、人の気配がする。
そして奥から「おや、帰ってきたのかい」と声がした。
杉村はその声に返すように「ただいま」と言った。そして奥から現れた人。
杉村はその人に「おばあちゃん来ていたの」と言う。
おばあちゃん。て、言うことはこの人が。見た目はおばあちゃんと呼ばれるのにはまだ若そうな女性だ。
団子頭にかんざしを挿し、すっとした目鼻のきれいな人だった。
「おや、何だい。愛華、珍しいねぇ。いやっ初めてじゃないのか。男の子と一緒にしかも家に連れ込んだりして」
「な、なに言ってるのよ! 連れ込んだなんて」ちょっとむすっとして言う。
「あははは、そうかいそうかい。でも荷物なんてもたせてさ、なんかいい感じじゃないの」にまぁーとしながら言う。おばあさんの凛とした雰囲気が少し崩れたような感じがした。
「あ、ごめん笹崎君、ホント重かったでしょ。もう置いていいから」
あわてて、杉村が僕の持つ荷物を手に取ると「お、重い……本当に重かったんだ」
顔を真っ赤にしながら言った。
「ほんと何やってんだか。ほら早く上がりな」
言われるままに、また杉村の家に上がり込んでいく。
昨日と今日。
二日連続で。
ブルブルと顔を振った。
「付き合っているとかそういうんじゃないんだけど」
「でもお弁当作ってあげたんでしょ」
「そ、それは……その」
「キスもしたって……」
まったくもって否定は出来ないこの状況。
ふと見る地面に落ちた弁当の残骸。とにかくこれ、片付けないと。
問われながらも、しゃがみ弁当の残骸を片付けた。そっと杉村の手が僕の手に触れる。
「今日、また……来ない?」
「えっ!」
「勉強、教えてくれるんでしょ」
「怒ってるんじゃないの?」
「どうして、私が怒らないといけないのよ」
「だって……」
「べ、別に。気にしていないから」
そう言い、スクっと立ち上がり「もうじき休み時間終わるよ」そう言って、教室の方に歩き始めた。
地面に落ちた弁当を片付けて僕も教室に戻ると、杉村は戸鞠と話していた。何もなかったかのように。
ちらっと僕の姿をみて、そのあと話しかけることもなかった。
午後の授業も終わり、生徒玄関の下駄箱に手をかけようとした時、「笹崎君」と僕を呼び止める声。振り向けば杉村だった。
杉村は淡々と「もう、帰るんだったら、声かけてくれたっていいんじゃない? 今日来るんでしょ」
「あ、ごめん。うん、行くよ」
杉村はにっこりをほほ笑んで「それじゃ一緒に帰ろ」と言った。
雲が空を泳いでいた。
流れる雲の隙間から見える青空。多分、今日も夜に雨が降るのかもしれないな。
そして感じる。一雨ごとに夏が遠ざかっていくのを。
「ねぇ、笹崎君ちょっと寄り道していい?」
「寄り道?」
「うん、買い物。うちの方に行くとお店少ないから、こっちで買いも済ませたいんだけど」
「別にいいよ」と言った手前、あとには引けなかった。
す、杉村、お前これってもしかして企画的犯行か! 両手にずっしりと重みを感じさせる袋を持ちなんとか杉村の家の前までやってきた。
「重かったでしょ」
そう聞かれて、ものすごく重かったと答えるほど、僕らの仲は親密ではない。
「大丈夫だよ。これくらい」
「ああ、よかった。本当はね、一人じゃ多分持てないからどうしよかなって思っていたの」
もしかしてはじめっから今日は荷物持ちに僕を誘ったのか?
「あ、誤解しないでよ。笹崎君を荷物持ちのために誘ったんじゃないから」
すぐにそんなことを返さないでくれ。なんだかもう僕の考えていることがすべて見透かされているようだ。
あの格子戸のカギを開けようとした杉村の手が止まった。
鍵が開いていたみたいだ。
カラカラと音を立て、戸を開けると、人の気配がする。
そして奥から「おや、帰ってきたのかい」と声がした。
杉村はその声に返すように「ただいま」と言った。そして奥から現れた人。
杉村はその人に「おばあちゃん来ていたの」と言う。
おばあちゃん。て、言うことはこの人が。見た目はおばあちゃんと呼ばれるのにはまだ若そうな女性だ。
団子頭にかんざしを挿し、すっとした目鼻のきれいな人だった。
「おや、何だい。愛華、珍しいねぇ。いやっ初めてじゃないのか。男の子と一緒にしかも家に連れ込んだりして」
「な、なに言ってるのよ! 連れ込んだなんて」ちょっとむすっとして言う。
「あははは、そうかいそうかい。でも荷物なんてもたせてさ、なんかいい感じじゃないの」にまぁーとしながら言う。おばあさんの凛とした雰囲気が少し崩れたような感じがした。
「あ、ごめん笹崎君、ホント重かったでしょ。もう置いていいから」
あわてて、杉村が僕の持つ荷物を手に取ると「お、重い……本当に重かったんだ」
顔を真っ赤にしながら言った。
「ほんと何やってんだか。ほら早く上がりな」
言われるままに、また杉村の家に上がり込んでいく。
昨日と今日。
二日連続で。
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